もうすこし -44ページ目

・・・春がきたって何になろ
あの子が返って来るじゃない
(中原中也 「在りし日の歌」より)
ひとりでいるとき
ふと声に出すのは
亡き子の名前であり
同じように
この世界のどこかで
ふと亡き人の名を呼ぶ
見知らぬ方の
つぶやきの深さを
想ってみたりします
その呼び名が
この世界の空気を震わせて
空にほどけて
儚く消えていくように
言葉の波は
きっと彼方にある
心を震わせて
再び名前となって
復号し、
対称になった向こう側の
住人に届くのではないか
ぼんやりと
そう感じながら
大丈夫きっと
想いは届いていますよ
・・・と頷く薄水色の空
SNSから復号される
哀しく辛く優しい愛情に
(春への期待に代わって)
日々をゆるゆる温められて
過ごしています。

