~徒然趣向~-BLACK RAIN

『BLACK RAIN/般若』
01. 足音
02. BLACK RAIN
03. 世界はお前が大ッ嫌い
04. 陽が昇れば feat. JAY'ED
05. FIRE
06. お前のせい
07. ポイ
08. カバディ
09. 何も出来ねえけど
10. ビルの向こう
11. 境界線~ライン~
12. RIOT

お久々でございます。
お盆休みを利用して書き書きします。

最近(6月以降)は、日本語ラップも面白い作品のリリースが続いています。
この作品もその流れの中で発表された般若のニューアルバム。

前作「HANNNYA」が個人的にパッとしなかったため、今作に関しても期待半分・不安半分といったところでしたが、例の東日本大震災のチャリティーソング『何も出来ねえけど』の発表に心動かされたため購入しました。
個人的に『何も出来ねえけど』が収録されているのには疑問符も抱きますが、別に批判的な意見はありません。

さて本題。
般若といえば、大元を辿れば、ヨシと名乗り、RUMIと組んでいた『般若』というラップユニットに行き着く訳ですが、YouTubeにもアップされているYOU THE ROCK★とZEEBRAとの若さたぎるやりとりに、ある種の狂気を感じたものです。

「妄走族だ、バカヤロウ!!」よろしく、そのようなイメージのまま発表された1stアルバム『おはよう日本』でいきなり若手注目株となった彼は、その世論を見下ろすかのように我が道を進み出したように思います。

ワルとかサグとか、そんな狂気じゃなく、何か触れてはいけないような、それでいて自分達のそばにいながら世間をあざ笑うような狂気が1曲1曲から感じられて、程よい緊張感とスリルがアルバム全体に漂っていたのですが、徐々にその作風も変化していきました。

1stの流れをある程度含んでいたように思える『根こそぎ』。持ち味の1つだった痛烈な歌詞に関しては、この『根こそぎ』が一番だと個人的に思っています。
続く『内部告発』では、より内面を吐露するかのような、「そんなに強くはない」般若像が垣間見れるようになりました。個人的な般若クラシックは『根こそぎ』およびこの『内部告発』。

この辺りから、自身も公言している長渕剛の影響がちらほらと顔を覗かせるようになってきたと感じますが、『ドクタートーキョー』を経た『HANNYA』でまったく逆のベクトルに振り切ったように感じました。

あえての作風で、日本のヒップホップに警鐘を鳴らすような意味が込められていたのかどうかは謎ですが、僕の求める般若像とはかけ離れた作品でした。そんなこと、般若からすれば「知ったこっちゃねーよ」でしょうけど。。

そんな『HANNYA』を経ての本作品『BLACK RAIN』。
先述の「期待半分・不安半分」の理由は今まで述べてきたとおりですが、聴き終わった感想としては、「よかった」と思います。もう本当にいつも安易な感想ですみませんが・・・

シリアスな般若とおふざけな般若のバランスがとても絶妙だったように思うのです。とは言うものの、おふざけな曲って『ポイ』くらいしかないのですが、そのパンチ力がすごい。まぁ、ディスではないと思うんですけど、EXILEやAKBなんかの登場にニヤッとしてしまうこと必至です。

なので、他の曲はシリアスということになるのですが、一言でシリアスというものの、そのベクトルは様々な方向に向いています。
内面的なこと、恋愛に関すること、または先述の大震災に関すること。

多くのアーティストがチャリティの名の下に多くの楽曲を発表しているのは称えられるべき事実ですが、般若のそれもまた、彼だからできる、ヒップホップだからできる楽曲に仕上がっています。
歯に衣着せぬものの言い方もその1つです。

また、根が素直ではない(推測)彼だからこその『お前のせい』や『カバディ』では、じっくり聞かせてくれますし、久々に客演を迎えた『陽が昇れば』や、タイトル曲『BLACK RAIN』なんかも秀逸。

4th『ドクタートーキョー』あたりから、I-DeAやBACH LOGICなど、幅広いプロデューサーと組むことが目立ってきた般若ですが、今作でも非常に幅広いプロデューサーとタッグを組んでおり、アルバム全体を通して色鮮やかな印象です。
中でもPUNPEEに耳が行ってしまうのは、もはや中毒でしょうか。

正直、今作が何年後にもクラシックと位置づけられるかどうかは分かりません。スルメアルバムかもしれませんが、今の段階ではやっぱり『根こそぎ』や『内部告発』を超える作品ではありません。
ただ、「2011年にリリースされたアルバム」としては、非常に意味を持つアルバムであるように感じます。理由は『何も出来ねえけど』だけではないですよ。

『BLACK RAIN』



『何も出来ねえけど』