連休です。
街に人が溢れております。

旅行されてる方なんかも多いんじゃないでしょうか?😃

大阪ではだんじり祭りが始まった地域もあるようです💡
(時期によって無病息災と五穀豊穣どちらかの違いがあります)


昔は時期を問わずこうした祭や観光地など、人が集まるところには必ず何かしらの物売りがいました。

その中でも特に目立つのが「叩き売り」という人達。

バナナの叩き売りなんてのが有名ですが、恐らくバナナがまだ高級品として扱われていた時代だったからでしょう🍌

こういうもので最初に買う1人目はサクラだという手法が現代もよくありますが、集団心理ですねぇ。

そしてそれより前にいたのが今回の主人公
「ガマの油売り」
今でいう実演販売のようなものですかね?

剣術の稽古のような袴にハチマキ、刀を片手に持った男性が手招きしながら『さぁさぁさぁさぁ❗️』とみんなを集め、すかさず口上を述べます。

そのまんま「ガマの油」という商品を売ってるわけですがとにかくこれは凄い、特別な物だということを立て板に水のように捲し立てながら実演❗️

ほとんど物売りというよりは大道芸人です。笑


さて大道芸といえば、上方落語の発祥も大道芸です。

江戸落語は寄席ができるくらいの小屋に人を集めてやったところから始まったそうですが、上方落語は違います。

男が1人小さなハリセンと拍子木を持って、見台を前にして座布団に座る。

人通りの多い道にてその台を突然、


バンッ‼️


とハリセンで台を叩くんですね。

通行人全員をビックリさせるわけです。
ガーンあんぐりびっくりキョロキョロ大泣きびっくりゲッソリ真顔


で、そうして目線を集めておいて、こちらもすかさず

「さあさあ私が初席1番叟(いちばんそう)でございます!」ニヤリバンバン!

と話が始まるわけです。
この間もハリセンと拍子木を打ち鳴らしながら進んでいきます。

賑やかしと、その音よりも大きい声を出さないといけないという新人への特訓も兼ねてでしょうね。


いずれにせよ街をゆく人々に

『何かやってるのかな〜?』

と思わせ、みんなが呆気に取られている間に話に引き込みながらさらに人を集めていくわけですが、いずれも度胸と技術が無いととてもできませんね😅



〜ストーリー〜

「さあさあ、さぁさぁさぁさぁ!ニヤリ
さぁさぁご用とお急ぎでないお方はゆっくりと聞いてらっしゃい。
さぁさぁさぁさぁ!

夜目遠目(やめとおめ)笠の内、
物の文目(あやめ)がわからん!
山寺の鐘はゴォゴォと鳴るといえども、
童子1人(いちにん)来たりて鐘に撞木(しゅもく)を当てざれば
鐘が鳴るやら撞木が鳴るやら
トンとその音色がわからぬ道理じゃ。
ワシの口上も聞いてもらわねば
何のことかサッパリわからぬ道理じゃ。

さて手前持ちいだしたるこの棗(なつめ)の中には
一寸八分、唐子発条人形(からこぜんまいにんぎょう)が仕掛けある。

喉には8枚の歯車。
背中には12枚の子ハゼ。

これをこう地の上に置く時には
天の光、地の湿りを受けて陰陽合体致し。

棗の蓋をパッと取る時には
ツカツカツカと走るは虎の小走りトラ走り。
スズメ・コマドリ・駒返し・孔雀、麗鳥(れいちょう)の舞❗️
人形の芸当は12通りある。
東西人形作りの名人数多ありといえども
まず京にては守隨(しゅずい)、
大阪表には竹田縫之助近江大掾・藤原朝臣!
(たけだぬいのすけおうみのだいじょう・ふじわらのあそん)

手前、持ちいだしたるは竹田近江が津守細工(つもりさいく)
ただいま試してご覧に入れる❗️
…が、その前にちょっとお断りをしておく。

これをやってみせるとお立ち会いの中で投げ銭、放り銭をなさる方があるが、それはお断りをする❗️

大道にて未熟なる渡世を致すといえども、
いやしくも天下の浪人!
投げ銭、放り銭を拾うわけにはいかん!

しからば

『投げ銭拾わずして何をもって渡世するや?』

とお尋ねの方があろうが、手前の長年渡世と致しきたったは、これなる軍中膏(ぐんちゅうこう)
蟾酥(ひきせんそ=ヒキガエルの分泌物を乾燥させたもの)は四六(しろく)の蝦蟇の油じゃ!


『そんなガマならウチの縁の下にいくらでもおる』

と言う方もおるか知らんが、それはオタマカエル、ヒキガエルと言うて薬の効能はない!

『四六、五六はどこで見分ける?』

前足の指がこの通り、はい4本ある。
後足(あとあし)がこれ6本。
これを名付けて「四六のガマ」❗️

このガマのおるところはこれより遥〜か北に当たり、
江州・伊吹山の麓において、オンバコ・シャゼンシという露草を喰らう。

このガマの油を採るには、上下四方鏡張りの中にガマを追い込む。
ロウソクを1本立てて火を点ずれば
ガマは鏡に映れる己の姿にうち驚き
総身よりタラ〜リタラリと流すがこの油じゃ。

この脂汗が鏡の表にこびり付きたるをばヘラにてかき落とし、
ツゲの小枝をもってサンシチ21日の間トロ〜リトロリと炊いて煮詰めたのがこの蝦蟇の油じゃ!
赤いのが辰砂(しんしゃ)椰子の油。
テレメンテーカにマンテーカ。
(※松ヤニから取れるテレピン油と豚油。両方ともポルトガル語訛り)

効能は金瘡(きんそう=刀傷など)には
突き傷、切り傷、かすり傷。
出痔(でぢ)、いぼ痔、切れ痔、走り痔、
痔一切にはことのほか妙薬❗️
ひび、あかぎれなんぞは
いかに大きく口を開けたればとて、
この蝦蟇の油を取ってひと付け付けるにあってはあと形もわからぬように滑らかに治ってしまうぞ、お立ち会い❗️

まかり間違ぅて上唇と下唇に付けてごろうじろ。
口がピタッ…!とふさがって、茶漬けは鼻から流さねばならぬぞ、お立ち会い❗️

蝦蟇の油の効能はそればかりかと言うとそうではない、まだある❗️

第一に刃物の切れ味を止める。
手前持ちいだしたるは、鈍刀なりといえども家に伝わる一刀。
抜けば玉散る氷の刃❗️
お目の前において白紙(しらかみ)をもって試してご覧にいれるぞ!
さぁもっと前へ前へ、もっと前へ来い来い!
1枚の紙が(スパッ!)、どうじゃこのように2枚となる。
2枚が4枚!4枚が8枚!8枚が16枚!
32枚、64枚、100と28枚…フーッ!😙💨✨

春は3月、落花の形!🌸
比良の暮雪(ひらのぼせつ)は雪降りの形!❄️

この通りよく切れる刀じゃが、差し裏・差し表へとこの蝦蟇の油をとってひと付け付ける時においては白紙1枚が容易に切れない…!
はいっ、この通り刃が止まった❗️
ほらどうじゃ?

いかに蝦蟇の油売りの面の皮が厚いとて、
刃物を持ってこすれば必ず切れる。
それがどうじゃ、お立ち会い❗️
はいっ❗️この通り刃が止まっておる‼️
面の皮が信じられぬとあらばこの二の腕を持ってご覧にいれよう!

もっと前へ来い、もっと前へ前へ。
ゆくぞ…‼️
引いて切れない!叩いて切れない❗️
この通りピタッ!刃が止まった‼️

はい、これを拭き取った時にはまたこのように触っただけで白紙が切れる!(スパッ)
ワシの二の腕にも触っただけでご覧の通り切れてしまう!
いやいや、これしきの傷は何でもないぞ。
血が出ればまずはよく拭き取る!
拭き取ったあとへ蝦蟇の油をひと付け付ければ痛みが去って、はいっしばし待てよ…。
はい、この通り血がピタリと止まった!

さぁさぁどうじゃお立ち会い‼️
わかったわかった、押してはならんぞ。
この蝦蟇の油、いつもはひと貝が12文のところを今日は子貝を添えてこのふた貝で12文じゃ。

さぁ数はこれだけしかないぞ、お立ち会い!
買い外れては後悔先に立たずじゃ。
どこにもあるという品物ではないぞ!

はいはい、そちらはいくつじゃ?
2つお買い上げありがとう!
そちらは?3つも!はい、ありがとう。
はいはい次は…」


見事な口上と実演につられて売れに売れる🤑
全部売れてしまいました💸

売れてしまえば休憩時間です。
一杯軽く飲み食いでもして、またしばらくしたら同じように売りに出るわけですが、今日は特に売れて懐が温かい♨️

ついつい調子に乗って飲んでしまいました🍶
すっかり酔いがまわってへべれけの状態でまた売りに出てきたこの油売り。


「さぁさぁ〜はいはい〜!
え〜と、あのー、ちょっと!
聞いてくらはいよ〜っ!あにょねぇ。
今からねぇ、ちょっとあの〜やりますからね、ヒック酔っ払い

ちょっとぉ〜…ちょっ、そこの!アンタ!
ちょっと…ええからこっち…止まれよ❗️ムキー
え?…なんれすか?
私はねぇ、怪しぃもんじゃないんれすよ。
私があの〜言いたいことはねぇ。
ええから…ちょっと見て!面白いから!

あのねぇ、この蝦蟇の油ってもんをねぇ。
皆しゃんにねぇ…油の取り方を聞いてもらおかなっということなんですよぉ、へへへデレデレ

ま、まぁちょ、ちょっと1人にするなって!
聞いていって!お願いしますよぉ〜!

ほらこのガマね、普通と違うれしょ?
『何が?』ってねぇ…見たらわかるでしょ⁉️
前足の指がねぇ…あれっ?
えーとねぇ…たくさんあるでしょ?
これ後ろがこれほら…いっぱいあるんでしゅよぉデレデレ
このガマをねぇ…鏡の前に置いたられすねぇ…鏡に、ガマが映るんですよ!
『当たり前』って違いますよ!
シロクゴロクって言ってね…鏡に四つ映るんです。
ん…?あ、違う違う。
シロクは指の数ですねぇ。

このガマはね、遙か北の…ほら何やったかな。
何とかって山がね…え?高尾山?違う違う。
もっと北のねぇ…伊吹山?どこの山、それ?
え〜とねぇ…あっ、そうそう!伊吹山❗️💡

そこにいてるこのガマがねぇ…。
山寺の鐘がねぇ…ゴーンゴーンってねぇ。
知らないと思うけろねぇ…薬になるんですよぉ!

この…ガマがねぇ油取るっちゅうわけでねぇ。
スんゴイんですよぉ。

この、ほらっ!この刀ねぇ。(ブンブン)
あらっ、みんななんでそんな離れるの…?
この紙をねぇ…切れ味を見てくらはいよ。
この1枚がねぇ…(スパッ)イタっ!
き、切れたでしょぉ〜?
この2枚がねぇ…(スパッ)イタっ❗️
指切った…いたぁ〜…!えーん
めちゃくちゃ切れる…。
は、8月は雪の散る季節でねぇ…みんなもっとこっち寄れって!
ちゃ、ちゃんといいもの見しぇるから!

よく見てよ❗️
引いて切れない、叩いて切れない!
ほらっ、この通り刀が止まるということをねぇ、えっ?
『切れてますよ』???
ばっ、バカにゃこと言うんじゃにゃいれすよ。
蝦蟇の油で刃が止まるということをねぇ…。
切れるわけが、あれっ⁉️
あぁ〜っ‼️い、痛ぁ〜‼️
あっ、ちょちょっ、だっ、大丈夫!
大丈夫、全然大丈夫!
大丈夫だから❗️大丈夫らって‼️
ま、まずねぇ、血をよく拭き取る❗️
拭き取ったあとへ蝦蟇の油を…塗る前に拭き取るっ❗️
いやいや、慌てないよ!
みんな、そんな顔しない‼️
そこの子供❗️泣くなっ‼️ムキー
さぁ拭き取ったら蝦蟇の油を…拭き取る‼️
めちゃくちゃ拭き取る‼️

ふ、拭きっ…ああっ…イタぁ〜っ!
す、すんませ〜ん!

誰か『血止め薬』持ってませんか⁉️」えーん


〜終〜
さて、いかがでしたか?(^^)

長々と読んで頂いて何なんですが、実際に聴いてもらう方がよほど面白いと思います


この演目の凄いところはもちろん口上の難しさもあるのですが、何といっても最初から最後までメインの登場人物であるガマの油売り1人のセリフのみしか出てこないところです❗️

でも油売りの慌てっぷりのみならず、周りで見物している客側の表情までもがよくわかるという。

この演目を聞いている客もその観客の1人になるのは面白いところですね✨


叩き売りってすっかり廃れましたが、やはり露店営業ってものに怪しいというイメージが付いてしまったからでしょうかね???

縁日の屋台に近いものな気はしますが、娯楽の少なかった時代は人気だったのだろうなと思います♫

蛙は今日も汗をかいているのでしょうか?🐸

ではまた(^^)