料理は愛情 | 合掌

合掌

俺の生存記 

キッチンにビールを取りに行くと。
調理台の上にラップがかけられた小鉢が置いてあった。
てっきり出し忘れた夕飯のおかずだと思って。
俺はその小鉢も持ってテーブルに座った。

「あっそれはダメ!」
小鉢のラップを外そうとしたらアイツに止められた。
春菊の胡麻和えを作ったのだが。
塩と砂糖を入れ間違えて作ってしまったそうで。
そんな絵に描いたような間違いをするのかって思うかもしれないけど。
これで2度目。
最初の失敗はムスコに作ったホットミルク。
これに塩を入れてしまった。
ホットミルクの温度を確かめるためアイツが一口飲んで。
その間違いに気付いた。
ムスコの口に入らなかったのが幸い。
しかしアイツの名誉のために言うが。
普段はこんな間違いは殆どしない。
これには原因があるのだ。

実は今年の夏。
砂糖を保管していたケースの中に蟻が侵入。
以来新しい保管ケースに取り替えて。
尚且つ冷蔵庫で保管するようにしたのだけど。
カラダが動作を覚えていて。
無意識にいつもの動線で動いてしまうので。
自然に以前の保管場所に手が伸びて。
ハッと気付いた時には塩を入れている・・・
というワケなのだ。

南無妙法蓮華経

俺は小鉢のラップを外して春菊の胡麻和えを一口食べた。
なるほど。
こりゃ塩辛いや(笑)
でも全く食べられないワケじゃない。
俺はもう一口食べた。
「マズイでしょ。ムリして食べなくてもいいよ!
塩分取り過ぎになっちゃうよ」

アイツはいつも健康に気遣った食事を作ってくれる。
結婚して毎日アイツのご飯を食べるようになって。
大好きになった食べ物がある。
それが切干大根だ。
煮たり和え物にしたりと色々作ってくれるけど。
俺はアイツの作る切干大根の味噌汁が特に好きだ。
切干大根から出る優しい甘味と素朴な美味しさは。
「お母さんの味」って感じがして。
心がほわぁ~っとあったかくなる味なんだ。
ムスコが大人になった時にこの味噌汁が。
「おふくろの味」になってるんじゃないかなって思う。

マズイでしょってアイツは言うから。
俺は言ったんだ。
「オマエの愛情がこもった料理にマズイものなんてない!」
春菊の胡麻和えを完食した。
まぁぶっちゃけ。
ビールと共に流し込んだ(笑)
それにね俺。
食べ物を捨てるってのはどうも抵抗があるんだよな。

命を戴いているということを忘れずに。
自然の恵みに感謝をしながら美味しくいただく。
そしてもちろん。
いつも美味しい料理作ってくれるキミにありがとう。

合掌