子に過ぎたる宝なし | 合掌

合掌

俺の生存記 

『体を鍛えているのに風邪をひくんだね。』

言われたらすいませんと言うしかないのだが。
この言葉は俺が言われて一番ムカツク言葉である(笑)
だから俺は手洗いにうがいも欠かさず。
疲れたかな?
ちょっとダルイかな?と感じたら。
すぐに葛根湯を飲む。
そうやって日頃から心掛けているのである。
にもかかわらず。
俺は風邪をひき月曜からまる3日間寝込んでしまったのだ。
しかも今回の風邪は。
熱は37度台の微熱であるのに関節痛が半端ではなく。
背中や腰は無論。
指の先までも軋むように痛み起き上がれなかったほどだ。

これはもしやインフルエンザではないか。
俺は過去に一度だけインフルエンザに罹ったことがある。
その時のことを思い出し俺は恐怖に慄いた。
それほどインフルエンザを怖がっているにもかかわらず。
俺は予防接種を受けていない。
なぜなら無意味であると思ったからである。
ワクチンを打っておくと症状が軽くて済むということで。
決してインフルエンザにかからないというものではないからだ。

アイツとムスコは毎年予防接種を行っている。
アイツに言わせると。
インフルエンザの予防接種を受けることは今や。
社会人としてのマナーである。
それは自分の体を守るためのほか。
他人への感染を防ぐことにも繋がる。
だから。
意味がないと切り捨てる俺の考えを改めるべきだという。

病院で検査を受けた結果。
幸い俺はインフルエンザではなかったのであるが。
ムスコに言われたある言葉により。
俺は自分自身の意識を変えてみようと思った次第である。

南無妙法蓮華経

今週は週半ばに祝日もあり。
上司からはしっかり体を治す意味も兼ねて。
翌週月曜から出社しなさいと言われた俺は。
まる3日間痛みと戦ったのち。
4日目からは徐々に回復していった。

普段は家族一緒にひとつの部屋で寝ているのだが。
体調が完全に復活するまでは1階の和室が俺の寝室。
体が回復してきてからは。
寝ながら本を読んだりうたた寝したりと。
実にのんびりと過ごした。
朝になって窓の外から聞こえる子供達の登校する声や。
扉の向こうから聞こえるアイツとムスコの会話や。
猫のトモコの鳴き声を聞きながら布団の中にいると。
幸福感と会社を欠勤している罪悪感とが。
絶妙に入り混じった何ともいえない気持ちになる。
枕元のスマホを取ってメールチェックを始めた時に。
アイツとムスコの会話が聞こえた。

「お母さん、お父さんしまないよね?(死なないよね)」
「やぁねぇ死なないよ~(笑)」
「お父さん見てもいい?」
「まだ寝てるかもしれないからそっとね」
俺は布団を被って寝た振りをした。
その寝ている俺を。
布団の上からトントンしながらムスコが言った。

「お父さん、元気な~れ、元気にな~れ。
お父さんいつ元気になるかなぁ?
こんなにつまんないの生まれて初めてなんだよ~」

ムスコの言葉はどんな言葉よりも響く。
自分を過信して生活していたのを恥かしく思う。
子に過ぎたる宝なし。
健康でいることも大事な親の勤めであると。
俺はムスコに教わったのである。

合掌