なにが一番好きな本かって聞かれたら。
田辺聖子さんの「隼別王子の叛乱」ってこたえてしまいそうです。
古事記の世界。大和朝廷の始まりの頃。
オオサザキの大王(おおきみ)は墳墓の造営をしています。やがて来る永の眠りのために。
未来永劫にかけてこの国の人々に己が存在を知らしめるために巨大な墳墓を造らせているのです。
オオサザキの大王が墳墓造営や大陸との交易以上に今心を寄せているのは湖のほとりの国に住む美少女、女鳥の姫。
女鳥の姫を宮殿に迎えるために腹違いの弟、隼別王子を使いに出します。
けれど隼別王子は女鳥を大王に渡しませんでした。
隼別王子と女鳥の姫は一目見るなり恋をしてその日のうちに契ってしまったからです。(;´∀`)
しばらくは黙認し沈黙していた大王ですが、隼別王子は大王を挑発します。揺るぎない権力の座にある兄への子どもじみた反発でもあったかもしれません。
狩りと草摘みの宴の場で女鳥の姫と馬の二人乗りをします。
大王の目の前に可憐な姫の長い黒髪が翻ります。笑いながら馬を駆って去っていく若く美しい恋人たち。
なにものも怖くない。なにものにも邪魔はさせない。世界は二人のものだ。
愛と若さは時には傲慢に見えます。
そろそろ老年に差し掛かろうかという大王は気遣う側近の杯をあおりながら笑みをたたえながらそんな二人を目の端でしっかりとらえていたのです。
女鳥の姫を大王からかすめ取るということはすなわち国をも盗ろうとしているということ
大王は厳命を下し隼別王子と女鳥の姫は叛乱者として追われます。
大好きなお話ですが、わたしは女鳥があまり好きになれません。
あまりにも純粋で可憐で一筋だからかもしれません。
あまりにも自分とかけ離れすぎていて嫉妬しているからかもしれません。
それでも女鳥の姫に惹かれるのはどうしてなんでしょうね。