ドラティのR.シュトラウス | geezenstacの森

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ドラティのR.シュトラウス

 

曲目/R.シュトラウス

1.交響詩 ドンファン 作品20    17:24

2.交響詩 ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら 作品28    15:05

3.交響詩 ツアラツストラはかく語りき 作品30    33:52

 

指揮/アンタル・ドラティ

演奏/デトロイト交響楽団

 

録音/ 1980/06 1.2 1980/10 3

ユナイテッド・アーティスト・オーディトリウム、デトロイト

P:ジェイムズ・マリンソン 1.2

 ポール・マイヤーズ 3

E:ジェイムズ・ロック 1.2

 コリン・ムファット 3

 

ポリドール DECCA DCI81040(London)

 

 

 

 このCDは市販のものではありません。ポリドールがセット物で発売したもので、「ジュピター」シリーズに収録されていました。ただ、のちにカップリングが魅力的なためにこの内容で限定発売されたことはあります。オリジナルは「ドン・ファン」と「ティル」が「死と変容」と、「ツァラトゥストラ」は「マクベス」とカップリングされてリリースされています。

 

 さて、ドラティと言えばオーケストラ・ビルダーとして瀕死の主にアメリカのオーケストラを再生したその実力と1969~1972年にハンガリーのオーケストラを振っての史上最初のハイドン交響曲全集をリリースした実行力とで何となくそのイメージが思い浮かびます。アンタル・ドラティは1977年11月に71歳でデトロイト交響楽団の音楽監督に就任し、楽団を黄金時代に導きました。このデトロイト交響楽団は1977年から1981年まで音楽監督を務めていました。そして、この期間にCD18枚分の録音されたのがこれらの録音ということになります。ただ、惜しいことに楽団の運営方針を巡り理事会と対立し退陣してしまいます。ということでこのアルバムは蜜月の名演が詰まっていると言えます。

 

 このCDに入っている「ドン・ファン」「ティルオイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」も実にキビキビした明快な演奏で彼の特徴というか普段のアプローチ・考え方がはっきり出ております。どちらもユナイテッド・アーティスト・オーディトリウムの録音で他の演奏より短めなのも簡潔明瞭さをきわめたものとなっています。ドラティは戦後ダラス交響楽団を手始めに、ミネアポリス交響楽団(元ミネソタ管)、ワシントン・ナショナル響とアメリカのいろんなオーケストラに関与して行くのですが再生実力派といつたことだけではなく作曲・編曲も相当なものでもっと評価されてもいい演奏家の一人ではないのでしょうか。

 

 ドラティの演奏は、勢いあるスマートな演奏です。小気味よく軽快に出てきて、スイスイと進んでいきます。ドイツ系の指揮者のような重心の低いどっしりとした演奏は望めません。ティンパニも、溜めずにスパッと歯切れ良く、それでいてかっちりとした響きで曲を締めています。多くの楽器が多層的に響きますが、調和して響き、とても綺麗な響きでまとまっています。たっぷりと膨らませた美しい曲線で、ヴァイオリンのソロだけでなく、それを支える他の弦のフレージングも、芳醇な香りを放ちます。ドン・ファンの第2主題におけるホルンは、遠くからまず鳴って、音量をあげ、また弱くなっていくのですが、柔らかいが芯のある開放的なもの。金管からフルートと鉄琴、低い弦へと目まぐるしく主役の楽器が変わっていくのですが、この受け渡しの滑らかさが特筆されます。内声部も綺麗に入っており、いろんな楽器の音が繋がり、広がり、流れて行くのがとても楽しく、面白く聴ける演奏になっています。

 

 

 そして、同じようなアプローチで「ティルオイレンシューピールの愉快な悪戯」も演奏されていきます。多分、ここではデッカの録音スタッフの優秀さもあると思うのですが、二つの録音クルーで収録されているという音の違いは感じられません。デッカツリーと言われるマイクセッティングで統一されたトーンでまとめられています。ティルはすこしあっさりとしたアプローチで

 


 

 デッカに録音された「ツァラトゥストラ」はモノラルのクレメンス・クラウスを筆頭にカラヤン、メータ、ショルティ、アシュケナージ、珍してところではヘンリー・ルイスと揃っています。そんな録音紙の中で、豊麗なR・シュトラウス演奏とは一線を画す演奏だと言えます。そう、スッキリと纏められていて、スリムな出で立ちをした演奏となっているのです。そして、誠に明晰な演奏が展開されています。と言いつつも、その実はシッカリと歌い切っているところが素晴らしいといえます。R・シュトラウス特有の官能も、プンプン匂ってくる訳ではないのですが、適度に含まれています。適度に豪華絢爛である。そして、充分な運動性を備えている。そのうえで、細部まで丹念に磨き上げられていて、目鼻立ちのクッキリとした克明な演奏が繰り広げられています。感情移入を極力排したような演奏ぶりで、客観性の高い音楽が鳴り響いているとも言えそう。そんなこんなによって、実にピュアな美しさが示されています。

 

 さて、そのドラティの「ツァラトゥストラはかく語りき」です。その冒頭の部分です。

 

 

 全曲聴きたい人は下記をクリックして飛んでください。

 

Richard Strauss: Also sprach Zarathustra; Macbeth