施設に来所される方の中には、もちろん頭がクリアな方もいらっしゃいます。

中には、この人のどこが要支援なんだろう?くらい、心身共にしゃっきりされた方も。

それでも多くの方が、何らかの型の認知症を抱えているようです。

 

いつも話しかけてくれるOさんは、おそらくは初期の認知症ではないかと。

私はもちろん、何の資格も持っていないので、単なる個人の感想です。

 

何故そう感じるのかというと、私は子供時代、祖父母と同居しておりまして

両方とも大往生と言われるほど長生きしましたが、

最後は認知症になったんですね。

 

特に祖母は、晩年の数年間、そのような高齢者専門の病院に入院していました。

シャキシャキしたおばあさんだった祖母が、少しずつ

認知機能を失っていく過程を間近でみていたので、

その辛さ恐ろしさというものが、今となっては理解出来るんですね。

 

「私はどこにいるんでしょう?」

というセリフが、特に印象に残っています。

今、思い出したけれど、“老人性痴呆”って言ってましたね、当時は。

 

いつも静かに座っておられるOさんは、私と目が合うと、

ゆっくり立ち上がって、マスクを外します。

マスクは外しちゃいけないので、すぐに着用してもらいますが、

彼なりの挨拶なんでしょうかね。

 

Oさんは、穏やかに、そしてちょっと困ったように、

“私はOと申しますが、”

“今日はお金を持っていないのです。”

”もう帰らなくちゃいけないけど、電車賃もないんです”

 

そこで私は、ここではお金は一切必要ないこと、帰りは時間になればちゃんと自宅まで送ることなど、

丁寧に話して安心してもらうようにします。

その時は納得してくれるのですが、この問答は何回も続きます。

 

別の日のOさんは、奥さんがどこにいるかわからない、とおっしゃる。

”ウチのが旅行に行ってしまって、”

”どこに行ったのかさっぱりわからない。”

”何か書いていけばいいのに、どこを探しても何にも書いていないんです。”

 

私は、奥様とはこちらで連絡をとっているから、心配いらない。

今日は帰っていらっしゃると思うから、お時間までゆっくりして行ってくださいね。

などど言いながら、奥さんとの思い出なんかに話を振ってみたりします。

 

最終的にOさんも、

”女性は強いからね。”

なんて笑顔になったりする。

 

そんなOさんを、

どうしても可愛いと思ってしまうんだけれど、

人生の大先輩に、そんなこと言っていいのかな。

(だめだろ)

 

優しくておっとりして、とても紳士的なOさんが、

毎日安心して、のんびり過ごしてくれるといいな、と思っています。

 

 

花粉で目が痒い。なぜか高齢者には、花粉症って少ないみたい??

では、また