『pipipipipipi・・・』
重い腕をベッドから伸ばして菜子はアラームを止めた。
目が・・・
開かない・・・
泣きながら眠ったせいで、目の腫れがとんでもないことになっている。
ヤバい!!
撮影あるのに!!!
私としたことがー!
プロ失格だぁ━(゚д゚;)━━ッ!!!!
昨日の悲しみはとりあえず吹っ飛び、我に返った菜子は焦った。
急いで目を冷やすために、ゲルの入った冷やすアイマスクを冷蔵庫から取り出してまぶたに乗せる。
まずい、まずいぞ、この顔は!
あー、あと数時間で顔のむくみと目の腫れが引きますように!!
ベッドで仰向けになり、目を閉じてアイマスクを乗せた状態のまま、菜子は昨日の出来事を思い出していた。
あー、
そうだ・・・
別れたんだ、あたし。
ジヨンと。
今日はフリーになった初日かぁー。
昨日泣きすぎて、むしろ今日はカラッポになったみたいな気分だ。
色々考えていたら、悲しさより何より、ジヨンが好きになった相手のことが気になった。
日本人?
一般人??
・・・一体、いつどこで出会った子なんだろう・・・
ジヨンが日本に来た時は、ほぼ私と会うか連絡取るかしてるのに。
自分の知らない子と、いつどうやって知り合ったのかが菜子はすごーく気になった。
ジヨンが好きになるなんて・・・
ほんと、どんな子なの??
絶対知りたい!
ジヨンとこんな状態だというのに、菜子は3日後に韓国で雑誌の撮影があるのだ。
もちろん、もう韓国に行ったからといってジヨンと会うつもりはない。
でも、韓国へ行けばジヨンの友達には会えるわけだ。
ヤンゲンに連絡してみよう。
露骨に聞き出すのも菜子的にはプライドが許さないので、なんとなーくジヨン周辺の誰かから情報を得ようと思った。
よし。
とりあえずは今日の仕事だ!
少しだけ腫れも引いてきたので、シャワーを浴びて仕事に出る支度を始めた。
菜子は、この前日本でジヨンが買ってくれた服を着た。
未練がましくではなく、‘’あえて‘’ それを着た。
あたしは別れたことなんて全然気にしてませんよ、貰ったものだって気にしないで着てますけどー?とでもいうように。
そして、ジヨンからもらった服を着て、まだ少し腫れている目をピースサインで隠すようにしながらもにこやかに写メを撮り、インスタにアップした。
「やだ、ナコ、なぁに、その顔!」
迎えに来たマネージャーが、サングラスを外した菜子の顔を見るなり言った。
「あー、やっぱわかる?目立つ?変?」
「変とかそういうことじゃなくて・・・飲みすぎ?それとも泣いたの?」
「泣いたのー!悲しい映画のDVD見て大泣きして眠っちゃった!」
「もぉ、バカッ!撮影あるってわかっててなんでそんなDVDを・・・。なんのDVD見たの?」
「・・・なんだっけ・・・?(笑)」
マネージャーはそれ以上は聞いてこなかった。
たぶん、DVDではないことで泣いたんだろうと察したのかもしれない。
撮影スタジオに到着し、メイクを始める菜子。
幸いにも、今日の撮影のためのメイクがかなり濃いメイクだったおかげで、腫れもわからないぐらいに隠すことができた。
昨晩、恋人との別れがあったようには誰からも見えなかったであろうほどに、元気ハツラツのいつもの菜子だった。
撮影も問題なく順調に進み、休憩の最中、テーブルに置いてあった雑誌に目を通しながらマネージャーと雑談していた菜子。
ふと、目に止まったページ。
メイクでモノマネをするタレントの子が、ジヨンのモノマネメイクをしている写真が載っていた!
ドキン!と、菜子の心臓が鳴った。
パタン!と雑誌を閉じて、雑にテーブルに戻す菜子。
マネージャーがそれを見て
「・・・?ど、どうした??」
「ん?え?あ、ううん、なんでもないよ。」
「なんか気に食わない記事でもあった?」
「え?いや、全然。なんか喉乾いたなぁー。お水、持ってきてる?」
「あるけど・・・。ちょっと待ってて、持ってくる。」
マネージャーが席を立つ。
「はあぁぁぁぁ・・・」
一気にため息をつく菜子。
やはり、いくら元気そうに振る舞っていようと、失恋の傷は一晩で癒えているわけではない。
当然といえば当然だ。
なんだかんだありながらも、4年以上も一緒にいたのだから。
でも、親友のアイミと妹と母親ぐらいにしか菜子は恋人との出来事はあまり話さない。
周りには落ち込んでる姿は見せたくなかった。
“今夜 アイミ空いてるかな・・・”
話を誰かに聞いてもらいたい。
そうしなければ、このカラ元気を保てる自信がなかった。
菜子はアイミにLINEをしておいた。
『Hello~!今、撮影中。
聞いてもらいたい話があるんだけど、アイミ、今夜空いてる?』
