アルバイト先の高齢者施設、フリータイムの過ごし方は様々です。
特に将棋は人気があり、その日のメンバーで強い方は強い方同士、それなりの方はそれなりの組み合わせで対戦します。
将棋って、次の手を考えるのに時間がかかりますよね。中には、考えているのか眠っているのか、ずっと動きが止まってしまっている方もいます。
Sさんは、認知症が進行し食事その他に介助が必要な方で、ほとんどお話をされません。
優しいお顔立ちなので、マスクを鼻まで掛けていると、一見眠っているのかそうでないのかわからない。実際、Sさんは眠っていることが多いんです。
Sさんのお相手はたいていUさんで、こちらも認知症の方ですが、よくお話をされます。
”だめだめ、それは取っちゃだめなの”
”だめだって、そこには置けないの”
Uさんの大きな声が聞こえます。
”だーめだっての、あーあしょうがないな”
怒っているのではありません。Uさんは結構楽しそうなんです。対するSさんもおっとりと言うことを聞いています。なんだ起きていたのね。
先日、Uさんはお休みで、Sさんの対面にYさんが座りました。Yさんも認知症が進んでいて、たまに騒ぎを起こすこともあるのですが大抵は眠っている方です。
この日のSさんとYさん、将棋盤を間に挟んで午後中眠っていました。少なくとも眠っているように見えました。
皆さんが活動している間、職員はお茶をサービスしたり時々話しかけたり、たまに配りものをしたりしながら、見守りしています。
”Sさん、お飲み物はいかがですか”
”・・・”
あ、眠っていた。
”Yさんは、お飲み物いかがですか”
”・・・”
あ、眠ってる。
二人とも眠っているので、問題なし。そっとしておきます。
やがて活動終了十分前になり、そろそろお片付けの時間です。皆さんに声を掛けていきます。
眠っているおふたりにも、声を掛けます。
”もうすぐお時間ですよ”
”・・・”
”・・・”
”あと十分ですよー”
”・・・”
”・・・”
相変わらず眠っている二人。そこでこちらで将棋盤を片づけてしまうことにします。
”こちらお下げしますねー”
Yさんがパチッと目を開けました。
”まだやってるよ”
あ、そうだったんですか
「痴人の愛」読んだ
んもおおおーー馬っっ鹿じゃないのっっ
と本気で腹立った
さすが文豪