高齢者は一般に65歳以上とされますが、65〜74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼んでいます。


中年者の延長線上に位置する前期高齢者では、個体の老化の兆候が明瞭になってきます。

後期高齢者では、その兆候がさらに明瞭となり、老齢疾患を抱える人が著しく増加し、日常生活に影響する機能が更に低下してきます。


これは加齢により、体組織が変化するためです。各臓器の機能も低下し、生活習慣病などの疾病にもなりやすくなります。


循環器系では、心筋拡張機能が低下し、末梢血管抵抗(血液の流れにくさ)は増加します。

心房細動などの不整脈は増加します。 


呼吸器系では、肺の弾性収縮力が低下し、肺活量が低下します。一方、換気できずに残る残気量は増加します。


消化器系では、唾液の分泌が著しく低下し、味覚異常や食欲不振の原因となります。 

食道蠕動運動の低下や、下部食道括約筋の弛緩により、逆流性食道炎が生じやすくなります。

また、小腸・大腸の消化吸収機能や、蠕動運動が低下することから、便秘が起こりやすくなります。


内分泌系では、インスリン感受性やインスリン分泌能が低下し、耐糖能異常、糖尿病が増加します。

 

神経系では、加齢とともに脳萎縮が起こり、認知機能が低下します。

自律神経の機能低下により、血圧の低下や、一過性の不整脈を起こしやすく、起立性低血圧、食後低血圧、転倒、入浴事故を起こす原因になります。


腎泌尿器系では、膀胱容量の低下、膀胱伸展減少、尿道括約筋の低下などにより、排尿障害が起こります。


感覚器系では、視力の低下が起こり、動体視力が著しく低下します。

また調整力が低下しいわゆる老眼になったり、水晶体が混濁する白内障が起こったりします。

聴力では50歳代以降、3,000Hz

以上の高音域に著明な低下が起こります。

味覚・嗅覚障害も進行します。


骨・運動器系では、骨量の減少が骨粗鬆症、さらには骨折を引き起こします。

また関節が変化し、変形制関節症となります。

筋肉量の減少は、活動性の低下とともに転倒のリスクとなります。


高齢者では、全身の虚弱化を伴う、老化という不可逆的な過程で病気が発症し、生活習慣病のような慢性疾患が多いのが特徴です。


治療によって完全治癒を求めることが難しい場合、病気と併存しながら、生活の質を落とさないようにすることが重要です。