Tさんは、どちらかというと愛想の良い方です。
目が合えばにっこりしてくれるし、近くに行けば何かしら話しかけてくれます。
特に意味もない軽口だけど、
”お土産ちょうだい”とかね。
そのTさん、人好きなのかと思いきや、
自由時間に、ポツンとひとりで座っていることが多い。
ひとりで座っているのが心地よいという方は、それなりにいらっしゃいます。
テレビを観ていたり、瞑想?居眠り?していたり、
新聞を読んだり、虫眼鏡で何かを一生懸命見ていたり、と様々。
そんな方には、お声掛けしてみて、何もしたくないようなら、
無理に何かをしていただくということはありません。
でもTさんは、ひとりで座っていながら、なんとなくキョロキョロ、人恋しさが漂っている。
時々立って歩いて、ボードや張り紙をじっと眺めていたり。
ある時、マッサージチェアに座っているTさんと目が合ったので、
”Tさん、良かったら将棋しませんか?”
Tさん、にっこり笑ってすぐにマッサージチェアから降りました。
リラックスタイムには、将棋を指す方もいますが、いつもお相手がいるとは限りません。
その時はたまたま、ひとつの将棋盤を3人が囲んでいるテーブルがあったので、
そちらへTさんをお連れしました。
お連れする途中、テレビに花嫁さんの姿が映っていました。
”こういうの、いいねえ”
”ほんと、綺麗ですよねえ”
”うちの母ちゃんなんか、今はもう怖くってさ”
”だけど、こういう時も、あったでしょう。大事にしてあげてくださいよ”
”そうだねえ”
なんて話しながら、将棋のテーブルに着き、
Tさんをご紹介して、新しい将棋盤を出し、二組で将棋をさすことになりました。
楽しいリラックスタイムが終わって、道具を片付けに行くと、
”Tさんが、アイラブユーって言ってるよ~”
と、将棋のお仲間。
”そうですか!でもTさんには奥様がいらっしゃいますからね~”
Tさんはにっこりして、
”そうなんだよ~”
だそうです。
「ローズマリーの赤ちゃん」で隣のおばあさんが持ってくる
チョコレートムース、ずっと食べてみたいと思ってる