つきがぁ~♪でたでたぁ~♪
つきがぁでた~♪

祖母が好きな歌を覚えて
いつもお風呂で大きな声で歌っていたヨシ。

女の子のような、ヨシのその可愛い声を
僕は何より気に入っていたのだけれど……

明日の手術で、そのかけがえのない
小さな宝物まで失ってしまいます。

脊索腫という名前の小児がんは
10歳になった僕の息子の首を
少しずつ齧り取って……

主治医の先生の他、
いろんな方が、ヨシと一緒に闘って
下さったのですが……

手術では、
延命のための呼吸を確保するため、
首の下に穴をあけて気管カニューレという
人口の気道をつくるみたいです。

もうあの可愛い声を聞くことは
できないのかな。

中学生になったら声変わりして、この可愛い声も聞けなくなるんだろうなあ……と元気だった頃から思ってはいたけれど、まさかこんな形で声を失うなんて……

ヨシには、
「スピーチカニューレという
    声をだせるものもあるみたいで、
    手術が終わってしばらくしたら
    普通に声もでるし、
    いつか病気が治ったら、
    首にできた穴も塞いでもらおうね」
といいました。

こんなこと誰でもしているみたいだよ
……みたいな言い方で。

手術ときいて嫌な顔をしたけれど
それでも僕の前で泣かなかったヨシは、
夜遅くに少しだけ泣いていたそうです。

付き添いでずっと病院で寝泊まり
している嫁さんからLINEがありました。

嫁さんも辛くてたまらないだろうな。
せめて無事手術が成功しますように……