神経ブロック療法の精神医学への応用 | gcc01474のブログ

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神経ブロック療法の精神医学への応用

                                

{要旨}
 精神的疾患に対する社会の偏見は少なくとも日本に置いては強い。筆者は今まで精神的疾患と称されるものは交感神経過緊張また中国医学的に言われる気の停滞に由来するとの考えの元に星状神経節ブロックなどを用い様々な模索をしてきた。周囲の理解は得にくく未だ模索段階であるが、ここに発表する。



{キー・ワード}精神医学、神経ブロック、経絡



{第1章}境界例

 
 神経症の患者は第一・第二胸椎に連結する筋肉が異常に硬化している。それが第三胸椎に及んでいることは非常に多い。また第四胸椎に及んでいることも多い。そしてそれは片側であったり、両側であったりする。ほとんどの場合、両側の硬化が起こっていても左右差の著しい場合が非常に多い。そしてその硬結した筋肉に局麻剤を筋注すると交感神経過緊張状態(自律神経失調状態)が劇的に寛解する。
 そしてこれは分裂症の初期および悪化時の患者にも全く同じである。
 その筋肉の攣縮を緩解するにはその筋肉への麻酔薬直注では効果は一時的であり、星状神経節ブロックが最も効果的である。
 たしかに星状神経節ブロックそのものに胸椎に付着する硬縮した筋肉の緩解作用がある。しかし星状神経節ブロックのみではその硬縮した筋肉の緩解が不充分と思われ、このトリガーポイント直注を併用している。

(症例1)
 患者は45歳、女性。2年前、会社での上司とのトラブルが原因で不眠症となる。心療内科に通い始め抗鬱剤(トフラニール一日75mg)とlovomepromazine(睡眠作用の極めて強い抗精神病薬)の眠前投与を受け始める。また、抗甲状腺ホルモン剤の投薬も受け始める。不眠が激しく、勤めを辞める。朝方、怪物から追いかけたりする夢をそれから見続けることになる。性格は明るく社交的である。
 偏頭痛も存在するため、脳に腫瘍ができたのではないかと考え、4月、当院受診。頭部CT上異常ないが、上背部の凝りが異常に激しく、本人もその激しい凝りを盛んに訴えていた。背部左側の第一第二胸椎に付着する筋が極めて硬く張っていたためその硬穴の最も激しい部分に2カ所、26ゲージ、2分の1インチの注射針にて1%プロカイン10cc直注。その日より2年間続いた激しい不眠症が全快。また抗甲状腺剤の服薬も中止。しかし5日目頃より徐々に再び不眠傾向が再発、また偏頭痛も併発。患者は星状神経節ブロックを拒否していたが7月14日、星状神経節ブロックを開始。左側に行う。星状神経節ブロックと背部硬穴へのプロカイン直注一回でその偏頭痛全快。

 たしかに星状神経節ブロックそのものに胸椎に付着する硬縮した筋肉の緩解作用がある。しかし星状神経節ブロックのみではその硬縮した筋肉の緩解が不充分と思われ、このトリガーポイント直注を併用した。

 2年間服薬していたマイナー・トランキライザーも漸減。また抗甲状腺剤の内服も中止。その後、ほぼ連日、星状神経節ブロックおよび背部硬穴へのプロカイン直注を施行。 施行20回。 不眠を始めとする様々な不定愁訴は解消し、再就職した。

(考察)
 星状神経節ブロックの奏功機序として星状神経節への直接の麻酔効果だけでなく、頚椎・胸椎に付着する筋肉の攣縮緩解により経絡の流れが円滑化しそれによっても自律神経安定化作用がもたらされると推測している。頚椎と胸椎の交わる部分は全身の経絡が多数交わっており、その部分に筋肉の攣縮が生じると経絡の流れは悪化する。その筋肉の攣縮はトリガー・ポイント直注でなくトリガー・ポイント鍼療法などによっても可能と思える。星状神経節ブロック単独で効果が思わしくない場合のみその他の方法を併用する必要性があるのかもしれない。しかし、より効果を確実にするためには他の方法を併用する価値は充分存在すると思われる。


(結語)
 交感神経過緊張状態を改善することにより全身の気の流れが円滑になり、そして神経症・自律神経失調症が治癒してゆくものと推測される。そして全身の気の流れを円滑化するためには星状神経節ブロックに背部硬穴への麻酔薬注入療法を併用するのも一つの方法と思われる。
 星状神経節ブロックの奏功機序の一つとして攣縮している背胸筋また頚部の筋肉の攣縮緩解によりその部分を流れる経絡の流れの円滑化が大きく関与していると推測している。その経絡の流れの円滑化により自律神経が安定化し、恐慌性障害など神経症が治癒してゆくと推測している。





{第2章}陰稜泉・プロカイン局注により寛解した恐慌性障害の一例


 恐慌性障害は様々な薬物療法によっても難治であり、また恐慌性障害の患者は何故か非常に星状神経節ブロックを恐怖し拒否する傾向を持つ。それは治さないという潜在意識の表出ではないかと筆者は考えている。今回、恐慌性障害の患者において星状神経節ブロックを頑なに拒むため、やむをえなく東洋医学で言う経穴に当たる陰稜泉へのプロカイン局注により劇的な治癒を見た症例を経験したのでここに報告する。


(症例)
48歳、女性
主訴;人の居る部屋に入ると圧迫感を覚え苦しい。
家族歴、既往歴;特記事項なし。ただし、診察時、および注射時、非常に神経質的な面が見られた。

 患者は3カ月ほど前より人の居る部屋に入ると圧迫感・心悸亢進・目眩などを覚え始め仕事に支障を来し始めた。内科に罹り抗不安薬(alprazoram 一日2、4mg、およびbromazepam 一日15mg)の投薬を受けたがほとんど軽快することもなかった。脳腫瘍ができたのかもしれないと思い当科受診。神経学的に異常の見られないところから脳の器質的なものは否定的と思われたが本人の強い要望により頭部CTを施行。異常は認められず、頸椎X-P上も異常は認められなかった。
 陰稜泉に26ゲージ、2分の1インチの注射針を用いて1%プロカイン5ccを2分の1インチの深さに注入。
 1週間後、来院したときは前回の神経質的な性格傾向は全く見受けられず朗らかな笑顔を見せていた。病態が完全なほど治癒していた。(この1週間、患者はethyl loflazepate 朝夕2回1mgずつしか服薬しなかった。調子の悪いときに飲むように出していたetizolamは全く服薬していなかった。)


(考察)
 恐慌性障害は星状神経節ブロックによっても難治なものが多い。未だこの一例のみしか施行していない。この症例は発病後未だ時間が経っていなかった。

 中国の古典には「陽の病は陽綾泉に、陰の病は陰稜泉にとる」という文献がある。筆者はこれを「男性または陽性体質のものには陽綾泉に、女性または陰性体質のものには陰稜泉に」と解釈している。(陽綾泉とは膝窩下外側を差し、陰稜泉とは膝窩下内側を指す)
 陰綾泉の部分は脛骨動脈・静脈および神経が走っており、その側をかすめるようにして注射針を進めなければならない。そして今までの経験上、注射針が脛骨動脈のすぐ側をかすめるように通ったとき最も効果が高いと結論している。それはおそらく動脈をかすめるように注射針を挿入するのが気の流れへの影響力が大きいためと推測している。


{第3章}
 筆者の研究では下腿は人体の一つの縮図を成す。耳や手や足に人体の縮図が描かれているように下腿にもそれが存在する。脛骨が椎骨となり、例えば左の脛骨周辺の硬結(しこり)があれば、椎骨の左方のその相当する部位(例えば胸椎など)に硬結が存在する。脛骨においてそれを指圧してゆくと自然と椎骨周辺のその硬結も消失してゆく。そしてそれとともに心の硬結も消失してゆく。
 これは星状神経節ブロックでも言えると思われる。断酒会・シアナマイドでも治療困難であり、臨床の現場で分裂病よりも治療困難とさえ言われるアルコール中毒は患者の心の中に溜まっている不満を星状神経節ブロックで緩和させることにより始めて治療可能ではないかと思われる。また分裂病に対して筆者は喘息で苦しむ分裂病患者に対し星状神経節ブロックを繰り返し喘息だけでなく分裂病に対しても劇的な緩解を得た経験がある。星状神経節ブロックを施行する以前より抗精神病薬は半量以下でも良好すぎるほどのコントロールを得た。なお、肝機能の低下などは認められなかった。
 また、重度で治療困難な薬剤性パーキンソニズムに対し、星状神経節ブロックにより非常に良好な結果を得たことのあることも付け加えておく。




【参考文献】
1)本間祥白;  難経の研究; p675, 1983, 医道の日本社
2)芹沢勝助;  人体ツボの研究; p254, 1986, ごま書房
3)李 丁;   針灸経穴辞典; p514, 1986, 東洋学術出版社
4)郭 金凱;  鍼灸奇穴辞典; p432, 1987, 風林書房
5)深沢 要;  レーザー鍼と光灸療法; p548, 1994, 谷口書店
6)柳泰佑; てのひらツボ療法; p187, 1986, 地湧社
7)小高修司; 中国医学の秘密;    p209, 1991, 講談社 
8)神川喜代男; 鍼とツボの科学; p192, 1993, 講談社
9)神川喜代男; レーザー医学の驚異; p184, 1992, 講談社
10)幡井勉;  アーユルヴェーダ健康法; p184, 1994, ごま書房
11)首藤傳明;  経絡治療のすすめ;   p259, 1983, 医道の日本社
12)張仁;    難病の鍼灸治療;   p206, 1996, 緑書房
13)入江正;   経別・経筋・奇経療法;  p273, 1988, 医道の日本社

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