ベテルギウスが超新星爆発を起こした際、地球からどのように見えるのでしょうか?

東大・数物連携宇宙研究機構の野本憲一教授のチームによる予想が、前記事でも引用したNHK番組で紹介されていました。

以下の画像は、そのNHK「サイエンスZERO」(2011年11月25日放送)からの引用です。

 

 

爆発から1時間後、星の色が赤色から眩いばかりの青色に変わり、夜空に関心のない人の眼さえも引きつけます。温度が急上昇しているのです。

 

 

 

3時間後、満月の約100倍の明るさで輝きます。昼間であってもその輝きをしっかりと確認できるそうで、この明るさは約3ヶ月間続くと予想されるとの事。

 

 

 

ベテルギウスの周辺では爆発間際に放出されたガスが、超新星爆発の光を受けて輝きます。しかし4ヶ月が経つ頃から温度が下がり始め、色が青色からオレンジ色へと変化します。

 

 

 

やがてさらに温度が下がり、色は赤く、そして暗くなっていきます。約4年を経る頃には肉眼で確認できなくなるそうで、オリオン座からベテルギウスが無くなってしまいます。

 

 

数百年後、望遠鏡を夜空に向けるとベテルギウスの残骸と光を反射するガスの星雲を観測することが出来るでしょう。

 

さて現在、超新星爆発によるガス星雲の中で有名なものの一つに「かに星雲」があります。

これは1054年に爆発を起こした超新星(SN 1054)の残骸で、日本では藤原定家が著した「明月記」にも記録が残っています(ただしこの出来事は定家出生以前の事なので、陰陽師が報告した過去の記録が明月記に記されたもの)。

 

かに星雲 (Wikipedia より)

 

因みに、かに星雲までの距離は約6500~7000光年。実は有史以来、肉眼で確認された超新星爆発は7回ほどで、このかに星雲を発生させたSN 1054超新星がもっとも地球に近かったのです。

という事は、もしベテルギウスが爆発を起こしたら、もっとも地球から近い距離での超新星という事になり、その距離はかに星雲の1/10。宇宙のスケールで言うと、お隣のようなものです。

地球には影響がないのか・・・?

 

2011年6月28日放送 NHK「コズミック フロント」 より

 

星が超新星爆発を起こすと、様々な元素及び宇宙線・放射線がまき散らかされます。その中でも人類にとって脅威とされるのはγ線で、地球がこの直撃を受けると(γ線バースト)有害な紫外線などの宇宙線をバリアしているオゾン層が破壊され、地球上の殆どの生物は存亡の危機に陥ります。地球上にある数億年単位の太古の地層を調べると、γ線によってオゾン層が破壊され当時の生物が絶滅したと推定される痕跡が残されている、と主張する学者も多いのです。

 

ところでそのγ線ですが、これまでの研究により星が最期を迎える時のγ線バーストは、その自転軸から角度にして約2度以内であるというのが知られているそうです。

となるとポイントは、地球に対するベテルギウスの自転軸の向き。ハッブル宇宙望遠鏡による観測が続けられました。

そしてその結果。

 

2011年6月28日放送 NHK「コズミック フロント」 より

 

地球に対してベテルギウスの自転軸は20度傾いていたのです。

とりあえず、天文学者・宇宙物理学者らは「大丈夫だろう」との事。

 

ただしγ線バーストの指向性の理論的・実験的根拠はまだはっきりしているとは言い難く、また超新星爆発時の衝撃による自転軸変動の可能性もある為、実際は「起きてみないと分からない」というのが実情でしょう。

何かこう、宇宙スケールで地球の「ひょっとしたら危ないかもしれない」現状を考えると、地上でチマチマと核兵器開発を行っている連中が心底アホに感じてしまいますわ。。。

 

やがて起きるであろうベテルギウス超新星爆発の観測には、日本の研究所及び設備も大きな役割を担っています。

東京大学宇宙線研究所・神岡宇宙素粒子研究施設と、岐阜県飛騨市の山中地下1000mにある世界最大のニュートリノ地下観測装置「スーパーカミオカンデ」がそれ。

 

スーパーカミオカンデ検出器 「東京大学宇宙線研究所・神岡宇宙素粒子研究施設」HPより

 

実は超新星爆発の直前(おおよそ数時間前)に、星の中心から大量のニュートリノという粒子が放出される事が分かっています。スーパーカミオカンデが大量のニュートリノを検出し、それが超新星爆発によるものだと解析されると、世界中の天文台がベテルギウスを観測する手筈になっているそうです。

余談ですが、スーパーカミオカンデの前身、カミオカンデによって史上初めて自然に発生したニュートリノの観測(1987年、大マゼラン星雲内の超新星爆発)に成功した事で、2002年ノーベル物理学賞を受賞したのが小柴昌俊・元東大教授でした。

 

人類が初めて経験する、極めて近い距離での超新星爆発。

リスクを考えると、う~ん、見たいような見たくないような。。。

不確定要素が多すぎるよ。

 

 

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