生前の息子は
愛想笑いが上手な子でした。

姉弟にカメラを向けると
姉は面倒くさそうな顔をしましたが、
弟のヨシはどんなに疲れていても
ニッコリ笑顔でピースサインを
してくれました。

遺影について娘は
この少し不自然な笑顔が
ヨシっぽいな⋯と
ポツリと寂しそうに
こぼした事もあります。



入院中の病院から
週末だけ自宅に帰れていた頃、

ヨシのために緑色の椅子を
買って中庭に置いてみました。
座ったヨシは、

おー!なかなかいいかんじ
きにいった!

と喜んでくれました。
でもすぐに室内に引っ込んで
ソファーにごろり。

今思うと、もうその頃から
椅子に少し座ることすら
しんどかったのだと思います。



写真はヨシが初めてマカロンを
食べた日。

何かのテレビか動画でみた
そのカラフルなお菓子を
いちど食べてみたい!と
姉弟からせがまれて
買ってきたのですが、

姉は食べるなりがっかりして
思ってた味じゃないな~と。

絵本から抜け出したような
色合いに期待を寄せすぎるせい
かもしれません。

ん〜?でもこれはうまい!
きにいった!

とヨシは、おどけながら
そしておそらくは、がっかりを
隠しながら美味しいと叫んで⋯

僕の息子は、優しい嘘がつける
本当にいい奴だったのでした。



ヨシが一度しか座れなかった
緑色の椅子で、
今では猫がいつも昼寝をしています。