(movies.yahoo.co.jpより)

 

 

緊急事態宣言…あれ?どっかで見たな~ (or非常事態宣言?)

と思ったらこのブログ内にありました。書き始めがずっと以前でしたので、

今になって気づいたんです。(ちょうど中ほどに出てきます)

2020/4/6 、現日本で今にも発令されそうな状況。

戦時中のこの映画と同じワードが出てくるとは、

ホントに大変な時なんですね……

といいながら、あやかっちゃってスミマセン('◇')ゞ

 

 

ナチス親衛隊・国家保安本部の ラインハルト・ハイドリヒ といえば、

ユダヤ人絶滅政策を先頭に立って推し進めた、ヒトラー・ヒムラーに次ぐ

ホロコーストの最高司令官 でありました。

弾圧・迫害・虐殺を一手に掌握した 「ヒトラーの絞首人」

この悪名高い人物について調べれば調べるほど、吐き気のする所業しか出てきません。 「炎628」 に出てきた移動殺人部隊アインザッツグルッペンもハイドリヒが組織したもの。  ドイツ保護下のチェコスロバキアにおいては反ナチ勢力を大規模な公開処刑にし

「プラハの屠殺者」 と呼ばれたそうです。

 

 

そんな非道なヤツですから、暗殺する計画が持ち上がるのはよ~くわかります。

チェコ亡命政府と英国により画策されたコードネーム 「エンスラポイド作戦」

を書いたのがこの映画。この題材は劇的な事実ですから

過去から何度も映画化されました。傑作 「死刑執行人もまた死す」 を始め

「暁の7人」 「ナチス第三の男」 どれも良いですが、今作は登場人物の魅力に加え

手に汗握る緊張感がもの凄く、片時も画面から目を離すことができませんでした。

ポップコーンなんか食べてられませんよ。

 

 

監督はファッション・フォトグラファーで有名な ショーン・エリス

ナチス・ドイツに関した作品は数あれど、

こんなことがあったのか!という衝撃と感動がズッシリときます。戦時中は思ってもみない出来事で犠牲になった命のなんと多いことか。

実行部隊の7人は最後まで使命を全うし、協力者たちも命を懸けて支え続けたのです。 あまりに重い史実に胸が痛くなります。時代が時代とはいえ

この強さはどこから出てくるものなのでしょうか。

誇り高い人間の力を思い知らされる作品です。

 

 

(cinecelluloid.comより)

 

 

【登場人物】

★ヨゼフ・ガブチーク …… キリアン・マーフィー。 ノーラン の申し子、スケアクロウです。 独特な瞳と中性的な風情を持ち、 「プルートで朝食を」 では女性に成りきっていました。  同じくレジスタンスもの 「麦の穂をゆらす風」 も良かった~。

★ヤン・クビシュ …… ジェイミー・ドーナン 「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」 のイメージ強すぎですが、今回のような役だってできる!

★ハイスキー ……出た!  トビー・ジョーンズ 、いい味出してくれちゃって…組織の幹部で最後まで2人を助ける、説得力のある存在です。

★ヴァネック ……同じく幹部だが暗殺には及び腰。

★レンカ …… ハイスキーの連絡係で気丈な女性。

★マリー …… 同じく連絡係だがまだ意識が弱い印象。

★モラヴェツおばさん …… 頼りになる隠れ家の女主人。

★アタ …… おばさんの息子でヴァイオリン奏者を目指している。

★オパルカ ・ ヴァルチク ・ その他3人 …… 最後まで戦う暁メンバー。

★チュルダ …… メンバーだが土壇場で裏切る。

★ラインハルト・ハイドリヒ …… デトレフ・ボーテ よく見つけてきたもんだ!  驚きのうり二つです↓ 左が本人ですよ~Σ(゚Д゚)

 

 

(historyvshollywood.comより)

 

 

【あらすじ】

1938年ナチス・ドイツはチェコ周辺地域を占領、一年後に第二次世界大戦が勃発。

同盟国に見放されたチェコ亡命政府は英国と組み、

支配者ハイドリヒの暗殺を特殊工作班に託す。

工作員はパラシュートでチェコに潜入、ヨゼフとヤンは好意的な村人に招かれ

民家に身を寄せるが、なんと彼らは報奨金狙いで密告しようとしていた。

ヨゼフは一人を射殺せざるを得ず、ヤンも逃げるもう片方に銃口を向けるが、

手の震えが止まらず撃つことができない。こんなことで大丈夫なのか?

 

 

「彼らは自業自得だ、敵と味方は区別しろ」

重すぎる使命を負った彼らは、非情にならなければならない。

ゲシュタポが潜入している可能性もあり、慎重に慎重を重ねていく。

そして反ナチ組織インドラの、ヴァネックとハイスキーにハイドリヒ暗殺の任務を告げる。  暗殺そのものにはヴァネックが拒否感を示すが

ハイスキーは 「同盟国から我々は試されているんだ、

チェコはナチスに抵抗する意志があるか?と」

 

 

(mafab.huより)

 

 

2人はモラヴェツおばさんの家に隠れることになり、手伝いに雇われているマリーに

”占領下で愛をはぐくむ男女” を演ずる話を持ちかける。

「俺たちにかかわれば命が危ない、よく考えて」

マリーはハイスキーの連絡係でもあるレンカを紹介。

しかし引き合わせのパーティで周囲にナチの将校が大勢、

レンカが美しく装いすぎていることを懸念したヨゼフは

「逆効果だ、目立っては元も子もない。僕を打て」

レンカはヨゼフを平手打ちし、注目していた連中も笑い出す。

ここまでするとは、ヨゼフはプロフェッショナルだな~(''▽'')

 

 

レンカとヨゼフ、マリーとヤンはそれぞれカップルを演じ、話してみるとレンカはマリーよりも肝が据わった女性のようだ。

作戦会合中にナチの兵が店の中に入ってきて、奥の部屋で話していた彼らは

ウッカリ音を立ててしまう。訝しむナチの気を逸らせるべく、

レンカはコーヒーカップを落とし脚線美を見せつける。

焦りも見せずにやってのける彼女はさすが!

こうして男たちの世話係や連絡係をしていた戦時下の女性は数知れず、

あまり残っていない彼女達の功績も大いに讃えるべきでしょう。

 

 

(trailers.apple.comより)

 

 

離れ離れだった落下傘隊の連中とも再会。ハイドリヒの行動と出退勤の時刻、

いかに警備をかいくぐるかについて協議する。30秒後に護衛が来るとわかったヤンは

「問題は殺害後、30秒で逃げるのは無理だ」

「任務の成功が一番だ、それは重要じゃない」

後のことなど考えていないとは!まだまだ青いヤンに対して、  あくまでプロに徹するヨゼフ。ハイスキーは最後に付け加える。

「捕まったら口を割るまで拷問にかけられる。仲間を守るため接点を断ち切らねば。

青酸カリが届いた、常に携帯しろ」

本当に命がけなのです……

 

 

標的がハイドリヒだと知ったカレルは 「ナチスの豚なら喜んで殺すわ」

そんな彼女にヨゼフも惹かれていくが態度には出さず…

一方マリーは怖がりヤンに思いとどまるよう説得するが、

彼はハッキリと断ることもできない。お互い制しているヨゼフ・カレルとは対照的に、

ヤンはマリーと婚約したんだと言い出す始末。いやまあ、戦時中に恋しちゃいけないとは いいませんが…

重大任務を背負ってるわけだからして!

聞いたヨゼフもそんな表情してました。せめて任務終わってからにしたら?

ああ、ホント甘ちゃんだな~とこの時までは思ってたけど…

 
 

(videobuster.deより)

 

 

早く普通の生活に戻りたいヤン、ウンザリしてきているヨゼフ、暗殺には内部でも意見が対立していた。

そしてロンドンから作戦実行の指令が届き、ハイドリヒがあさってベルリンに戻されるという。

ヤツが行ってしまったらもう暗殺の機会はない。

「だったら明日だ」 ヨゼフは力をこめる。

しかしヴァネックは作戦中止の伝令が来たといい、これではヨゼフの受けたのと真逆だ。 彼を怪しんでいたハイスキーもヨゼフを支持する。

ヴァネックは、暗殺による報復を何よりも恐れていた。

「チェコが地図から無くなることだ、怖いに決まってる」

 

 

(cinemore.jpより)

 

 

決行前日の夜、ヤンは取り乱し 「至近距離での射殺は未経験だ」 と泣き出す。

おいおい、ガッカリさせるなぁ。なんでコイツが重大任務に?

震える彼をヨゼフはグッと抱きしめ

「深呼吸しろ、訓練通りにやってみろ。大丈夫だ。俺たちには  怖いものなんてない、チェコはナチを恐れない」

ヤンは徐々に落ち着きを取り戻し、彼も腹が据わってきた。

翌朝ヤンは木彫りの兵士の人形をおばさんに手渡し、

せめてものお礼の気持ちか、隠れ家を去って行った。

 

 

カレルも駆けつけてきた。「約束して…」

しかし何の約束ができるだろうか。

ヨゼフは別れのキスをすると自転車に乗り、ハイドリヒの車のルートに向かう。

ここは大きくカーブを描いていることから、速度が落ちて狙いやすい地点なのだ。

チュルダが来ていなかったが、残りのメンバーはそれぞれ配置につく。

① ヴァルチクは通りに立ち、護衛ナシで現れたら鏡で光を反射させる。

② オパルカは道をゆっくり横切り車を徐行させる。

③ヤンは後方から車に向けて手投げ弾を投げる。

④ 暗殺実行はヨゼフ、彼は上着の下で銃をセッティング、いよいよ決行だ。

 

 

(cinemore.jpより)

 

 

やがて時間に。ヴァルチクが鏡を反射させ、オパルカはハイドリヒの車の前をわざと横切りさらに車を減速させる。

ベンツの真ん前に飛び出すヨゼフ、しかし機関銃がなぜか作動しない!  なんたる不手際。

その間に状況を察したハイドリヒが銃を抜く!

それを見たヤンがベンツめがけて投げた手投げ弾が車の下で爆発し、

爆風で隣を走っていたバスも窓が割れる。ヨゼフが装填し直すもすでに遅く、

銃弾を浴びる前に逃げるしかない。逃げ惑う無関係な一般市民の中をかいくぐり

彼らはからくも逃げ出した。

この間わずか1分あまり…

 

 

(hypebeast.comより)

 

 

街中ナチだらけ、彼らはそれぞれ身を隠す。プラハはかつてない厳戒態勢で封鎖され、非常事態宣言 が敷かれた。

「作戦失敗だ、すまない」 ヨゼフはヤンに謝る。

しかし銃弾を避けたかにみえた ハイドリヒはヤンの投げた爆弾によって 負傷しており、やがて死亡したのだった。

カレルまでがこの混乱の中、逃げようとして射殺されてしまったという。 狂わんばかりのヨゼフに対し今度はヤンが力強く抱き留める。

「君のせいじゃない、自分を責めるな!」

立場が逆転し頼もしく見えます。

 

 

ぺトレク神父の助けを受けメトデイ大聖堂の地下室に身を隠すことになり、

息子のアタが食料を届けることになった。ハイスキーも声をかける。

「悔いはない、君たちは誰より勇敢だ」

地下室は納骨堂になって見つかりづらいが、いったん入れば出てくることも困難になる。

すでに潜伏していたシュヴァルツ・ブブリーク・ハルビーと、オパルカ・ヴァルチク、そして  ヤンとヨゼフの7人だ。

 

 

情報提供者には莫大な報奨金と完全赦免が与えられるというが、

期限内誰も名乗り出なければチェコ人が3万人殺されるという。ヤンは名乗り出て自決するとまで言い出すが、 仲間に止められる。  その後参加しなかったチュルダが密告するんですが…

う~む、犠牲者を出さないようにというより、自分のためかもしれない。

しかし結果的に仕方ないのかもしれない…

といってもナチ相手、そんなにうまくはいかなかった。チュルダは手荒く全て吐かされる。 匿っていたおばさんの家にナチの魔の手が…

 

 

(imdb.com)

 

 

ここからの悲惨な展開は本当にツラいです。

アタの演奏する バッハのシャコンヌ が非情に響き渡り…

おばさんは息子をかばいつつ、持っていた青酸カリで自殺する。

ポケットから落ちた木彫りの人形が悲しい…

息子アタは凄惨な拷問にかけられ、顏が変形するほど殴られ漏斗で酒を飲まされ、

ヴァイオリン奏者とわかってて左手の指を潰される。

気絶すれば気付け薬で目覚めさせ、バケツに入った切り落とされた母親の頭部を見せる!

とうとうアタは場所は聖堂だと白状する。

これが実際行われたという…知りたくなかった…

廊下ですれ違う瀕死のアタと裏切り者のチュルダ。

 

 

(imfdb.orgより)

 

 

聖堂では2階で見張っていたヤンたち3人がナチを迎え撃つ。

地下でヨゼフは心配しても外に出ていくことはできない。

凄まじい銃撃戦が始まりブブリークは恐れをなしてしまうと、ヤンは駆け寄り

「深呼吸するんだ、訓練通りだ。国民もみな応援してる」

かつてのヨゼフのセリフですね。

高い所からかなりの敵を撃退するが、多勢に無勢で機関銃の怒涛の嵐、

やがてオパルカ・ブブリークは死亡。銃弾が底を尽きかけたヤンは自分用に1弾を残し

最後の最後まで戦い抜いて、最期は……

 

 

(imfdb.orgより)

 

 

地下にいる残りの4人は水攻めに。

「俺たちはチェコ人だ、絶対に屈しない」

明り取りの窓からホースで注ぎ込まれ、仕掛けられた爆弾で地下道も潰され

逃げ道は絶たれる。ここから音が一切しなくなり……

彼らは一人また一人と、ある者は撃たれある者は自ら、死んでいくのだった。

注ぎ込む大量の水の中、ヨゼフはカレルの姿を見る…

彼は安らかな表情で銃を頭へと……

 

 

(videobuster.de、tumbler.comより)

 

 

結局7人全員壮絶な銃撃戦で戦死しましたが、協力した他の人達はどうなったでしょうか?

ハイスキーも間一髪で青酸カリで自決し、マリーは収容所に送られ死亡。

匿ったぺトレク神父は同年処刑され、モラヴェツおばさんの夫は収容所で生き残りました。 しかし息子のアタはあれほど凄惨な拷問を生き延びたにもかかわらず、

まもなく処刑されたそうです (´;ω;`) 関係者はほとんど死亡しています。

密告者チュルダにしても1947年反逆罪で死刑、

結局裏切り者も生き延びられないということですよ。

 

 

また、ハイドリヒ死後の報復として、無関係なチェコ人も5千人以上が殺害されました。

リディツェ村は彼らを匿ったという噂だけで、青年男性すべてがその場で銃殺され、

残った女性と子どもはみな収容所送りとなったというのです。

死に絶えてしまった村は戦後再建されたといいますが、

ナチの戦争犯罪のあまりの深さに驚愕せざるをえません。

ソ連では628の村がことごとく壊滅させられたのですから

人間の果てしない残虐性が身に沁みます……

 

 

(nytimes.comより)

 

 

さて、憎たらしい ハイドリヒ ですが 「アメとムチ」 を使い分ける器用さがあり

市民に威圧感を与えないようにと護衛をあまり付けず、

自分がよく見えるようにとベンツのオープンカーで移動することが多かったようです。

その甘さが命取りになるのですがね。ジョン・F・ケネディ を思い出しますが、

ドコに敵を作ってるかわからない人だって危険なのに、

敵だらけのアンタが無事なワケないじゃん!最初は失敗か?と ガッカリしましたが、結果的に死亡。少しは溜飲が下がったかも。

 

 

彼が死んだあとは 「任務に忠実な」 アイヒマン が後を継いでいくんですけどね。TV映画 「謀議」ケネス・ブラナー 演じるハイドリヒは実に冷徹に、ユダヤ人を処理する 決定を下しています。

鬼畜の所業は偏狂なナチ高官どもと、職務を全うすることしか考えていない将校たち、

疑問があっても付き従うしかない下士官たちによってなされたのです。

当時を思えば憎むべきは個人・団体でなく、

異常な全体主義の論理だとわかるんですが。

「ミッドサマー」 と一緒?とまでいいませんが、やっぱり集団心理は怖い…

 

 

(eiga.comより)

 

 

また、これは キリアン・マーフィー の独壇場か?と思うくらい、

私欲を捨て信念を貫くさまが素晴らしかったけど、ジェイミー・ドーナン も良かった!

「ヤンの成長物語・2人の立場逆転もの」 でもあったのです。

関連作品で見られないヘタレぶりが、しまいにはヨゼフより逞しくなっているんです。

逆にヨゼフは作戦の失敗からか、ちょっと弱気になってたりしてね。

実際はどうかわかりませんが、占領下で愛をはぐくむという演技だったはずが

報われない展開になり、ベタですがやっぱり泣かせます。

 

 

ヨゼフ役は 「暁の7人」アンソニー・アンドリュース↓ が演じたそうですが

キリアン・マーフィー とタイプ似てませんか?

いや、この写真ではちょっと弱すぎ、ヨゼフはもっともっとタフな男です。

もしかしてご本人は…?と思ったら一番下をご覧ください↓

ヤン役はちょっと本家に似ている気がします。

また 「ナチス第三の男」 では ヤンが ジャック・オコンネル

ヨゼフは 「ミッドサマー」 でクリスチャンを演った ジャック・レイナー だそうです。

反ナチ作品は古今東西、数々の傑作を生み出しているので紹介するスペースがとっても 足りません。

 

 

 

 

こうして尊い犠牲が多大に払われ

そもそもこんな計画を実行しなければ よかったのか?

とも思ってしまうのですが、果たしてそうでしょうか。

自由のために戦ったチェコは各国に認められ、後世に伝えられていったのです。

他にもナチス高官の暗殺計画は様々に立てられましたが、

この作戦こそが唯一実行され、成功したケースだったのです。

「何もしないことは誰でもできる」

当時は NO!と言うことが、どんなに勇気のいるものだったか…できないからこそ、賞賛するしかありません。

 

 

これは 「炎628」 の時のように 「負の連鎖」 ではなく、

人間の尊厳を取り戻させてくれ、可能性を信じさせてくれる

「希望の連鎖」 の映画です。

実話だということがホントに凄すぎる。だからこそ

彼らがどんな時でも失わなかった希望と勇気も

受け継がれていくと思うのです。

 

 

↑これが暁の7人だ! (muzeum-beroun.czより)