今日、小生の秘かな恋が終わりました。

多分、人生の中で最後の短い恋だったような気がします。


恋をすると、恋心は、金で売買できないものだと痛感します。

だからこそ、恋は、ときめくものなのでしょう。

時間が経つにつれ、人生を豊かにもしてもくれます。

ただ、恋の始まりは、いつも甘美ですが、終わりは苦い、というのも事実です。


ずっと昔、21歳の学生の時。

夏休み帰省前、鎌倉の由比海岸で泳いで、そのまま富士山で一晩過ごして、下宿屋に帰ると、故郷でOLをしている恋人からの一通の便りが届いていました。

「取引先の方から、プロポーズされた」との内容でした。

帰省後、「大学卒業まで待ってくれないか」というプロポーズに、彼女の「待てない」という返答。

二度としないと誓った遠距離恋愛でした。

虚しさの募る日々・・その年の秋、彼女は、お嫁に行きました。


それから、七年の月日が流れた30代目前の頃でした。

小生は、まだ独身でした。

深夜になると、電話のベルが鳴るようになり、受話器を取ると切れます。

そんな日が何日か続き・・ある日、受話器の向こうから聞き覚えの声がしました。

精一杯の搾り出した涙声でした。

七年前に別れた彼女からの電話でした。


ご主人は、某企業の営業社員で転勤も多く帰宅も遅く、すでに子供二人の母親になっていました。

それからでした。月に一度か二度、深夜での彼女との電話のやりとりが始まりました。

心情的には、不倫と言っても過言ではありません。


小生も男です。

あの七年の間、いくつかの小さな恋愛事もありましたし、大きな出会い、別れ、交際していた彼女もいました。

ただ、心の大きな空白に、いつも彼女の存在がトラウマのように居たのも事実です。

ある日、大きな決断をする時がやってきました。

彼女が離婚して、そのあと再び小生と同じ人生を歩むかどうか・・選択すべき分岐点でした。

当時の辛さは、今も思い出したくないほどの深い傷があります。


結局、ぼくは、日本を離れました。


以来、彼女とは全くの音信不通・・別の人生を歩んでいます。

風の便りでは、離婚もせず幸せな家庭を築いているとのこと。


日本を離れて海外に出ると、独身の身にとっては面白いものです。

日本人離れした考え方の異国人とのコミュニケーションが始まります。

新しい人生の展開でした。


異国人との数多ある恋もしましたが、優しさを基準としたドライとかウェットとかというテリトリーではなく、無意識にですが・・信仰を基準にした恋愛を進行させる精神性が伴っていたような気がします。

あの頃は、もう日本に戻る気持ちは、一切無かったです。


・・ところが、今からちょうど20年昔のクリスマス・イブの夜でした。

一緒に過ごすはずだったフィンランドの女性に会う途中に、偶然、日本人の女性と異国の街で出会いました。

「一目ぼれ」と言う言葉がありますが・・そんな感覚です。

日本古来の儀礼を持ち合わせた立ち居振る舞いと温厚な優しさでした。

運命的なものとして人生の最後の「恋」だという直感です。

彼女の存在は、かつてトラウマを引きずった昔の彼女の存在を雲散霧消させるほどの大きなものでした。


彼女が日本へ帰国したのち、ぼくは、結婚というものを意識しました。

「一生涯のうち、この人しかいないと思える人と何人と出会えるだろうか・・そして、その確率と結ばれる成功率は・・」多分、宝くじに当たるよりも難しいのではないかと思いました。

それよりも大事なことは、幸せになれるかどうかという確信性です。


経験値からして、人間としての立ち居振る舞いが悪いと不満だらけで幸せな人生を過ごすことができません。


20年昔のクリスマスイブの日に出会った彼女は、その立ち居振る舞いが巧い女性でした。

「今、恋心を告白しなければ一生後悔するだろう。結果はどうあれ・・」という天の声にも似た刹那な想いでした。

地球を一周半して追いかけて、人生二度目のプロポーズをした相手が、彼女でした。

結果は・・、そう、今の家内であり、女房であり、妻です。


あれから、20年間・・浮気一つなく、他の女性に振り向くこともなく、家庭を維持できたのも家内の立ち居振る舞いだったと認識しています。

いや、お互いの我慢かもしれません。(笑)


ところが・・最近、実に立ち居振る舞いの立派な同年代の女性に魅了されてしまいました。

もう恋などしないだろうと思っていたのに、20年目の恋心です。


今日、彼女にふられてしまいました。

今、若い人たちに言えることがあります。

スタンダールの恋愛小説「赤と黒」があります。

あの恋愛技法は、古今東西において正解です。

誰かに愛してほしいならば、実践することです。

が、素敵な恋は出来ないです。


夕餉の食卓に、鰯2匹・・赤と黒の焼き魚が並んでいました。

家内には悪いですが、失恋のせいか・・どうも食べる気がしませんでした。

鰯の頭も信心から・・そんなことを信じたくもないです。


あの人にふられました。

でも、自分の正直な気持ちを伝えられただけで幸せです。

(家内にごめんです)

あの人が幸せな人生を過ごせますように心から祈ります!