社会福祉において、希少な資源の適切な供給のあり方をめぐって、効率性を追求すると不公平になりやすく、公平性を追求すると非効率になりやすい、というジレンマがあります。

 

福祉サービスにおいて、効率性と公平性の両立を図るには、利用者の意思決定や選択を支援するとともに、供給者を監督したり、事業に規制を設けたりすることが、欠かせない条件となります。

 

福祉政策における、資源配分の方法については、普遍主義か選別主義かという論点をめぐり、これまで多くの議論が重ねられてきました。

 

普遍主義とは、公的な給付の供給と利用は、できる限り条件を少なくした方がよい、とする考え方です。

これに対し選別主義は、できる限り必要度の高い人々に重点化することが望ましい、とする考え方です。

 

両者を対立的に捉える議論は、形を変えて繰り返されてきましたが、その古典的な議論は、

”社会扶助か社会保障か” という給付方式の対立に、見出すことができます。

 

社会扶助は、選別主義に立脚する給付方式の典型であり、税金を財源にして、市民に最低生活を保障する方式をいいます。

 

福祉に依存することを嫌悪する自立至上主義の文化のもとでは、選別を通じて扶助を受給する市民に、スティグマをもたらします。このような問題に対処するために、選別的でない方法や制度が求められ、福祉国家体制の構築が図られていきました。

 

社会保険は、普遍主義に立脚する給付方式とされ、社会保険給付を利用するには、社会保険料を一定期間納めた拠出実績や、制度が要求するさまざまな要件を満たすことが求められます。

 

一方で、普遍主義と選別主義を両立させようとする議論として、ティトマスの ”積極的優遇論” がよく知られています。

 

積極的優遇論とは、医療や所得補償などの社会サービスを、誰もが利用できるようしたうえで、ニーズの大きい人々に追加的なサービスを提供する、二階建て仕組みを提唱するものです。

 

ティトマスの構想は、普遍主義と選別主義という、二項対立図式とは別の道があることを、説得的に示しているといえます。