凪良ゆう「流浪の月」(2019年、創元文芸文庫)を読んだ。


ネットフリックスで映画「流浪の月」(2022年、2時間30分)を観て原作の心理描写はどう書かれているのか知りたくて図書館から借りてきた。


登場人物の心理描写が丁寧でどんどん引き込まれて一気読みしてしまった。


まず凪良ゆうのプロフィールから、


1973年生まれ、母子家庭で小学6年のとき母親が帰ってこなくなり児童養護施設へ。高校1年で自主退学して働きだす。34歳からボーイズラブの小説を10年書き本格小説へ。本屋大賞を「流浪の月」(2020年)と「汝、星のごとく」(2023年)の2度受賞している。


つぎに印象的なポイントだけ書いておく。


家内更紗(かないさらさ)....父が病気でなくなり母は恋人といなくなり伯母の世話になる。小学4年9歳の時、誘拐に合う。実は伯母のひとり息子孝弘(中学生)から性的虐待を受けていて家に帰りたくなく、声をかけられた大学生に自分から付いて行ったのだった。


佐伯文(さえきふみ)....大学生の時、親元(地方の裕福な家)から離れマンション暮らし。子供のままの未発達な性器のことを誰にも言えずひとりで悩んでいた。公園で少女ばかり遠くから眺めていたのでロリコンと変態扱いされていた。


中瀬亮(なかせりょう)....更紗と同棲。ふだんは大人しいがスイッチが入ると暴力を振るうDV男。暴力を振るったあとはすまないもう絶対しないから許してくれと、それがもう何回も。更紗が少女誘拐に合ったことを知ったうえで恋人になっていた。逃げ場がないから母親のように優しくしてくれるだろうと。別れたあとも更紗と文との仲を盗撮してSNSに投稿したり週刊誌に売ったりする。


安西佳菜子(あんざいかなこ)....更紗が勤めるファミレスの同僚。シングルマザーで梨花(8歳)の娘がいる。不倫相手と旅行するため梨花を更紗に預けるという奔放な女性。


少女誘拐から15年後に更紗と文が再会する。


先入観に満ちた理不尽な世間の目。事実と真実は違うこと。理解されないふたりの思い。インターネット社会の怖さ。ネットで暴かれて何度も転居する様。その当たりの舞台設定と人物の心理描写がじつにみごとである。