「僕たちはディスカッションしてるんだよ。黙ってれば僕が答えを言う訳じゃないからね」
思考停止状態の私に向かって、上司は言った。優しい口調だが、私はその言葉から温かみを感じなかった。
同じような状態が、ここ2週間ほど続いている。私の理解力とコミュニケーション能力が低いためか、上司とのやり取りが停滞してしまう。上司の態度も、次第に冷たくなっていく。私の能力の低さを目の当たりにし、呆れているのだろうか。それでも上司は、私に対してある程度のアドバイスを与えてくれる。だが、私は上司の話を完全に理解できず、勘違いしたまま仕事を進めてしまう。再び上司からあれこれ指摘をされるのだが、これも完全に理解できない。この悪循環が続き、納期ギリギリになって、不完全なアウトプットを渋々納めることになる。研究室で教授と話をしていた時と少し似ている。私の理解が及ばない次元で話が展開され、私はただひたすら嵐が去るのを待つしかなかった。その時は教授の頭がおかしいだけだと考えていたが、実は私の能力が低すぎただけなのかもしれない。
私はディスカッションが苦手だ。相手から何か言われると、相手の言い分が全て正しいと感じてしまう。「相手は常に正しく、自分は間違っている」と、無意識に考えてしまう。私が何か話すこともあるが、上手く伝わらずに聞き返されるか、否定されることがほとんどだ。いつの日からか、私は主張することを避けるようになった。相手の言い分を受け入れることが多くなり、自分で考えることも苦手になってしまった。
普通の人間と比べると、私には何か決定的に欠けているものがある。それが何なのかは特定できていない。色々なものが欠けているせいで、一度に捉えることができないのだろう。放置したままだと、より大きなミスに繋がる恐れがある。そろそろ対処しなければならないだろう。