瀬尾まいこ「優しい音楽」(2005年、双葉社)を読んだ。3つの短編からなる。


「優しい音楽」

永居タケル(会社員、23歳)と鈴木千波(女子大の二年生)は妙な出会いで恋人になる。千波の家庭にはある秘密があった。タケルはフル―トを独学で練習して、千波ピアノ、千波父ギター、千波母が歌でティア―ズ・イン・ヘブンを合奏する。


「タイムラグ」

深雪は成り行きで不倫相手が妻と一泊二日の旅行をするので8歳になる娘佐菜を預かることになった。そして成り行きで佐菜のおじいちゃん(佐菜父の父、佐菜父と佐菜母の結婚に反対している)を訪ねることになった。タイムラグとは深雪のマンションの部屋の時計を10分遅らせていることを意味する。


「がらくた効果」

同棲して1年半になるはな子はがらくたを集めるのが趣味だ。年末のある日公園からホ―ムレスのおじさんを拾って来たからもう大変、ひと騒動になる。


3編とも突飛でぶっ飛んだ発想の小説だ。出会いにしても同棲にしてもがらくた集めにしてもさして深刻にならずに軽いタッチで描いていく。キスにしてもセックスにしても同棲にしても不倫にしてもさらりと流してしまう。あり得ない話だがついつい惹き込まれてしまい読み終えたらなぜかほっこりするのだ。不思議な作家である。


瀬尾まいこ「優しい音楽」(双葉社)。左上に飛行機が飛んで飛行機雲が筋を引く。