内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)が発信しているメルマガをたまたま見たら、呆れて開いた口がふさがらない。「委員からひと言」の記事に憤慨してしまう。
あれだけの事故を体験しながらも、依然として何という楽観的解釈か。この組織にいれば、このような楽観論に取り込まれてしまうのかと推察できる。
最後には「事故対策は、最後はそのコストとの衡量の問題」と言っているが、まだ学習が足りないようだ。
原発事故以外の事故は時間的に一過性であるのに、同列に並べている。原発事故は、けた違いに長い年月をかけて国土喪失と動植物に広く未知数の災禍が及ぶことが欠落している。ことの重大さが理解できないよほど脳天気な御仁か、または世論操作的メッセージかどちらかではないか。
もう一つ。「畑村名誉教授が言うようにどんなに考えても気づかない領域が残るし、ある種の危険は考えに入れていません。・・・」とあるが、では東電は津波の予想はあったにも関わらず、対策を講じなかったわけで、気づかなかった領域ではない。つまり「想定外」ではなかった津波被害は人災であるから、この委員は東電経営者の責任問題を認識していると解釈できる。
原子力委員会がそういう認識ならば、東電の責任問題を問うたら良いではないか。
阿部信泰氏という御仁。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/iin/abe.htm
以下、メルマガをそのまま貼り込みます。記事中「委員からひと言」に目を通していただけませんか。
こんなところに我々の税金が払われていると思うと・・・・・
◆◆《 第168号 原子力委員会メールマガジン 》◆◆
第168号 原子力委員会メールマガジン
「原子力:7つの常識と3つの非・常識」(その6)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━No.168━━━━━━
@mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン 2015年2月13日号
☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━目次━
委員からひとこと 「原子力:7つの常識と3つの非・常識」(その6)
会議情報
2月3日
・平成27年度原子力関係経費政府予算案等ヒアリング
(原子力委員会、文部科学省及び経済産業省)
・独立行政法人日本原子力研究開発機構の次期中長期目標の検討状況に
ついて(文部科学省)
2月10日
・平成27年度原子力関係経費政府予算案等ヒアリング
(内閣府(原子力防災)、外務省、環境省及び原子力規制庁)
・原子力利用の「基本的考え方」について
・国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の次期中長期目標の策定に
ついて(見解)
2月13日
・原子力利用の「基本的考え方」について
(NPO法人原子力資料情報室 伴英幸氏)
事務局だより 周防大島
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━
「原子力:7つの常識と3つの非・常識」(その6) 阿部 信泰
前回(12月2日)に続きまして今回は常識の6について考えてみたいと思います。
常識の6番目は「人間である限り間違うこともあれば、事故もある。問題はそ
の可能性をいかにして小さくし、万が一起こった場合の対策を考えて置くこと
だ。」です。
1. 先日、原子力委員会でお話いただいた畑村洋太郎・東京大学名誉教授
(福島事故調査・検証委員会委員長で、現在は畑村創造工学研究所代表)
がおっしゃったことですが、「考えても気付かない領域が残るので、事故はこ
れからも必ず起こる。すべてを考え尽くしたと思うのは傲慢である。絶対安全
はあり得ない。」ということです。
重大な原発事故について言えば、米国のスリーマイル島事故は、冷却系統の
機械的故障に人的対応の誤りが重なって起きました。ソ連のチェルノブイリ原
発は、緊急冷却機能の試験中の操作ミスから起きました。東電福島第一原発
事故は、東電が想定した規模を越えた地震と津波の到来によって原発が外部
電力を喪失し、緊急電源も津波の被害で動かなくなったために起こりました。
各々の事故についてこうした直接的原因の他に間接的な遠因も指摘されてい
ます。
2. より身近で、しかもより頻繁に起きる重大航空機事故について言えば、
1985年の日航機事故のように修理ミスによる機体後部の破損が起きたり、
2000年のコンコルドのように離陸滑走中に落下物をエンジンが吸い込んだり
する事故が起きることなど誰が考えたでしょうか。1982年の日航機事故のよ
うに操縦士の異常操縦によって起きたこともあります。1987年の大韓航空機
事故はテロ事件、1983年の大韓航空機墜落はソ連機による意図的撃墜でし
た。
3. 原発についてもあらゆる考えられる事故原因を想定してそれに対する対
策が講じられています。特に東電福島第一原発事故の後はその必要性が痛
いほど認識されて原子力規制委員会が安全基準を改訂し、それに基づいて審
査をしています。これまでの地震・津波の脅威をより高い水準に定め、火山・
竜巻の脅威も追加し、テロの脅威も考慮に入れるようになりました。
しかし、田中俊一・原子力規制委員会委員長が自らおっしゃるとおり絶対安全
ということは言えません。畑村名誉教授が言うようにどんなに考えても気づか
ない領域が残るし、ある種の危険は考えに入れていません。例えば、隕石が
落下して原子炉に当たることを考えた人がいるでしょうか。極めて稀なことなの
で、そこまで考えたらきりがないということになるでしょう。しかし、最近では
2013年に大きな隕石がシベリアに落下しました。
テロ攻撃は考えられていますが、より深刻な軍事攻撃を受けることを考えた人
はいるでしょうか。日本ではいないかもしれませんが、間違いなく核兵器を持
っていると疑われているイスラエルが原発を作らなかったのは一旦戦争が起
きた場合のリスクを考えたためだということを読んだことがあります。
4. どんなに対策を講じても最後は事故が起きるかもしれないとなるとすれば、
万が一起きた場合にその被害を最小限にするための対策を用意して置くこと
が大事です。今でも東電事故後の対応について議論が続き、いろいろな意見
が交わされていますので、ここで多くを語ることはできないかもしれませんが、
2~3私が感じていることを申し上げます。
・避難か退避か。
5. 環境汚染は後々の経済活動に影響しますので、大事ですが、やはり一旦
緩急の際にはまず人の命、人の健康を最優先すべきでしょう。その場合でも、
通常平穏に原子炉が動いているときには安全と安心のため相当大きな許容
範囲を取った放射線被ばく警戒値が設定されています。それはそれでいいこ
となのですが、重大な過酷事故になるとその警戒値を少し超えるかもしれない
ことと、多数の人を避難させる困難さ、あるいは避難することによる精神的・肉
体的負担とのどちらを取るかという厳しい状況に立たされる場合があり得ます。
これが移動による避難よりも屋内退避を重視する考え方で、そのための設備
を充実して置くことが避難による大混乱を回避するという上でも大事になります。
・地元の人の気持ちを考える。
6. どうしても事故が起きるかもしれないということを考えますと、その場合の
避難そして万が一被害が及んだ場合の深刻さを考えるとやはり原発はできる
だけ周辺(それも30キロ圏か、それ以上)に人口が少ないところに置いた方が
無難です。これは原発周辺の人々にとっては大変酷な話ですが、一時福島か
ら200キロ以上離れた東京圏の人まで避難を考えたということを考えると2,000
万とも言われる首都圏の人をどうやって避難させるのかと途方に暮れることに
なります。私が、秋田の大学で東電事故の話をした際に一人の女子学生が
「東電事故は自分達田舎に住んでいる人に対する差別を2度することになる」
と言うのを聞きました。一瞬、何を言おうとしているのか分からなかったのです
が、彼女が言いたかったことは、原発を福島県の人が少ないところに立地す
るということで一度差別を受けたものが、今度は放射線被ばくをしたということ
で福島の人々がまた差別されるかもしれないというわけです。東京にずっと住
んでいる人には気がつかない視点かもしれませんが、こうした気持ちにどう向
かい合うかということも考えなければならない問題です。
・事故の検証を継続。
7. 少なくとも東電事故と似たような事故をもう一度起こさないためには東電
事故をよく検証し、正しくその教訓を学ぶことが大事です。そして、事故がどう
いうものであったかはいまだに分からないところがあります。ときどき事故の
経緯について新しい事実・考え方の報道が出ますし、破損した原子炉の中は
放射能が極めて高く近づけません。どうなっているかは今後の解明を待たな
ければなりません。したがって、畑村教授が言うように事故の検証は今後も継
続し、ときどきまとまった見直しをすべきではないかと思います。
・柔軟な考えを許す。
8. 事故対策は、最後はそのコストとの衡量の問題になります。隕石の話を
しましたが、起こる確率が極めて低いということと、ある規模以上の隕石とな
ると防ぎようがない、あるいは防ごうとすると膨大な経費がかかりとてもできな
いということがあろうかと思います。この点、大事なことは同じ危険・脅威に対
処するにしてもいくつかの方法があり得ます。そうした場合、よりコストが低く、
より有効な方法があればそちらを選ぶべきであり、原発を運営する企業・関連
企業・あるいは研究機関に常に新しいより優れた対策を考え、選択するよう奨
励し、規制側もそうした対応を促すよう柔軟に対応することが望まれるところで
す。
●次号は中西委員からのひとことです!
━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は原則として霞
ヶ関にある合同庁舎8号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案
内や配布資料は、すべて原子力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただ
けます。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm
●2月3日(火)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイトに掲
載される議事録を御覧ください。
【議題1】平成27年度原子力関係経費政府予算案等ヒアリング
(原子力委員会、文部科学省及び経済産業省)
<主なやりとり等>
原子力委員会、文部科学省及び経済産業省より、平成26年度原子力関係経
費補正予算及び平成27年度原子力関係経費政府予算案について説明があ
り、委員からは、原子力発電所の稼働状況の変化が原子力立地地域への交
付金額に与える影響の軽減方策、中高年の技術者から、若手技術者への技
術を伝えるための取り組み等について質問がありました。
【議題2】独立行政法人日本原子力研究開発機構の次期中長期目標の検討
状況について
<主なやりとり等>
文部科学省より、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の次期中長期
目標の検討状況について説明があり、独立行政法人から国立研究開発法人
に変わることにより、これまでの中期計画とどのように変わるのか、一部業務
の分離・統合との関係等について質問がありました。
●2月10日(火)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。
【議題1】平成27年度原子力関係経費政府予算案等ヒアリング
(内閣府(原子力防災)、外務省、環境省及び原子力規制庁)
<主なやりとり等>
内閣府(原子力防災)、外務省、環境省及び原子力規制庁より、平成26年度
原子力関係経費補正予算及び平成27年度原子力関係経費政府予算案につ
いて説明がありました。委員からは、東京電力福島第一原子力発電所事故対
策に関する予算の増減とその原因等についての質問、原子力防災について、
災害が無いからといって対策が疎かにならないようにしなけれならないとの意
見等がありました。
【議題2】原子力利用の「基本的考え方」について
<主なやりとり等>
原子力利用の「基本的考え方」について、今後の検討の進め方及びスケジュ
ール等について説明がありました。
【議題3】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の次期中長期目標の
策定について(見解)
<主なやりとり等>
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の次期中長期目標の策定に対
する見解案について、委員間で議論を行い、一部修正のうえ原子力委員会の
見解としてとりまとめを行いました。
●2月13日(金)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。
【議題1】原子力利用の「基本的考え方」について
(NPO法人原子力資料情報室 伴英幸氏)
<主なやりとり等>
原子力委員会で議論を進めている原子力利用の「基本的考え方」の策定に向
けて、伴英幸氏より、意見を聴取しました。原子力委員からは、東電福島第一
原発事故対応の費用や負担の考え、一般公衆の被ばく限度の考え、放射性
廃棄物の最終処分、原子力エネルギーや再生可能エネルギーのエネルギー
コスト等について質問が有りました。
●次回は2月24日(火)に会議を開催する予定です。詳しくは、以下の開催案内
を御覧ください。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm
+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
周防大島
今年も正月は故郷の柳井(山口県)で過ごしました。実家の目の前の海岸に
立つと穏やかな瀬戸内の海を隔てた向かいに「周防大島」が横たわります。
瀬戸内海では淡路島、小豆島についで3番目に大きな島です。小学生時代に
は、「いつか向こう岸まで泳いで行くぞ」と夏の砂浜で英雄となる日を夢みてい
ましたが、最近は何とイノシシがエサを求めて島からこちらへ泳いでくるそうで
す。
さて、この周防大島は35年間高齢化率全国第1位だった過疎の島です。島の
外に開拓地を求めてハワイへの移民も多数送り出しました。ミカンの産地、民
俗学者の宮本常一、星野哲郎(演歌の作詞家)の出身地であること以外には
話題になることも少ない過疎の島だったのです。 ところが2010年頃を境に、
ここに移り住む人が増えてきました。大手電力会社を辞めて地元で採れるミカ
ンを使ったジャム屋を始めた若者、調理師から養蜂業者に転じた若者、煮干し
には大きすぎると捨てられていたイワシを使ったオイルサーディンをヒットさせ
る都会出身の若者....地元に帰るUターン組だけではなく、この島に縁のな
かったIターン組も増えているそうです。
藻谷 浩介氏とNHKの「里山資本主義シリーズ」(注1)には、周防大島だけで
なく中国地方の各地で進む若者や団塊世代OBのU/Iターンが紹介されていま
す。「のんびり田舎暮らし」志向とは異次元の、「里山(地元)を資本にして稼ぐ」
志向が、「地方創生」に弾みをつけるのではないかと期待します。この夏休み
には周防大島一周の実地踏襲をして来ます。
注1
http://www.nhk.or.jp/eco-channel/jp/satoyama/interview/motani01.html
(貞安)
●次号配信は、平成27年2月27日(金)午後の予定です。
=============================================================
発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
○ご意見、ご感想、ご質問などはこちらへ
https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ
http://www.aec.go.jp/
=============================================================
あれだけの事故を体験しながらも、依然として何という楽観的解釈か。この組織にいれば、このような楽観論に取り込まれてしまうのかと推察できる。
最後には「事故対策は、最後はそのコストとの衡量の問題」と言っているが、まだ学習が足りないようだ。
原発事故以外の事故は時間的に一過性であるのに、同列に並べている。原発事故は、けた違いに長い年月をかけて国土喪失と動植物に広く未知数の災禍が及ぶことが欠落している。ことの重大さが理解できないよほど脳天気な御仁か、または世論操作的メッセージかどちらかではないか。
もう一つ。「畑村名誉教授が言うようにどんなに考えても気づかない領域が残るし、ある種の危険は考えに入れていません。・・・」とあるが、では東電は津波の予想はあったにも関わらず、対策を講じなかったわけで、気づかなかった領域ではない。つまり「想定外」ではなかった津波被害は人災であるから、この委員は東電経営者の責任問題を認識していると解釈できる。
原子力委員会がそういう認識ならば、東電の責任問題を問うたら良いではないか。
阿部信泰氏という御仁。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/iin/abe.htm
以下、メルマガをそのまま貼り込みます。記事中「委員からひと言」に目を通していただけませんか。
こんなところに我々の税金が払われていると思うと・・・・・
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「原子力:7つの常識と3つの非・常識」(その6)
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━目次━
委員からひとこと 「原子力:7つの常識と3つの非・常識」(その6)
会議情報
2月3日
・平成27年度原子力関係経費政府予算案等ヒアリング
(原子力委員会、文部科学省及び経済産業省)
・独立行政法人日本原子力研究開発機構の次期中長期目標の検討状況に
ついて(文部科学省)
2月10日
・平成27年度原子力関係経費政府予算案等ヒアリング
(内閣府(原子力防災)、外務省、環境省及び原子力規制庁)
・原子力利用の「基本的考え方」について
・国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の次期中長期目標の策定に
ついて(見解)
2月13日
・原子力利用の「基本的考え方」について
(NPO法人原子力資料情報室 伴英幸氏)
事務局だより 周防大島
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━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━
「原子力:7つの常識と3つの非・常識」(その6) 阿部 信泰
前回(12月2日)に続きまして今回は常識の6について考えてみたいと思います。
常識の6番目は「人間である限り間違うこともあれば、事故もある。問題はそ
の可能性をいかにして小さくし、万が一起こった場合の対策を考えて置くこと
だ。」です。
1. 先日、原子力委員会でお話いただいた畑村洋太郎・東京大学名誉教授
(福島事故調査・検証委員会委員長で、現在は畑村創造工学研究所代表)
がおっしゃったことですが、「考えても気付かない領域が残るので、事故はこ
れからも必ず起こる。すべてを考え尽くしたと思うのは傲慢である。絶対安全
はあり得ない。」ということです。
重大な原発事故について言えば、米国のスリーマイル島事故は、冷却系統の
機械的故障に人的対応の誤りが重なって起きました。ソ連のチェルノブイリ原
発は、緊急冷却機能の試験中の操作ミスから起きました。東電福島第一原発
事故は、東電が想定した規模を越えた地震と津波の到来によって原発が外部
電力を喪失し、緊急電源も津波の被害で動かなくなったために起こりました。
各々の事故についてこうした直接的原因の他に間接的な遠因も指摘されてい
ます。
2. より身近で、しかもより頻繁に起きる重大航空機事故について言えば、
1985年の日航機事故のように修理ミスによる機体後部の破損が起きたり、
2000年のコンコルドのように離陸滑走中に落下物をエンジンが吸い込んだり
する事故が起きることなど誰が考えたでしょうか。1982年の日航機事故のよ
うに操縦士の異常操縦によって起きたこともあります。1987年の大韓航空機
事故はテロ事件、1983年の大韓航空機墜落はソ連機による意図的撃墜でし
た。
3. 原発についてもあらゆる考えられる事故原因を想定してそれに対する対
策が講じられています。特に東電福島第一原発事故の後はその必要性が痛
いほど認識されて原子力規制委員会が安全基準を改訂し、それに基づいて審
査をしています。これまでの地震・津波の脅威をより高い水準に定め、火山・
竜巻の脅威も追加し、テロの脅威も考慮に入れるようになりました。
しかし、田中俊一・原子力規制委員会委員長が自らおっしゃるとおり絶対安全
ということは言えません。畑村名誉教授が言うようにどんなに考えても気づか
ない領域が残るし、ある種の危険は考えに入れていません。例えば、隕石が
落下して原子炉に当たることを考えた人がいるでしょうか。極めて稀なことなの
で、そこまで考えたらきりがないということになるでしょう。しかし、最近では
2013年に大きな隕石がシベリアに落下しました。
テロ攻撃は考えられていますが、より深刻な軍事攻撃を受けることを考えた人
はいるでしょうか。日本ではいないかもしれませんが、間違いなく核兵器を持
っていると疑われているイスラエルが原発を作らなかったのは一旦戦争が起
きた場合のリスクを考えたためだということを読んだことがあります。
4. どんなに対策を講じても最後は事故が起きるかもしれないとなるとすれば、
万が一起きた場合にその被害を最小限にするための対策を用意して置くこと
が大事です。今でも東電事故後の対応について議論が続き、いろいろな意見
が交わされていますので、ここで多くを語ることはできないかもしれませんが、
2~3私が感じていることを申し上げます。
・避難か退避か。
5. 環境汚染は後々の経済活動に影響しますので、大事ですが、やはり一旦
緩急の際にはまず人の命、人の健康を最優先すべきでしょう。その場合でも、
通常平穏に原子炉が動いているときには安全と安心のため相当大きな許容
範囲を取った放射線被ばく警戒値が設定されています。それはそれでいいこ
となのですが、重大な過酷事故になるとその警戒値を少し超えるかもしれない
ことと、多数の人を避難させる困難さ、あるいは避難することによる精神的・肉
体的負担とのどちらを取るかという厳しい状況に立たされる場合があり得ます。
これが移動による避難よりも屋内退避を重視する考え方で、そのための設備
を充実して置くことが避難による大混乱を回避するという上でも大事になります。
・地元の人の気持ちを考える。
6. どうしても事故が起きるかもしれないということを考えますと、その場合の
避難そして万が一被害が及んだ場合の深刻さを考えるとやはり原発はできる
だけ周辺(それも30キロ圏か、それ以上)に人口が少ないところに置いた方が
無難です。これは原発周辺の人々にとっては大変酷な話ですが、一時福島か
ら200キロ以上離れた東京圏の人まで避難を考えたということを考えると2,000
万とも言われる首都圏の人をどうやって避難させるのかと途方に暮れることに
なります。私が、秋田の大学で東電事故の話をした際に一人の女子学生が
「東電事故は自分達田舎に住んでいる人に対する差別を2度することになる」
と言うのを聞きました。一瞬、何を言おうとしているのか分からなかったのです
が、彼女が言いたかったことは、原発を福島県の人が少ないところに立地す
るということで一度差別を受けたものが、今度は放射線被ばくをしたということ
で福島の人々がまた差別されるかもしれないというわけです。東京にずっと住
んでいる人には気がつかない視点かもしれませんが、こうした気持ちにどう向
かい合うかということも考えなければならない問題です。
・事故の検証を継続。
7. 少なくとも東電事故と似たような事故をもう一度起こさないためには東電
事故をよく検証し、正しくその教訓を学ぶことが大事です。そして、事故がどう
いうものであったかはいまだに分からないところがあります。ときどき事故の
経緯について新しい事実・考え方の報道が出ますし、破損した原子炉の中は
放射能が極めて高く近づけません。どうなっているかは今後の解明を待たな
ければなりません。したがって、畑村教授が言うように事故の検証は今後も継
続し、ときどきまとまった見直しをすべきではないかと思います。
・柔軟な考えを許す。
8. 事故対策は、最後はそのコストとの衡量の問題になります。隕石の話を
しましたが、起こる確率が極めて低いということと、ある規模以上の隕石とな
ると防ぎようがない、あるいは防ごうとすると膨大な経費がかかりとてもできな
いということがあろうかと思います。この点、大事なことは同じ危険・脅威に対
処するにしてもいくつかの方法があり得ます。そうした場合、よりコストが低く、
より有効な方法があればそちらを選ぶべきであり、原発を運営する企業・関連
企業・あるいは研究機関に常に新しいより優れた対策を考え、選択するよう奨
励し、規制側もそうした対応を促すよう柔軟に対応することが望まれるところで
す。
●次号は中西委員からのひとことです!
━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は原則として霞
ヶ関にある合同庁舎8号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案
内や配布資料は、すべて原子力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただ
けます。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm
●2月3日(火)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイトに掲
載される議事録を御覧ください。
【議題1】平成27年度原子力関係経費政府予算案等ヒアリング
(原子力委員会、文部科学省及び経済産業省)
<主なやりとり等>
原子力委員会、文部科学省及び経済産業省より、平成26年度原子力関係経
費補正予算及び平成27年度原子力関係経費政府予算案について説明があ
り、委員からは、原子力発電所の稼働状況の変化が原子力立地地域への交
付金額に与える影響の軽減方策、中高年の技術者から、若手技術者への技
術を伝えるための取り組み等について質問がありました。
【議題2】独立行政法人日本原子力研究開発機構の次期中長期目標の検討
状況について
<主なやりとり等>
文部科学省より、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の次期中長期
目標の検討状況について説明があり、独立行政法人から国立研究開発法人
に変わることにより、これまでの中期計画とどのように変わるのか、一部業務
の分離・統合との関係等について質問がありました。
●2月10日(火)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。
【議題1】平成27年度原子力関係経費政府予算案等ヒアリング
(内閣府(原子力防災)、外務省、環境省及び原子力規制庁)
<主なやりとり等>
内閣府(原子力防災)、外務省、環境省及び原子力規制庁より、平成26年度
原子力関係経費補正予算及び平成27年度原子力関係経費政府予算案につ
いて説明がありました。委員からは、東京電力福島第一原子力発電所事故対
策に関する予算の増減とその原因等についての質問、原子力防災について、
災害が無いからといって対策が疎かにならないようにしなけれならないとの意
見等がありました。
【議題2】原子力利用の「基本的考え方」について
<主なやりとり等>
原子力利用の「基本的考え方」について、今後の検討の進め方及びスケジュ
ール等について説明がありました。
【議題3】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の次期中長期目標の
策定について(見解)
<主なやりとり等>
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の次期中長期目標の策定に対
する見解案について、委員間で議論を行い、一部修正のうえ原子力委員会の
見解としてとりまとめを行いました。
●2月13日(金)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。
【議題1】原子力利用の「基本的考え方」について
(NPO法人原子力資料情報室 伴英幸氏)
<主なやりとり等>
原子力委員会で議論を進めている原子力利用の「基本的考え方」の策定に向
けて、伴英幸氏より、意見を聴取しました。原子力委員からは、東電福島第一
原発事故対応の費用や負担の考え、一般公衆の被ばく限度の考え、放射性
廃棄物の最終処分、原子力エネルギーや再生可能エネルギーのエネルギー
コスト等について質問が有りました。
●次回は2月24日(火)に会議を開催する予定です。詳しくは、以下の開催案内
を御覧ください。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm
+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
周防大島
今年も正月は故郷の柳井(山口県)で過ごしました。実家の目の前の海岸に
立つと穏やかな瀬戸内の海を隔てた向かいに「周防大島」が横たわります。
瀬戸内海では淡路島、小豆島についで3番目に大きな島です。小学生時代に
は、「いつか向こう岸まで泳いで行くぞ」と夏の砂浜で英雄となる日を夢みてい
ましたが、最近は何とイノシシがエサを求めて島からこちらへ泳いでくるそうで
す。
さて、この周防大島は35年間高齢化率全国第1位だった過疎の島です。島の
外に開拓地を求めてハワイへの移民も多数送り出しました。ミカンの産地、民
俗学者の宮本常一、星野哲郎(演歌の作詞家)の出身地であること以外には
話題になることも少ない過疎の島だったのです。 ところが2010年頃を境に、
ここに移り住む人が増えてきました。大手電力会社を辞めて地元で採れるミカ
ンを使ったジャム屋を始めた若者、調理師から養蜂業者に転じた若者、煮干し
には大きすぎると捨てられていたイワシを使ったオイルサーディンをヒットさせ
る都会出身の若者....地元に帰るUターン組だけではなく、この島に縁のな
かったIターン組も増えているそうです。
藻谷 浩介氏とNHKの「里山資本主義シリーズ」(注1)には、周防大島だけで
なく中国地方の各地で進む若者や団塊世代OBのU/Iターンが紹介されていま
す。「のんびり田舎暮らし」志向とは異次元の、「里山(地元)を資本にして稼ぐ」
志向が、「地方創生」に弾みをつけるのではないかと期待します。この夏休み
には周防大島一周の実地踏襲をして来ます。
注1
http://www.nhk.or.jp/eco-channel/jp/satoyama/interview/motani01.html
(貞安)
●次号配信は、平成27年2月27日(金)午後の予定です。
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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
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