「ほらほら!桜!キレイやろ?」
と言われた写真のヨシは、
「フツ~」と答えて皆を笑わせていました。

フツ~はヨシの口癖だったし、
そういえば僕自身も、桜に対して特別な感情を覚えたのは、ずっと大人になってからだと思います。

そのヨシに、
「パパはフツーってどうおもってる?」
と説教されたのは、ヨシが入院して半年後のこと。

・・・こんなからだになるまで、オレはフツーのこと、フツーやとおもってた。
フツーに歩いてオシッコしにいったり、フツーにおふろはいったり、学校いって勉強したり・・・

そして、大きな声で(凄い発見を伝えてくれるいつもの口調で)

「それってスゴいことやねんで!!」

と言いました。オレはこれからフツーをめざす!と力強く宣言したりして。

・・・その出来事が、お話した小学校の先生から同級生達全員に、ヨシの言葉として伝えられました。

桜の花びらが舞うこの春に、ヨシの同級生達は中学生になりましたが、沢山のお友達がくれたヨシへの最後の手紙には、

「ふつうに生きていることのすばらしさを気づかせてくれてありがとう」

と書いてくれていました。
そして、ヨシをいつまでも忘れないからねと。天国で見守っていてねと。

いつの日か・・・桜を特別なものとして眺めるようになった同級生達の胸のどこかに、一緒に遊んだ楽しいヨシの笑顔が少しでも残っていたら、どんなにいいだろうと思います。