「質屋」という商売🔍
鎌倉時代頃にその原型が登場したとされてまして、それ以降は長く一般的な商売として浸透してきました。
今もたくさんありますが、今よりも利用していた人も多かったようです。
しかしそれでいてやはり出入りするのはちょっと恥ずかしいと人目をはばかっていたようです。
入口は大通りから路地へ一本入ったようなところにあったり、入る人の姿がすぐに隠れるようになっていたり、出口はまた別になっていたりと配慮されていました🫣
物品を担保にしてお金を借りるわけですが、ある一定の期限のうちにお金を返すか、もしくは利息を入れるか(『利上げ』と言います)をしないと質屋のものとなって質流れの品として売られてしまいます💸
でもこれは質屋としてはありがたくないんだそうで、やはり少額でも利息をもらうことが1番の儲けとしてありがたいようです🤑
〜ストーリー〜
ある街の質屋の大旦那。
風呂屋に行くと、近くにいる男が2人が世間話をしています♨️
その会話の中に
「あそこの質屋に幽霊とか化け物が出るらしい…」
そんな噂をヒソヒソと話されているのをこの質屋の主人が耳にします。
店に帰って番頭に聞いてみると確かにそういう噂があるとのこと。
「しかし旦那。
そんな身も蓋もない噂話ですから、そう慌てることも…」
「いやいや、あながちそうでもないかもしれんぞ?」
「え…そうなんですか?」
「うむ。
ワシはこの商売を本当に人様のためにと思ってやっておる。
その日その日に困るお方がいろんな品を持ってくるが、半年先までこれは使わんというものはなかなか持ってこん。
明日これがないと困るというような、それぞれの思いがこもった品ばかりを持ってきて金に変える。
大事な人からもらった物とか、苦労して金を貯めて買った物なんかがウチに来やすいわけや。
すぐに元金を払って返せる人はええが、そうでない人は利上げの時期が来て、利息が払えなければその品を流されてしまう。
これを『質屋に取られた』と恨みに思う方もおられるからなぁ。」
「えらい勝手なもんでんなぁ〜」😓
「しかしそういう強い思いや念のこもった品物じゃ。
ひょっとしたらそういうこともあるのかもしれん。
そこでじゃ、番頭さん。
この噂をあんたに確かめてもらいたい。」
「へっ???😳
…と、言いますと?」
「離れから蔵が見えるじゃろ?
あそこで一晩蔵の様子を見て、幽霊やらバケモンが出るのかどうか確かめてもらいたいんじゃ」
「えっ…⁉️
え〜〜〜と…私1人で見るんですか?」
「そらそうじゃろ。
こんなこと丁稚なんかにやらしたらよそでどんな尾ひれ付けて言いふらされるかわかったもんやないがな。」
「は、はぁ…なるほど。
旦さん…ワタクシ、12の頃からここへ奉公させて頂いてまして、来年は別家(自分の店を持つこと)をさせて頂けるっちゅう話も出とります。
どうしても今晩に私1人でこれを見届けないかんということでしたら、私はお暇を頂いて大和の親元のところへ…」
「お、おいおいっ!
なんや、あんさんえらい怖がりなんやな💦
う〜ん、じゃこうしよう。助太刀!なっ。
誰か応援につけたらええやないか」
「あっ、そらありがたい!
それならやらせて頂きます」
「あんさん、誰かこの人がいれば安心やっちゅうのはおるか?」
「それやったらここへ出入りしてる熊はん!
あの人がいれば安心です」
「おお、熊五郎か。
あいつは強いんか?」
「強いも何もケンカで1度も負けたことないって噂でっせ?
体にいっぱい彫り物入ってますから!
右腕は昇り龍、左腕は下り龍。
背中には九紋龍で龍ばっかり体に彫ってますわ!
事あるごとに『この龍が承知せんぞ❗️』って言うてね。
あの人がいたら心丈夫です」
「そうかそうか。
じゃあ早速呼んできてもらおうか。
サダキチに…って、そこにおるのはサダキチか?」
「あ、あのわて何も立ち聞きしてまへん」
「立ち聞きしてよったのか…!
これっ、誰がそんな行儀を教えたか?
丁稚が大人の話を盗み聞きするとは、だんだんと増長しよって。
それなら話はわかってるじゃろ。
熊はんを呼んできてくれ。
何をしててもじきに来るようにとな。
早よ行ってきなはれ!」
「へーい。
…話し声がするから立ち止まってただけなのになぁ…ブツブツ」
叱られたことに納得はいきませんが、熊五郎を呼びに行くサダキチ。
「おお、サダキチやないか。
どうしたんや?」
「あのなぁ、あのなぁ、旦那はんが
『熊五郎呼んでこい!』って。
えらい怒ってはるわ」
「旦那が怒ってる?
ワシ今メシを食いかけてたんやけど…」
「何をしててもじきに来るように!って。
えらい怒ってはるわ」
「そんなに怒ってるのか?
旦那が何を怒ってるのか、知らんか?」
「丁稚は立ち聞きしたらいかんのや」
「なんじゃそら?
何か知ってるやろ?」
「『だんだんと増長しくさって!』とか、えらい怒ってはるわ。」
「そんなに怒ってるのか…?
増長…ははぁ、あれのことかな。
こういうことは先手を打つ方がいいからな」
質屋の旦那の元へと着いた熊五郎。
入るなり先に話しを切り出しました。
「いや〜旦さん、申し訳ない!
言わないかんと思ってたんですけどね〜。
ついつい言いそびれてまして」😅
「おお、熊はん来たか。
言いそびれてたって何のことや?」
「うちのカカァがいつもここでお手伝いさせてもろてますやろ?
ここの女子衆(おなごし)のオサキさんが樽から水を庭へ撒いてるから
「水撒いてるんですか?」
って聞いたらこれがカンザ(燗冷ましの略・熱燗が冷めた酒)やって言いますねん。
そしたらカカァが
「そんな勿体無い。
ウチの亭主に飲ましたら喜ぶやろうに」
って言ったら「あら、そう?ほな持って帰り〜」って3合ほど徳利に入れてくれたんですわ。
それで私が帰っていつもの酒やと思って飲んだらこれがまぁ〜美味いの何の❗️✨
それで2〜3日楽しませてもらって、それからまたいつものやつに戻ったら人間ってもんは舌が肥えるんですなぁ。
とてもやないけど飲めまへんのや。
それでカカァにすまんけどまた2合でいいから貰ってきてくれへんかと頼みましてね🙏
そしたら女子衆さんが
「ウチは樽でドーンとあるさかい、2、3合くらい取ったかてわからんわ」
ってまたくれはりました♫
で、それが無くなったらまた貰いに行き〜となりましてねぇ。
この前に屋敷の裏通ったら酒の入った樽が2つ置いてありましてね。
私荷車引いてたんですけど、バラでもらうのも、まとめてもらうのも一緒やなぁと思って一丁…」
「なんちゅうことするんや😓
あれ樽が1つ無い!ってえらい騒ぎになってたんやで〜?
あれはお前さんか!
危うくもうすぐ蔵元へ掛け合って恥かくとこやったわ…ホンマに。
いやしかし熊はん、今日あんさんを呼んだのはそんなことやないんや」
「漬け物の一件誠に申し訳ない!」
「そら何や???」
「いや、これも先に言わんとあかんなと思ってたんですけどね。
前にカカァが仕事終えて帰る時にここの女子衆さんにもうちょっと手伝ってほしいって頼まれたんですわ。
それでえらい帰りが遅くなってしもたんで、私の晩飯のおかずを用意できんかったんです。
それでその代わりに〜ってこちらのたくあんもらってきたんでそれ食べたんですけど、これがまぁ〜美味いの何の❗️✨
それで2〜3日楽しませてもらって、またウチのやつ食べたら人間ってもんは舌が肥えるんですなぁ。
とてもやないけど食べれまへんのや。
それでカカァにすまんけどまた2、3本でいいからもらってきてくれへんかと頼みましてね🙏
そしたら
『ウチは樽でドーンとあるさかい、ちょっとぐらいかまへんから持って帰り〜!』
ってまたくれはりました♫
で、それが無くなったらまた貰いに行き〜となりましてねぇ。
この前に屋敷の裏通ったら樽が2つ置いてありましてね。
私荷車引いてたんですけど、バラでもらうのも、まとめてもらうのも一緒やなぁと思って一丁…」
「何でも樽ごといきなはんな!
何ちゅうことするんや、ホンマにもう…。
いや、今日はそのこととは違うんやけど…」
「あっ、醤油の一件ですか⁉️」
「なんぼほどあるねん⁉️
泥棒飼ってるようなもんやで、ホンマに…。
まぁ小言はまた改めて言うけども、今日はそんなこと言うために呼んだんやないんや。」
「あらっ?違う?
…えらいこと言うてしもた…」
「言わなあかんで、そんなもん…😓
いや、実はな。
熊はん…あんた、えらい強いそうやな?」
「…なんです?」
「えらい強いそうやなと聞いとるんや」
「フッフッフ…旦さん。
私に『強いか?』ですって…フッフッフ。
旦さん…名前だけ言うておくんなはれ。
相手の名前だけでよろしいですわ。
あとは腕の1本で済むのか、半殺しにするのか?それだけ言うてくれたら…」
「アホ!
誰も喧嘩してこいと言うてるんやない」
「へっ?いや、強いかとおっしゃるから…」
「実はな…」
旦那は熊さんに蔵に化け物や幽霊が出る噂を話しました。
「…ほぉ〜…」
「これを今晩この番頭と一緒に見張ってもらいたいんじゃ」
「そうでっか…。
ところであの〜…こちらの御番頭さんというお方。
強いお方ですか???」
「何を言うてるんや。
ここの番頭、お前も知ってるやろ?
小さい時から算盤より重たいもんは持ったことないで?
これを1人でやってくれと言ってたんやけど、どうしてもそれをやれと言うなら親元へ帰ると言い出してな。」
「はぁ…そうですか…。
へぇ〜…あっ、旦さん!
私、用事が1つあったのをコロッと忘れてました!
1回帰って、それからまた…」
「ちょっと待たんかいな!
なんや、あんさんえらい怖がりやねんな」
「いや〜私、人間には強いんですけど…バケモンとか幽霊となるとちょっとねぇ…」
「その背中の龍はどうしたんや⁉️」
「いや〜この龍は…ハハ…バケモンとか幽霊が苦手な龍で…」😅
「そんな龍がおるかい!
いやいや、あかんあかん。帰さんぞ。
今帰ったら腹痛でも起こすんやろうからな。」
「いや、まだご飯もまだですし…」
「お膳はこちらで用意する。酒も飲ます。
誰でもええというわけにいかんからな。
ひとつ腹くくって頼みますぞ」
「熊はん…ひとつよろしゅう頼んます」
「ハッ!うわぁ〜、番頭はん!
えらいことになりましたなぁ!」
「あんたがそんなんでどうする⁉️」
すぐに御膳の用意が出来、熊はんも番頭も覚悟を決めます。
「ほな熊はん…ぼちぼち行きましょか」
「ああ、お膳は重たいんで私が持ちますから、番頭さんはそこの燭台持ってきてください」
「ああ、そら助かります。
このくらいのもんなら持たせてもらいます…よいしょっと。
さぁ、熊はん。どうぞお先へ」
「何を言うてまんねや、番頭さん。
明かりを持ってるもんが先に行かなどうにもならんがな。
そう思って私、お膳持ってまんねや」
「…えらい計略にかかったな…。
ほな…先に行きますけど、すぐ後付いてきてくださいよ?
ち、ちょっと熊はん…後ろで震えなはんな。
さっきから後ろでお膳がガチガチガチガチ音立ててるんが不気味で…」
「アンタもや!
さっきから燭台の火が揺れて影がゆらゆらゆらゆら…そっちのが気色悪い…!」
ワーワーと言いながら2人で離れへ。
障子を開けて蔵が見えるようにします。
「は〜…さぁ番頭はん。
せっかくやし御馳走でも頂きましょか。
とりあえず酒でもいきましょ」
「…あきまへん。私、酒は飲めんのです」
「あ、そうなんですか?
ほな私、手酌で頂きまっさ。
グビ…はぁーっ、いい酒やなぁ♫
ウチのやつと一緒や…✨😋
あ、番頭さん、お呑みにならんのやったらご馳走食べておくんなはれや。
ひょっとするとこれがご馳走の食べじまいになるかも…」
「嫌なこと言わんといておくんなはれ😰
食べにくなるわ…」
「いや、そう言われてもねぇ。
普段なら酒だけで楽しいもんやけど、今日は酔い覚ましが付いてるんでね。
1杯2杯飲んで気持ちよくなってきたな〜と思ってるところにあの蔵がふっと目に入りますやろ?
また酔いが覚めてしまうわ😥
…まぁ、こうなったらせいぜい飲んで食うてな…酔ってしもたらもうバケモンが出たって訳もわからんやろうから…」
「お、おいおい。あかんでそれは!
それならわ、わても頂きます!」
「え〜?無理して呑まんでもいいんですよ?」
「いやいや、わてだけシラフではやってられん。
わても飲む❗️」
「そうでっか?
ほな、まずは1杯どうぞ」
「よ、よっしゃ。
グビッ…ハーッ!からぁ〜っ❗️」
「せやから言うてるのに。
酒はやめて、ご馳走食べなはれ。
あっ、箸が一膳足らんわ!
ワシ行ってもらってきますんで…」
「ちょ、ちょちょっ、ちょっと待って!
逃げたらあかん❗️」
「違いまんがな!
箸をもらいに行くだけや!」
「わ、わたしも行く‼️
あんた逃げんようにな…こうやって帯で締めて…こっちも締めときますわ」
「わしゃ縄付きの懲役人かい?😓」
「あ、ごりょんさん。
箸が足りませんで、頂きたいんですけど」
「ん?なんや番頭さん。
まだそんなとこにおったんか。」
「あ、旦那。
いや、箸が足らんのでもらいに…」😅
「…箸取りに来るのに2人がかりかい?
帯で2人ともくくって?
クックック…仲のええこっちゃなぁ」
「今回の仕事はこたえまっせ〜旦那…!」😭
箸をもらってまた離れへ帰る。
夜もとっぷりと更け、熊はんは酒を飲んでグーグー寝てしまう😪
番頭さんも特に何も変わったことは起きないのでうつらうつらとしてきます😴
その時蔵の中からガターン❗️と音がします。
「なっ、なんや。蔵から音がしましたで⁉️」
「何事かあったんですやろか⁉️」
「こっ、これは役目や。
み、見に行かんと…ってコラ、熊はん!
後ろから押さんといてもらえまっか⁉️」
「そんなこと言ったって見にいかなあかんのでしょ⁉️」
「せやからってそんな後ろから押されたら敵わんがな、うわーっ❗️」
「静かにせんか‼️」
「だ、旦那❗️」
「やれやれ、頼みがいのあるお人ばっかりじゃな。
こんなこともあるかと思ってたら案の定じゃ。
大概にしなはれっ❗️」
さすがは店の主人。肝が座っております。
庭下駄をつっかけると蔵の前へ。
中をジーッと覗き込みます。
すると中から聞こえる三味線の音♫
テンテン、ツテンツテン♫
「西ぃ〜っ、小柳〜、こやなぁ〜ぎぃ〜。
東ぃ〜っ、龍紋〜、りゅう〜もぉ〜ん。
双方見合って!
まだまだ!まだまだ!
はっけよぉ〜い、のこった!のこった!」
「あ、あれはなんじゃ…?
小柳繻子(しゅす)の帯と…龍紋の羽織が相撲を取ってる…❗️
様々な人の思いが集まって…かかるワザの成すことか…⁉️」
なおも見ておりますと、隅の方に立てかけてありました箱の蓋がバタンと落ちます。
中からスルスルっと出て参りましたのが1本の掛け軸。
その掛け軸が壁をスーッとつたっていくと、勝手に壁へ掛かりました。
「あっ、あれはお客から預かってる菅原道真公❗️
天神様の絵像やないか…?」
呆気に取られる旦那の前へその絵像が抜け出てきます‼️
「東風(こち)〜吹かば〜
匂いおこせよ 梅の花ぁ
主(あるじ)無しとて 春を忘るなぁ〜っ!
(※菅原道真の歌)
そちは当家の主なるか?」
「はっ、ははぁ〜っ!」
「質置き主(しちおきぬし)に疾く(とく・早くの意味)利上げをせよと伝えよ。
どうやらまた…流されそうじゃわぃ…」
〜終〜
さて、いかがでしたか?
この演目、なんとなく当時の人の生活感など見える気がして好きなんですよねぇ♫
道真公は次はどこへ流されていくのでしょう?😭
どこかいい持ち主に巡り会ってほしいもんです。
強い思いのこもった物が九十九神になるということなんかも信じられていたような感覚になんだか人の純粋さが見えるというか、面白い発想ですよね♫
僕はあんまり物をリサイクルにも売ったりなんかもほとんどしたことないのですが、できればこの先も質屋さんにお世話にならずに、大事なものは手元に置いておけるようにしたいですねぇ✨
ではまた(^^)