瀬尾まいこ「傑作はまだ」(2019年、ソニーミュージックエンターテイメント)を読んだ。


4章からなるが、3章までは余りにも突飛な話であり得へんやろと拒否反応を起こした。


主人公は加賀野正吉(かがのまさきち)50歳、作家。人間の弱い部分、嫌らしい部分、自己嫌悪などを書くどれも暗い小説。本は30冊ほど出しており印税だけで生活できる。


26年前にゆきずりの女、永原美月を孕ませ子が生まれるが、別れて毎月養育費10万円送る。受け取りましたと毎月子どもの写真が1枚添えられる。20年間241枚の写真になるが会いに行ったこともなく連絡を取るることもない。実家の父母とも25年間一度も連絡を取らなかった、という変わり者である。


30歳のとき閑静な住宅地にひとり住まいには広すぎる2階建て中古を買って引きこもり外部とはほとんど接触もなくただパソコンに向かって小説を書くという生活。


そこへ、ローソンでバイトしている永原智(ながはらとも)、25歳、が息子だと言って転がり込む。


小説は書いているが社会性の全くない引きこもりの父親と25歳フリーターだが常識も生活力もある息子の奇妙な生活が3章分に渡り描かれる。


まるで父親が息子から外の世界を教えてもらっているようなのだ。


第4章でことの真相が判明して成る程と納得するのだ。


籍も入れずにシングルマザーとして智を育てた力強さに感服してしまう。


そして正吉の小説の作風が変わってくるのだった。



瀬尾まいこ「傑作はまだ」(ソニーミュージックエンターテイメント)。

p178