「金は天下の回りもの」。

金は大事ですが、「金は人が変わる」とか「金に目が眩む」とか、人間関係の拗れや何かとトラブルの原因にもなりますね〜。

その人の器に見合わない大金が手に入ると使いこなせないとか言いますが、やはりお金には目の色が変わったりする魔力みたいなものがある気がします。

実際、金欲と性欲が無くなれば世の中の大半の犯罪は無くなるんだそうですね😅


ケチな人というのは嫌われやすい。
特に宵越しの金を持たなかった江戸っ子達にとっては意地汚いような目で見られたようです。

今回は狂気を感じるほどケチな人が起こしたお話です。

〜ストーリー〜
あるお寺。


「おーい、西念(さいねん)さん。
大丈夫かい?」

「あ、あぁ…源さんかい。
ここんとこずっと調子が悪くて。
見舞いかい?すまねぇなぁ…。」

「なんだ、本当に顔色が悪いじゃねぇか。
ちゃんと精のつくもの食べてんのかい?」

「いえ、あの…水ばっかり飲んでます…。
悪いものが下っていかないかなと思って…」🤮

「バカなことしちゃいけないよ。
ちゃんと医者に診せなきゃあ」😓

「いやぁ…医者に当たるといくらかを取られますし…。
そう思うとまた熱が…」😵‍💫

「じゃ薬でも飲みなよ」

「薬代がかかるのがどうも癪なもんで…」😵

「なんだい、そりゃあ…滝汗
あのねぇ…病気になっちまったもんはもう損として諦めなきゃいけねんだからさぁ。」

「ええまぁ…そうなんですけど…ハァ。」

「しょうがねぇなぁ、全く。
すっかり弱っちまってるじゃねぇか。
何か食いたいもんでもないのかい?
人間好きなもんでも食べれば元気になるもんだよ」

「はぃ…はぁはぁ…じゃあ…あんころ餅を買ってきてくれませんか?
2朱(4〜5万円分)ばかり…」

「2朱〜⁉️
そんなに買ってきて大丈夫かよ…滝汗
金はどうしようか?」

「そりゃ…お見舞いに来たんだからあなたが出してくれませんか?」

「オレが出すのか⁉️
高い見舞いだなぁ〜。
チッ、わかったよ。仕方ねぇなぁ」


源さんは大量のあんころ餅を西念さんのために買ってきてやりました。


「お〜い、西念さん。
買ってきたよ、餅!
餅屋の親父が驚いてたよ」

「あぁ…はぁはぁ…ありがとうございます。
そちらへ置いておいてください…」

「なんだよ。
せっかく買ってきたんだから食べればいいじゃねえか。」

「い、いえ…人が見てると食べにくいタチなんですよ」

「大丈夫かよ、全く。
まぁとにかくこれ食べて精出しなよ!」


そう言って帰るつもりで源さんは外へは出て行きます。

が、あれほど病気で弱った西念和尚があんなに大量の餅を本当に食べるのか気になります。

節穴を見つけてそっと中を覗いてみました。


「んん…おっ、餅の前にいるな。
なんだぁ…?あんと餅を分けてる。
どうすんだろうな?
わざわざ別にして食うのか?
本当にケチなやろうだねぇ〜。
んっ、なんだありゃ?…金か?
あの坊主、あんなに金を貯め込んでたのか。
あんな金横に置いてどうすんだろ?」🫣


西念和尚がその餅の中にお金を包んでいきます。
そしておもむろにその餅を飲み込み始めました。


「な、何やってんだあいつは…⁉️ガーン
餅の中に金でカネモチってか…?
いやいや冗談言ってる場合じゃねぇな…そうか。
あいつあの金が気になって死にきれないから飲み込んじまおうって腹か💡
全くよぉ…あの世にゃ金は持っていけねぇって話じゃねぇのかよ。
あれだけ世話してやったんだから、
「源さん…この金はあんたに…ガクッ」
ってことぐらい言ってくれりゃいいのに」えー


苦しそうな顔でどんどん金を包んだ餅を飲み込んでいきます。
とうとう最後のひとつを飲み込みました。
しかしますます西念和尚が苦しみだします。


「お、おーい!西念さん!
なんか苦しそうだけど、大丈夫かい?」

「うっ、うぅ…ハァハァハァ…ウウッ、ウ…げ、源兵衛さん!」

バタっと西念和尚が倒れてしまう。

「おっと、危ねぇ!
あの餅をみんな食っちゃったのか⁉️
馬鹿なことするもんじゃないよ。
どうした⁉️
吐くんだ!吐いたら楽になるから!
1つでも2つでもいいから吐きなよ!」

「・・・」チーン☠️

「…おいっ。西念さん?西念さん‼️
く、くたばっちまった…ガーン
馬鹿なことするねぇ、ホントに…!
でも1つでも2つでも、なんとかあの金取れないもんかな…?
口から手を入れる…のはイヤだし、口から棒でも入れて押してみるか…いや、ところてんじゃねぇんだからなぁ。
参ったなぁ、おい。
誰かに…いやっ、言っちゃったらそれこそ取り合いになっちまう。
どうにかならねぇかなぁ〜???
…そうだ‼️」


源兵衛さん、焼き場へ持っていってその骨を拾うふりをして金を取り出そうと考えます💡

早速、大家さんに西念和尚が亡くなったことを伝えて葬儀をあげます。


「それでね、大家さん。
西念さんが自分には身寄りも無いから、オレのとこの寺に入れてくれって言ったんだよ。」

「おお、そうなのか。
なら明日またみんな仕事を休んで手伝ってもらって、寺へ運んで骨を埋めてやろうか」

「いやいや、大家さん。
ここの長屋はみんな貧乏なんだ。
仕事休んでる余裕なんかないんだよ。
だから今晩のうちに焼いてこようと思うんだ。
そうすりゃオレが最後まで残っても夜明けまでには帰って来られるから」


じゃあそうしようかということでみんなが手伝ってくれます。


「えーっと仏さんを担いでもらうんだが、悪いけど今月の当番にやってもらうよ。
下駄屋のトウベエさんに小物屋のキンベエさんだね。」

「へーい。キンベエさん。
オレ達が揃うとよく仏を運ぶね」ニヤニヤ

「ホントだよ。
前はタバコ屋の婆さんだったし、その前は角の爺さんだったな。
次は誰になるやら?」

「そろそろ大家さんじゃねぇか?」ニヒヒ

「縁起の悪いこと言ってんじゃないよ❗️」ムキー


わいわいと言いながら寺へと運びます。


「おーい、和尚さーん!
ちょっと起きてくれないか!」

「誰だ?ドンドン叩きよって。」

「いや、源兵衛なんだけどね!
ヤマザキ町の源兵衛!」

「おお、源兵衛か。死んだのか???」

「違うよ❗️仏さんを持ってきたんだ。
頼むよ❗️開けてくれ‼️」

「わかったわかった!
門をどんどん叩くんじゃない!
その門は壊れてるから、あんまり叩くとそっちへ門が倒れるぞ」

「危ねぇっ!滝汗
どこから入るんだ???」

「横の塀に犬が出入りしてる穴があるから、そこから入ってこい」

「どんな寺だよ…」滝汗


中へ入ると事情を話して和尚さんが念仏を唱えます。
焼き場の親父さんに声をかけます。


「おうっ、これ急ぎで頼むよ!」

「あのなぁ、急ぎったって物には順番ってもんがあるんだ。
これからまだ焼かなきゃならないのが並んでるんだからな。」

「なんだと、このやろう。
早く焼いて欲しいから今日来たんだ!
焼かないならオマエを焼いちまうぞ」ムキー

「なんだそりゃ…滝汗
わ、わかったよ。
でも今から焼いても時間はかかるぞ」

「いつ頃焼けるんだ⁉️」

「そうだなぁ…夜明け近くってとこだな。」

「そうか。
じゃあカラスがカーと鳴いたらここにまた来るよ。
あ、あとお願いなんだけど、腹のとこちょっと生焼けにできない?」口笛

「何だその気色の悪い注文は…ガーン
なんだい、そりゃ?」

「なんだいじゃないんだよ❗️
仏さんの遺言なんだ!
腹のとこ真っ黒に焼かれちゃイヤだって。
使いもんにならなくなったら大変だ」

「…なんだ、そりゃ…?」🤥


夜明け近くになるとすぐにまた源兵衛さんが戻ってきます。
ドンドンと戸を叩いて

「おーい❗️焼けてるかー⁉️
焼けてるかよーっ⁉️」

「うるせぇなぁ!
焼き芋じゃねぇんだよっ‼️ムキー

「焼けてるかいっ???」

「おお、ちゃんと焼けてる。
あの小屋の中に入ってるよ。
ほら、骨壷やるから…」

「あ、そんなもんはいらねぇんだ。
中へ入るよ。
あーっと、オマエは入るな‼️」ムキー

「入るなって…素人に任せてられるか!」

「うるせぇっ❗️知らねぇやつに触られたくねぇって仏さんの遺言なんだ‼️」

「遺言の多い野郎だなぁ。
わかったよ。」

「さてさて…おい…よく焼いちゃったねぇ。
腹のところは生焼けって言ったろ?」

「一応やってみたけどそんなうまくいかねぇよ」滝汗

「ドジな野郎だなぁ、全く。
使い物にならなかったらしょうがねぇじゃねぇか」

「お、おいおいおい…そんなに雑に扱ったらコツがバラバラに…」

「うるさいなぁ、横から❗️
そんなに欲しけりゃオマエにやらぁ❗️」

「いや、オレはいらねぇけど…気でも触れたのか⁉️」

「いいからもうあっち向いてろい❗️」ムキー


火箸で灰の中を探っているとカチンッと音がします。


「んっ?
おっ、これだ❗️あった❗️」


金を拾って懐にしまいます。


「やった、やった❗️🤑
そんじゃっ、あばよーっ❗️」

「おぉーい❗️骨(コツ)が残ってるぞ⁉️」

「いいんだよ❗️犬にでもやっちゃえ❗️」

「コラッ!焼き銭を置いていかねぇか‼️」

「やなこった、泥棒め‼️」

「オメェが泥棒じゃねぇか⁉️」


源兵衛さんはこの金で目黒に餅屋を出し、大変に繁盛したと申します。

江戸の名物「黄金餅」の一席でした。


〜終〜
さて、いかがでしたか?

この話凄くない…⁉️滝汗
狂気じみててヤバいなという意味で。

金を持ち出そうとして失敗して笑って終わるとかいう笑い話でもないし、何か解決してみんな平和に終わるとかそういう話でもない。

でも話としては明るい口調で語られる落語なんですよ☝️


和尚が死を覚悟して食べた金入りの餅。
その腹から取り出した金で商売、しかもよりによって餅屋を開くという…!😱

何なの?ホラーなの?
どういうジャンルなの、これ⁉️


金に執念を燃やしていた西念和尚はあの世に持っていったのでしょうか?🤑
金はいろんな意味で人を狂わせますね〜☠️

そういうことを言いたいのか、それとも何となくこういう話を考えたのか、どういう意図があるのかよく言えば考察のしがいはあるのですが…何とも不思議な話でした😱

ではまた(^^)