「バベル」という映画は凄い。

何という無情。


言葉、国の歴史文化が交錯する社会にあって、映画の中の作り話ではなく、現実社会に十分起こりうる、いや、すでに起こっている姿を描き出している。


コミュニケーションギャップが、善意であれ、誤解であれ、偶発であれ、思いもよらない方向へと流れる現実。

自分も、国を跨いだ仕事を通じ、いや、国内でも、または人生の中でも何度も経験していることを彷彿させる。


そして、伝わらない心という絶望感。

または、伝わる心も同時に共存する。


ロンドンのビッグベン



そして最後に見えるのは、いかなる事実も、真実をも意味を成さない絶望感と、その向こう側でやっと確認できる愛。


グローバル化が進展すればするほど、理解を超えた出来事、偶発的な大事件や、愛情の届かない現実は、もっともっと拡大する。真実が意味を成さないことも・・・。


ブラッド・ピットの深みある演技も。

菊池凛子の大胆で、切れ味ある演技も。

役所広司の裏がありげな役どころも。

そしてアメリカの子供たち、モロッコの子供たちの抜群の演技も。

俳優たちはいずれも、絶望感を与えるに足る名演ばかり。


 カンボジアのアンコールワット



話題になったクラブで照明が点滅するシーンも、何というほどの刺激でもない。

人間個人が支配できない人間社会の絶望感と、その奥に見出すべき人間愛の真相に、押し潰された。


私はこの映画の主役は、間違いなく菊池凛子だと思った。

とてもいい映画だ。


 台湾の台北101