小五の時に赴任して来た校長先生とは、〈あの一件〉以来、そうそうは問題が生じ無くて、何とか無難に最終学年を過ごして来たンだけど.....ボクはずっーと心に不安を抱えていたンだ。

(校長先生、ボクに卒業証書を出してくれるかな?ちゃんと渡してくれるかな?)

だって、卒業証書の一番最後の項目は、校長先生の直筆の署名だろ?〈子供心にも〉ってヤツだ。他のみんなは、ウキウキしてたと思うけど......


卒業式の当日、ボクのきれいに刈り込まれた丸刈りの頭の左側頭部には、十円玉大の「ハゲ」が明らかに出来ていた。

きっとそれは「受験勉強」や「卒業証書を貰えるのか否かの不安」からのストレスに依るものだ。 

べつに卒業式はフツウに進行して、ボクの不安は杞憂に過ぎ無くて、ボクは校長先生から卒業証書をうやうやしく拝領したんだけど.....

「それに、私立の中学校に入学が決まっても、誰にも言えないモンだから.....その当時はなんかヘンだけど、小学校を卒業してから、男女共に中学校の制服を着て記念写真を撮る慣行があったンだけど、ボクだけジャンパー姿で写ってるんだ。

みんなにも、『なんで、お前だけジャンパーなんだ?ちゃんと聞いて無かったのか?』と詰問されたんだけど、ボクは、何か言うに言われぬ「罪悪感」に近い「気恥ずかしさ」とやらで、『着る服は、コレしか見当たらなかったから......』と言い訳するしか無かったんだ。

他の私立中学校へ受かって、そこの学校の制服を着て現れたコもいたんだけど、そこの学校の制服はデザインが一緒でボタンの校章が違っていたり、襟章がついていたりの違いだけで、たいして差異なかった。

ボクの進行する中学校だけ詰め襟だったり、縁取りにモールが使われていて、ボタンで前を止めるんじゃなく、ホックでとめる式の学生服だったんだ。こだわりにこだわった、学風の象徴ともいうべき制服だったのだ。

だから、ウチにはちゃんとあって、母が構えてくれてたんだけどね...........

ナンカ、妙に気恥ずかしさが募ってきたもんだから......」


 「こんな情けないハナシばっかしだけど.....」

ボクは最後に緋乃真瑠子に、こう打ち明けた。

「アハハ......!  でもイイよ!面白かった!とっても、gg  ぽいやん!」

そう言って、緋乃真瑠子は笑い飛ばして、手を思いっきり振って、帰って行った。




             -----この項   終わり-----