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東定生「鍋つかみ」10句鑑賞
♦駅で弾くもしもピアノが弾けたならYouTube を見ると駅ピアノの動画がたくさん載っている。なかにはリクエストに応えすぐに弾いているのもある。「もしもピアノが弾けたなら」という歌の題名を上手く取り込んでいる。
♦スマホから掴まれている趣味趣向
スマホの画面に広告がアップされるが個人情報を掴んでいるなと思う。だけどスマホはもう手放せない。
♦陽性にニワトリならば殺処分鳥
インフルエンザではすぐに何千羽ものニワトリが殺処分される。コロナもまかり間違えば殺処分されたかもしれないのだ。
♦花束を駅に忘れる退職日
サラリーマンを長く勤めあげて緊張の挨拶をした。お疲れ様と花束をもらった。帰り道、駅のベンチにふうとため息をついて腰掛けた。電車にあわてて乗った。ハッと気付いたら花束を忘れていた。苦笑してしまった。
♦キャッシュレス無限に見えるお小遣い
世の中キャッシュレス社会でATMもどんどん減ってきている。財布からお金の出し入れがないのでこの句のような勘違いが発生する。
♦「なごり雪」もう口ずさむ汽車がない
イルカの「なごり雪」は1976年にリリースされた。一方、SLは1975、6年頃廃止され、ディーゼルから電車になった。もう汽車はみることができないのだ。
♦ドラえもん生まれてずっとグータッチ
ドラえもんの手はまんまるに描かれている。だからグータッチなのだ。鋭い川柳的観察眼である。
♦夏休み人の尻見て富士登山
富士山の山開きに通行料2,000円も話題になって報道されていた。大勢の人だ。まさにこの句の通りだと思う。
♦正直者とっさに出ないおべんちゃら
まるで自分のことを言われているみたいだ。正直者で口下手で損ばかりしている。
♦合言葉忘れて家に入れない
笑ってしまってから笑ってばかりいられない自分に気付く。パスワードや暗証番号が多すぎて管理できない。句のようなことも起こりかねないのだ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240714/15/gayu575/64/b7/j/o0742108015462982227.jpg?caw=800)
「鍋つかみ」、2024年5月18日発行、新葉館出版。「アベノマスク届くころには鍋つかみ」、「黒ずんだアベノマスクの鍋つかみ」。
「ゆにアンソロ20句鑑賞」
♦青空が似合うと言われ泣けません/浅井ゆず
雨より曇りより晴れの日が好きだ。でも青空が似合うと言われたら変に構えてしまいそう。そんな他人の目を気にする自分が嫌いだ。
♦詩歌詩歌とかみしめるしかないするめ/岩田多佳子
するめを噛む擬音語が詩歌詩歌だという。どれだけ文学をかみしめているんだろう。
♦狂わない時計を捨てに花野まで/笠嶋恵美子
今の時計は技術が進んで狂うことはない。そんな息苦しさを捨てたいと思うときだってあるのだ。花野がいい。
♦寂しくはないというのにみんな来る/小原由佳
ちょっとした病気になったのだろうか。いいと言っているのにみんな来てくれる作者の人柄が羨ましい。
♦信じろと熊は私を横抱きに/川田由紀子
最近特に熊の出没のニュースが多い。キャラクターの熊は可愛いが実際の熊となると信じろと言われても困るのだが。熊は彼氏のことか。
♦追いつけばあなたは海月だとわかる/河村啓子
あこがれのあなた。実は海月だったとしたらこれはショックだろう。つかみどころのないあなた。でも惹かれるのだ。
♦待ち針打つ六条御息所の息/黒田弥生
源氏物語が好きで何回も読み返している。なかでも六条御息所は魅力的な女性だ。川柳に詠みこもうとしたことがあるがうまくいかなかった。その点この句はえらい。
♦桃缶を新薬として推してみた/澤野優美子
白桃は大好きだ。桃缶もいい。こころが弱っているときに甘い桃缶は薬にだってなれると思う。
♦鳥になるときぱほぉ〜んと鼻あげる/斉尾くにこ
象がぱほぉ〜んと鳴いている情景が目に浮かぶ。鳥になるときなぜ象の鳴き声なのか不思議だが迫力がある。
♦雨天決行 十三日の金曜日/浪越靖政
キリスト教徒でもないのに不吉な日とされる。そんなことに関係なく雨天決行なのだ。強い意思を感じる。
♦午後からは水平線になるつもり/西田雅子
午前中はいろいろあったけれど午後からは平穏な水平線のようになるという。人生を思わせる広大な景が広がる。
♦地上絵は未完 戻ってくるはずだ/芳賀博子
そう言い切られるとそんな気がしてくるから不思議だ。断定の川柳である。
♦足じゃんけんパッと開かぬ五本指/弘津秋の子
足の指は手の指ほど器用に動かせない。じれったくなる。足じゃんけんというのも面白い。人生ままならぬことばかりだ。
♦たてがみを靡かせ入る牛丼屋/藤山竜骨
サラリーマンの昼食風景だろう。意気揚々と風を切って入るのが牛丼屋というギャップが見事である。
♦菜箸でひょいとつまんでいる殺意/真島久美子
菜箸でつまめるほどの殺意とはどんなものなのだろう。殺気だろうか。蝿を掴む兵法の達人のようでもある。
♦猫じゃらしずっと振るのは無理だから/宮井いずみ
猫じゃらしは猫と遊ぶには最適なのだろうがずっとは無理だという。猫を何かになぞらえているのか。
♦記念写真まぶしい明日を信じてた/峯島妙
顔に自信がないので写真は苦手である。記念写真なら避けらないので渋々。卒業写真だろうか皆明るい未来を信じている顔していた。
♦夏の色全部足したら影法師/森平洋子
夏の暑さはともかく輝くようなまぶしい季節である。全部足したら影法師になるとは凄い感性である。
♦こじ開けた季節するりと青蜥蜴/山崎夫美子
こんなところに青蜥蜴を持ってくるなんてズルい。上手い。青蜥蜴も神秘的である。
♦風神と美人逆らわないでおこう/四ツ屋いずみ
風神に美人を対比させる。さすがに逆らえないよね。吹き飛ばされてしまう。
川柳草原No.134は第4回草原賞入選句発表号となっている。
「朱雀苑」竹内ゆみこ選
誕生日新芽は全部摘みました
否定語をぐっと奥歯で噛み殺す
罪はまだ流れてくれぬ昼の月
きょうもまた風に吹かれて少年は
ゆったりと和解のハグができました
なんとまあ憂鬱なのは顔である
つれづれに恋文書けばしぐるるか
第4回草原賞「雑詠」守田啓子選
引きつった表情筋の愛し方
互選王選手権「古」
いっこもん 古武士のような父だった
(編集後記)
▼毎日が日曜日である。朝一番、カレンダーの消し込みをする。そして何月何日何曜日と赤マジックで大書してホワイトボードに張り出す。きょうの予定とやるべきことを付箋に記入して貼る。ささいなことでもやりたいことを探して貼る。そして実行できた付箋を剥がしていく。ちいさな満足感が得られる。それでもあり余るときは源氏物語を書き写す。いまは須磨明石あたりだ。 (雅)
天候、50%の降水確率、くもり一時雨、温度27℃、降水0.3mm、湿度64%、風力2m。
梅雨のさなか、天気予報とにらめっこしてやることに。なんともまあ、ゴルフが好きな者ばかりである。雨もほんの小雨程度で傘がいらないくらい、涼しくて良かった。
スコア 自己目標 未達
パーの数 自己目標 未達
パット数 自己目標 達成❗
せっかくアプローチをピン側に寄せたのに傾斜を読みきれずパーパットを外したのはくやしい。