僕が朝目が覚めてまずすることは


外の庭を確認することだった


なぜなら彼らは僕に家の庭に入ってくるからだ


僕の家は家は小さいけど庭が無駄に広く


僕や兄キが遊べるようにと


庭には芝生が敷き詰められていて


庭の隅にはお母さんが花を植えていた


彼らの病棟から庭が丸見えだったせいか


僕の家の庭は彼らに人気があった


とくに女性に好まれたようだった




彼らは庭の真ん中に立っている


浴衣姿かパジャマで




多いときは3人いたこともあった


庭の塀に向って話してる人


庭の真ん中で両手をあげて踊っている人


うちのキッチンを覗き込んでいる人


うちの家族はそれを当たり前の風景のように


知らん顔して朝食をとるのだ


お母さんも慣れた口調で


「来てますよ。」と病院に電話を入れる


食事が終わるころには看護婦さんが向えにきて


いつの間にか彼らは帰るのだ




うちでは食事中彼らが話題になることはない


暗黙の了解


それがうちのルールだった


それは毎日朝・夕一日2回


家の前を通る


彼らの日課


先頭と最後に看護婦さん


その間に軽症の彼らが20人前後


その姿はパジャマかゆかた


ぞろぞろ・・・


ぞろぞろ・・・と


何か話してる人


歌っている人


笑っている人


怒っている人


ただただ下を向いて歩いている人


それはいろいろで


彼らは自由だ


そして彼らはみな同じ髪型


男性は坊主、女性はおかっぱ


そして子供の僕にとって一番怖いことは


彼らがみな同じ顔なことだった




家の前の道は4mぐらい


車が1台通れるかという幅


彼らはその道いっぱいに広がりながら散歩をする


運悪く道で彼らの散歩に遭遇してしまうと


僕は道路の塀に背中をつけて


彼らが通りすぎるのをじっと待つ


彼らは僕を触ろうとするが


看護婦さんが守ってくれる


いろいろ話しかけてくるが目をつぶって無視する


我慢をしてじっとしていれば彼らは去っていく


そんなことが僕にとっては当たり前の日常だった