
まだ僕が独身だった頃、
友達がたくさん家にやってきて
飲み会をすることも多くあり、
ある日、久しぶりに会う
小学校の同級生の女性がやってきました。
一人暮らしだったその時の和室には
まだテーブルが一つぽつんとあるだけ。
その和室で、遅くまで飲んでいて、
みんなだいぶ酔いがまわった頃・・・
小学生のとき、小児癌で亡くなった
その子のお兄ちゃんの事を
思い出したのです。
いつも休み時間の校庭の片隅で・・・
百葉箱がある小さな芝生の丘に
一人で腰掛けて、お兄ちゃんは
絵を描いていました。
二、三回だったと思いますが
友達何人かと一緒に
お兄ちゃんの絵を覗きにいったのを
覚えています。
お兄ちゃんはニコニコしながら
その絵を見せてくれて。
・・・それは花壇の花とか、運動場で遊ぶ子供達が描かれていたのかもしれません。
はっきりとは覚えていないのですが、皆がびっくりするくらい上手い絵でした。
お兄ちゃんの顔は思い出せないけれど、
笑顔や話し方がとても優しかった事は
今でも忘れられない・・・そこまで話して、僕は自分が泣いている事に気づき、次に同級生の女の子が驚いている事に気づきました。
「お兄ちゃんの事を
覚えていてくれる人がいたなんて」
・・・その日から更に20年近くたった今、僕の息子ヨシの遺骨と遺影、たくさんのお菓子や花と一緒に、ヨシが描いた絵が置いてある和室で、不思議な気持ちになっています。