高麗の恋人(仮) 1 〜弥勒像〜 | 愛してる 運命のようなあなたを

愛してる 運命のようなあなたを

大好きなシンイ-信義-
の二次小説を綴って参ります。

拙い文章ですが、興味を持って貰えたら嬉しいです。



ここは韓国の首都 ソウル



高いビルが所狭しに立ち並ぶ

鳴り止まない人々の足音 車のエンジン音

異常な速さで追い抜かれる自転車に驚いて

それでも驚いた事を忘れて

すぐに胸元にある掌の中におさまるスマホを見ながら歩く人々


ショーウィンドウにはトレンドの服やアクセサリーが飾られ

私の目を引こうと必死に輝きを放つけれど




長時間に及ぶ手術で疲弊した私の目はその魅力に気付く事なく自宅だけを目指して歩いていた


煌びやかに着飾る同世代と思われる女性たち

ショーウィンドウに映った自分は疲労でボロボロだった




都会に憧れて 猛勉強の末

医大でもトップを誇るソウル大学病院に進み

晴れて外科医として働き始めて1年が経った



憧れのソウル 憧れの外科医

患者を救い 感謝され 給料もたっぷりと




そんな世界を想像していた夢の仕事

それがまさか 患者には言いたい放題言われ

痛いだ辛いだどうにかしろだと毎日毎日不満をぶつけられ

治った時には掌を返したように過剰に感謝される


そんな言葉 散々文句を言われた後に聞かされても

全くありがたいとも思わない


医師の指示にも従わず

隠れて何か食べたり タバコを吸ったり

その行動で治療が遠回りになり

結果長く苦しんで その怒りをぶつけられた後の感謝に

表情管理ができない自分がいた




本当にこの道で良かったのか

私は外科医としてこの先も生きて行くのだろうか

田舎で農家をしている両親に負担をかけないように奨学金を貰う為にも常に成績トップを守り続け

誰よりも勉強に時間を費やした


その対価をたった1年で求めるのは筋違いだけれど

この満たされない感情はなんだろう


毎日疲弊して家に帰り

寝て また新たに現れる患者たちの治療にあたる



そんな毎日で私の人生をどう輝かせる事ができるのだろう



「美容整形



ずっと足元を見て歩いていたウンスは

たまたま頭を上げた先のビルに

美容整形の広告がでかでかと上がっていた



「時代は美容整形よね仕事としても儲かるわ」



一人言を呟いてまた街を歩く

若い人たちを見て溜息をこぼしながら


明日の休みは寝て終えるのではなく

久々にお洒落して出掛けようと決め

バッグからスマホを取り出して指で操作した後

それを耳に当てた




「あ、ウビン!明日仕事が休みなんだけど貴方はどう?

久々に出掛けない?仕事なら夜にご飯でも」


「おいウンス俺たちまだ付き合っていたのか?」


「どういうこと?」


「数ヶ月前からずっと連絡しても返事は無いし

もうすっかり終わったもんだと思ってたよ

全く連絡がつかないから最近別の人と付き合い始めたんだ」


「ななによそれ

別れ話ぐらいちゃんとしなさいよ!」


「別れ話も何も 一切連絡が付かなかったのにどうやってしろっていうんだよ」



電話先のウビンは呆れた声で言った



「お前は一つの事に集中すると周りの事が見えなくなる

それは昔から知っていたし 必死で物事に向き合う姿勢は尊敬していた

ただ彼女としてはやっていけない


この連絡を取らなかった間

一度でも俺の事を考えたか?

考えた事があるなら連絡の一本でもしたはずだろ?

仕事が忙しいのは分かるけど

俺の事も考えて欲しかった」





そう言ってプツッと切られた
























何も言い返せなかった

仕事にかまけて彼氏の存在を忘れるなんて

そんな女とは誰だって付き合いたくない



フラれたのに 涙どころかショックすら受けない自分は何なんだろう

大学の時に出会って付き合った初めての彼氏

いつも一緒にいられた大学では凄く仲が良かったし

一緒に居て楽しかった


でも就職先が別々になってからは

お互い忙しくて会う頻度も減って

いつも連絡は向こうからで

思えば自分から連絡なんて滅多にしなかった



勉強しかしてこなかったせいか恋愛に疎く

"好き"

という感情が未だに良く分からない


ただ一緒に居て楽しいウビンに告白された時は素直に嬉しかったけど

今思えば友達の延長のような交際だった気がする




それでも一応溜息は出るもので

ウンスはまた足元に目線を落とした




























翌日 まだ寝足りない体をなんとか起こして

目を覚ますために顔を洗い 鏡の前に座った

スキンケアをいつもより念入りにして

メイクもまた仕事の時のナチュラルメイクではなくヌーディーに仕上げ

新調して一度も着ていないワンピースに袖を通し

細めのベルトで細いウエストを強調させ

その上から白のカーディガンを袖を通さずに肩に掛けた


緑色の鞄にメイク道具やチョコレート、飴とスマートフォンなどを詰め込み

底が厚くリボンがついたピンク色のハイヒールに足を通して家を出た







私だってまだ二十代

たまには仕事の事を忘れて自分を高めなきゃ





そう呟きながら 昨日は目に入らなかったショーウィンドウをゆっくり見てまわった



「はぁ欲しいものがいっぱいだわ



商品に目を輝かせるがその値札を見て現実に引き戻される



歩き疲れ お腹も空いてくる時間

ウンスは美味しいと噂になっている

このデパートの地下にあるカツサンドを求めて行列に並び

手に入れたカツサンドを持って外にでた


どこで食べようかとまたショーウィンドウを眺めて歩き


そろそろ見飽きたウンスの足は何故か寺に来ていた



自分でもそこに足が向いた事に驚きながらも

お金が貯まるように

患者に文句を言われないようにと頼み込んで帰ろうかとそのまま足を進めた



大きくて立派な弥勒像

その佇まいに驚いていると

その下に青く光る何かが見えた



周りを見渡してみるが 誰も気にもしていない

まるで自分にしか見えていないかのように




不思議に思いながらその光に近付いて

なんとなくその光の中に手を伸ばした



すると





グイッ!!






と誰かに引っ張られるかのように

その光の中に体が吸い込まれていたった






「キャァァァァァー!!」