凪良ゆう「汝、星のごとく」(2022年、講談社)を読んだ。


青埜櫂(あおのかい)と井上暁海(いのうえあきみ)の17歳春から32歳夏までの物語で交互に描かれていく。


印象深い箇所を4つ抜粋しておく。


北原先生の自転車の前カゴには食料品の袋が積んである。白衣の裾が風になびいている。「着替えもせんて、どんだけ急いどんねん。鬼嫁なんやろか」...p41


それとは別に、お金とは別の場所にある、ただただ「わたしはこの物語が好き。世に出したい」って価値、っていうか欲があるのよ...206


賢いはずなのに、燃費の悪い生き方をしている。

ーそらガス欠にもなるわなあ。

ーどっかで補給せんと止まってしまうわなあ。...p211


俺たちは軽くにらみ合ったあと、湯に落とされた角砂糖のように、ほろりと崩れて笑い合った。押し固められていた心がほろほろと、あっけなく、溶けていく。

「みんな変だね」

ああ、そうだ。まともな人間なんてもねは幻想だ。...p319


瀬戸内の小さな島の生活、純愛、断ち切れない親のしがらみ、シングルマザー、シングルファザー、ゲイ、女性の自立、成功と挫折、グレーゾーンを黒と報じる週刊誌、SMS で実名を暴く、SMS での炎上、誹謗中傷の怖さ、自殺、病気、様々な問題を内包していて考えさせられる小説である。


普通とは何か、愛のあり方はどうあるべきか、問われている。


凪良ゆう「汝、星のごとく」2022年、講談社。

単行本の帯の紹介文。