脳循環代謝不全を起こしていた解離性健忘と転換性障害の1女性例 | gcc01474のブログ

gcc01474のブログ

ブログの説明を入力します。

    脳循環代謝不全を起こしていた解離性健忘と転換性障害の1女性例

                              *


<抄録>
 脳シンチグラフにより低脳血流を示した解離性健忘と転換性障害の歩行不能を起こした1女性例を経験した。症例は友人と夜飲み歩き、朝、自宅に帰宅したとき、夫より平手打ちを顔面に一回受け、解離性健忘と転換性障害の歩行不能を起こし本脳神経外科へ救急車にて搬入される。
 症例は働き者で身体が大きく力持ちな夫を持つ54歳になる主婦である。症例は派手好きであり、女友達と夜飲み歩くことを頻繁に行う。14年前、夫人が夕食の支度も何も行わず、女友達と飲み歩き、朝帰りしたとき、夫は平手打ちを夫人に一回振るい、夫は体格良く、非常に力が強いためもあり、顎の骨が折れ、大学病院にて手術を受ける。また、12年前、同じく女友達と夜飲み歩き、夫の夜の食事も造っておらず、朝帰りしたとき、夫から脇腹を殴られ、肋骨にひびが入ったこともある。
 症例は入院中も病院の食事を摂らず、すべて近くの料理屋に食事を注文していた。主治医である筆者がその我が儘を指摘すると夜には一人息子が来院し、筆者を激しく非難する。症例および一人息子が夫の乱暴などを激しく筆者に語るが、夫は仕事一途な真面目な男性である。
 症例は自然食に凝っており、医薬品は服薬することを好まない。入院10日後、解離性健忘と転換性障害の歩行不能は突然寛解する。入院当日、脳シンチグラフに現れた脳血流低下は解離性健忘と転換性障害に依るものと思われ、入院11日後、退院となった。

【key words】dissociative amnesia, conversion disorder, personality disorders, cerebral scintigraph, cerebral bllod flow

【症例】54歳、女性。
家族歴;症例および一人息子にパーソナリティ障害を感じ取れる。
頭部CT;特記すべき所見なし。
頭部MRI;特記すべき所見なし。
神経学的所見;全身的にやや腱反射亢進。
脳波;特記すべき所見なし。
血液・生化学的所見;特記すべき所見なし。
脳シンチグラフ;脳全般性に血流の低下が激しい(写真1)。
 朝、救急車で運ばれてきた。友人とお酒を飲み、朝帰りしたとき、玄関で夫から頬を殴られ転倒し、それ以来、起立不能、意識ももうろう状態であった。
 頭部CT上、出血はなく、脳梗塞が考えられた。しかし54歳と若く、経過から脳梗塞という診断は付けがたかった。一応、脳梗塞としての脳血栓溶解剤が投与された。
 両足両手の挙上と後屈も出来ることから脳梗塞は考え難かった。眼球および小脳の神経学的所見は正常であった。転換性障害が考えられた。
 症例は一人娘であり、甘やかされて育てられてきたと夫は言う。
 夫は4歳年上であり、見合い結婚。子供は男子1名設けるのみ。この出産時、帝王切開であった。夫は医薬品メーカーの営業を行っており、日曜日もお得意先とのゴルフの接待などを行うのが常である。
 症例は結婚当初より派手好きであり、高価な服、高価な指輪などを夫に購入させる。海外旅行も症例が主張し、ヨーロッパなどに3回旅行する。
 症例の年齢は54歳。頭部CT上、特記すべき所見なし。神経学的に全ての腱反射がやや亢進している他は特記すべき所見なし。ほぼ中肉中背で、やや脂肪太りの体型。性格は活発で気が強い。夫との間にかなりの確執があったと主張する。しかし、症例は過去および現在も2週に1度ほど、夕食の支度もせず、飲み仲間と朝まで飲み歩いている。筆者は、症例の我が儘である割合がかなり高いと判断。夫は医薬品販売会社に長年勤務する59歳の仕事一筋の主任。症例は夫の我が儘で一方的な性格を非常に非難する。
 14年前、夫人が夕食の支度も何も行わず、飲み仲間と飲み歩き、朝帰りしたとき、夫は平手打ちを夫人に一回振るい、夫は体格良く、非常に力が強いためもあり、顎の骨が折れ、大学病院にて手術を受ける。
 また、その2年後にも同じように飲み歩いて朝帰りの夫人を夫が一回殴り、肋骨にひびが入ったこともある。
 30歳前後の一人息子は父親を非難し、母親の味方をするが、一人息子にも我が儘で気の強いところが強く見受けられた。しかし、今まで、夫が夫人に暴力を振るったのは今朝のを含み、この3回しかないと一人息子も認める。
 脳波上も特記すべき所見なし。入院当日に行った脳シンチグラフにて脳循環代謝不全が見つけられた(写真1)。(写真2・写真3はcontrol )
 入院後、解離性健忘症と転換性障害の歩行不能との診断の元、bromazepam 8mg/日(朝、昼、夕、眠前、2mgづつ4回)投与。
 入院10日目、解離性健忘症と転換性障害の歩行不能は突然寛解。退院とする。しかし、それからも、一人息子を連れ来院し、夫の勝手気儘さを詰ること数回あり。一人息子も母親の主張を支持するが、夕食の支度もしないで朝まで飲み歩く行為を止めないことは社会的通念に反する、と説得。
 症例は『夫が暴力を振るうのでそれがストレスになりノイローゼになった。』と陳述する。
 夫は『暴力は、確かに12年前、食事も造らず朝まで飲み歩いていたときには短気を起こし脇腹を殴ってしまい肋骨を折ることをしてしまいました。また、その2年前にも食事も造らず朝まで飲み歩いていたとき頬を殴り顎の骨を折ることをしました。その他は暴力は少なくとも今回までここ12年間は振るったことはありません。』と陳述する。
 一人息子は結婚して別居している。しかし次のように陳述する。『親父が悪いのです。親父があの力持ちですから以前、母の肋骨を折って、母は1ヶ月、大学病院に入院しました。顎の骨を折って入院したこともあります。とんでもない親父です。あなたはそんな親父の味方をするのですか?』
 筆者は症例と一人息子にパーソナリティ障害を感じる。夫は短気なところが有るが、症例や一人息子のような異常性は感じられない。
 また次のことが判明した。7年前に福岡の中心街から離れた郊外に一軒家を建てそこに親子3人と夫の母親を加えた4人で生活を始めた。息子が結婚して家を出てより、夫婦と夫の母親の3人で暮らしている。夫の母親は元気であり、町内会の老人クラブの中心的存在であり、家に居ることは少ない。昼間は家には症例一人となる。症例は絵を描くことが趣味であった。その趣味を行うように夫は勧めるが症例は昼間はテレビを見て過ごすのが常である。運動するようにも夫は勧めるが、症例はテレビを見てばかりで運動は全く行おうとはしない。夫は仕事から帰ってくるのが毎日夜の10時過ぎであり、帰宅したときには疲れ切っており、症例との会話は少ない。夫は帰宅してからは食事して風呂に入り少しテレビを見て寝るだけで精一杯である。

【考察】    
 “解離性健忘と転換性障害”を発症したのは、そういう不平不満が蓄積されていた故、またそのパーソナリティ障害故、夫の暴力をトリガーとして発症したと考えられる。
 脳梗塞は発症後2日経過しないと梗塞部位が頭部CTに撮影されないが、脳シンチグラフであれば脳梗塞発症直後に梗塞部位が撮影・同定される。
 本脳神経外科は脳シンチグラフは頻繁に撮っており、撮影ミスは考えにくい(写真1)。症例は薬剤はほとんど服薬しないという厳格な自然食主義であり薬剤性の脳血流低下は考えられない。また厳格な自然食主義で脳血流低下が起こることは考えられない。

【文献】
1) Black DN, Seritan AL, Taber KH et al.:Conversion hysteria; lessons from functional imaging.J Neuropsychiatry clin Neurosci, 16(3), 2004
2) Krem MM:Motor conversion disorders reviewed from a neuropsychiatric perspective.J Clin Psychiatry. Jun;65(6), 783-70, 2004
3) Shen,W., Bowman, E.S. and Markhand, O.N.: Presenting the diagnosis of pseudoseizure.Neurology, 40; 756-769, 1990.
4) Schonfeld-Lecuona C, Connemann B J, Hose A et el.:Conversion disorders.From neurobiology to treatment ;Nervenarzt , july; 75(7):619-27, 2004
5) Stone J, Sharpe M, Binger M: Motor conversion symptoms and pseudoseizures : a comparison of clinical characteristic.Psychosomatics. Nov-Dec; 45(6), 2004
6)Snaith, P. :Somatoform and dissociative disorders. In :(ed.), snaith, P. clinical Nourosis. 2nd ed. Oxford Medical puburiations, Oxford Medical Publications, Oxford, 138-164, 1991.
7)山口成良:偽発作. 鈴木二郎、山内俊雄編:てんかん.臨床精神医学講座:中山書店、東京、72-81, 1998.

----------------------------------------------------------------------------------------
脳循環代謝不全を起こしていた解離性健忘と転換性障害の一女性例
A case of dissociative amnesia and conversion disorder of woman with a declease of cerebral blood flow.


http://homepage2.nifty.com/mmm23232/2975.html