ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)は、社会の全構成員が、社会の中で孤立、排除、差別されず、全ての人々が健康で文化的な生活を営むことができる状態を目指すことを意味します。


こうした考え方は、1970年代にフランスで提唱され、発展してきたものとされています。


日本では、2000年に厚生省による”社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会”報告書において、新たな福祉課題に対応するための方法を導く理念として、この考え方が位置づけられています。


障害者も、社会的排除に追い込まれやすい状況にあり、ソーシャルインクルージョンの考え方は、障害福祉において、また社会福祉全般においても、土台となる基本理念になっています。


障害児教育の場でも、インクルージョンの考え方が提唱され、普及してきましたが、

これに先立って、まず提唱されたのはインテグレーション(統合)という考え方でした。


それまでの教育現場では、障害の有無や障害種別で分離して教育していましたが、同じ学校、同じ教室で行うこと、すなわち統合化が目指されました。


このインテグレーションは、普通学校のなかに障害児を当たり前に受け入れていくことを意味します。


インテグレーションにおける

”最大限通常の教育組織で教育を行なう”という発想は、間違いではありませんでした。

けれども、学ぶ場所を一緒にしただけで、障害児に対するそれぞれの事情に応じたケアやサポート、具体的な支援が、現場では欠けていました。


1990年代に入ってから、子どもをまず障害のあるなしで分けた上で、その統合を進めようとするより、一人ひとりの児童が持つ個別性に応じてサポートしていくという、一元的な教育システムを構築しようとする主張が、生まれてきました。


これがインクルージョンの考え方で、インクルーシブ教育と呼ばれるものです。

多様な子どもたちを対象に、”万人のための教育”、”誰も見捨てない教育”を、一か所で実践していくことを目指す理論なのです。