現在、精神医学の臨床あるいは研究の際に、広く用いられている精神医学診断システムICD-10とDSM-5については、有用性とともに、弊害も指摘されていますが、
正しい理解と運用によって、その存在価値が認められるといえるでしよう。
今後も精神疾患は、時代とともにその病態や頻度などが変化していくことが予想され、二つの診断基準も、それらをより正確に記述し、診断と治療に導いていく手引になることが期待されます。
日本において、2022年に精神分裂病から統合失調症への呼称変更がなされた結果、疾患概念の変化、スティグマ(符の烙印)の軽減、告知率の向上といった影響が知られています。
この結果、DSM-5日本語版の出版に当たり、疾患呼称の変更も行なわれました。
統合失調症の診断基準として、
ICD-10(国連疾病分類)では
精神性症状を9項目列記し、それらの症状が存在する期間について、1か月以上を必要としています。
その期間には、前駆期(前兆期)、活動期(急性期)を含めていません。
特徴的な症状の持続期間が1か月未満の場合は、まず急性統合失調症様精神病性障害と診断し、もし、それらの症状が1か月以上持続する場合は、統合失調症と診断すべきとしています。
一方、アメリカ精神医学会のDSM-5では、同様に精神病性症状を特徴的症状として9項目列挙し、それらが1か月以上持続し、かつ、何らかの精神症状による障害が6か月以上持続すること、としています。
この期間には、前駆期、残遺期(回復期)が含まれます。
症状の持続期間が1か月未満の場合は、短期精神病性障害または、特定不能の精神病性障害となり、1か月以上6か月未満の場合は、統合失調症様障害と診断されます。
統合失調症の亜型は、ICD-10では、妄想型、破瓜型、緊張型という分類があり、さらに経過中に明白な精神症状を呈さない、単純型を採用しています。
DSM-5では、統合失調症の亜型分類はなくなり、これを埋めるものとして、精神病症状の重症度評価(8項目、5段階)の使用が推奨されています。
