ゴールデンウィークが終わりました。
皆様どこか行かれましたか?
サービス業の僕の感覚としては例年よりは人が少ないというか…どこか「連休の割にはイマイチかな」といった印象でしたが、商売によってはめちゃくちゃ忙しかったりしたんでしょうかねぇ🤔
さてさて今日はゴールデンウィーク明けにスッキリと爽やかに泥棒(スリ)のお話です笑
落語にはたくさん泥棒のお話があります。
落語には昔から3つの『ぼう』があったとされてました。
1つ目がツンボウ。
つまり耳が聞こえない人のことですが、現在は差別用語になるのかな?
2つ目がケチンボウ。
これも落語によく出るキャラクターですね。
ずっと金、金言ってるようなタイプです。
そして3つ目が泥棒。
噺家さん達にとってはいくらこの泥棒のことを悪く言おうが『よくも悪くいいやがったな⁉️』と決して文句を言ってくるやつはいないということで、話に出しやすかったのではないかと思います😁
今回はその泥棒の話の中でここでも紹介しました「一文笛」という演目があるのですが、その前半部分でよく入れられる小噺を1つ紹介します♫
〜ストーリー〜
「あの〜旦那。ちょっとすいません。」
「はい?どうされました?」
「いや〜突然声をかけて申し訳ない。
実はちょっとお願いしたいことがありまして」
「?…なんでしょう?」
「いえ、まぁ立ち話も何ですから、ちょっとそこの茶店までお付き合い願えませんでしょうか?
決してお手間は取らせませんので…。
どうぞどうぞこちらへ。
どうぞそこへお座り頂いて…はい。
おーい、おばさん!甘酒2つ頼む!」
何だろうと思いながら、茶店の席に座ります。
「あの〜頼みというのは?」
「ありがとうございます。
実はお願いというのはその…それです」
「それ?…ああ、この煙草入れですか?」
「そう。
いい煙草入れを下げてはりますなぁ〜!」
「これですか?
まぁ高級という程のもんでもないですけど、気に入って使っとります。
これがどうかしましたかな?」
「実はその煙草入れなんですけど…私が3円で買ったんです」
「え?私は売った覚えはないが…?」🤨
「そう、あんさんはご存知のないことです。
あ、甘酒が来ました。
どうぞ遠慮せず召し上がってください。
実は私、この大阪の…スリでおます」
「スリ⁉️」😳
「ああ、まあまあ✋
驚くでしょうが、大きな声は出さないでください。
腹を割ってお話し致しますので…。
実は私達の仲間の1人があんさんの煙草入れに目を付けましてな…」
ここに来る少し前…その煙草入れに目をつけたというスリ。
「ありゃいい品や。欲しいなぁ〜。
あれを盗んでやろう」
そう思って旦那の後を尾けていきます。
ところがこの旦那にスキがなく、なかなか盗むことができません。
そうしながらしばらく歩いているうちに、別のスリ仲間がこれを見つけました。
スリ同士ですから、何を狙っているのかはひと目でわかります。
「おい、あのおやっさん狙ってるんか?
いい煙草入れ持ってるな。」
「いや、それが…なかなか抜けんのや」😥
「何言うてんねん。
あんな普通のおやっさんやないか」
「そうなんやけど、これがなかなかどうして抜けんのや」🤥
「ホンマかいな?
…よしっ、それじゃワシが狙ってみるから、オマエあの煙草入れワシに1円で売れ」
これで別のスリが1円払いました。
しかし煙草入れは当然まだ持ち主の旦那が持ち歩いています。
「まぁ早よ言えば『抜き取る権利』を買ったわけですわ」
「へぇ…珍しい商売があるもんやな」😅
さて1円払ったこのスリ。
さすがにお金を払ってる分、さっきのやつよりも一層強い気持ちで煙草入れを狙います。
また後ろを尾けていきますが、歩けど歩けどこの煙草入れが盗めない!
何でもないように見える旦那になぜか全くスキが出来ません。
すると、またこの姿を見かけた別のスリ。
江戸から流れてきたスリで、仲間内からは『ハヤブサ』と呼ばれる腕の持ち主です。
事情を聞くと、
「おうっ。ならオレが2円出してやる」
そう言ってハヤブサが後を尾けることになりますが、やはりそれでも盗めない!
そうしているうちに仲間内でこの話が回っていきました。
「…それでとうとうこれがワシの耳にも入って、そら面白いと追いかけていったんです。
そしたらまだそいつがよぉ抜かんとおった。
それで『よし、ほんならワシに3円で売れ』となって、ワシが尾けることになりました」
「はぁ〜っ。面白いもんでんなぁ。」😅
「ところが…です。
3円出して買ったんですがなるほど、みんなが手こずるわけです。
何でもないように見える旦那にスキがない。
どう〜しても抜き取ることができん❗️
そうしているうちに天王寺へ来られました。
参詣にと思って来はりましたでしょ?
彼岸の時なら人が多いですが、こんな閑散とした時期にあんなとこへ入られたらもうどうすることもできません。
これはもう恥を忍んで…と思って、声をかけさせてもらったと。
こういう訳なんです」
「なるほど。
そんなことがあったんですか」
「はい。
それであの〜…勝手に値段をつけてしまって申し訳ないんですが…その煙草入れ。
恐らく15、6円か、ひょっとして20円近く出された品物かと思います。
それに飽きが来て、道具屋へ払い下げたと思って、私に10円で譲ってもらえませんでしょうか?」
「へぇ…しかしあんさん先に3円出してるし、また10円出すとなったらこれが13円になりますよね?
そんなに出してこの煙草入れと引き合いますか?」
「いやぁ、さすがにそら引き合いまへんわ。
私らのこういうもんを買ってくれるとこがありますけど、そういう商売人は足元も見ますしねぇ。
これだけの品持っていったところで、まぁ精一杯で4円くらいやと思います💦
でも金の損は承知の上ですわ。
誰も抜けんかったその煙草入れをワシが見事に抜いてきてやったと自慢したいが為だけでお願いしてるような次第です。
どうかお願いします!
この10円で何とかお願いできまへんやろか?」🙏
「そこまで言われたら断りにくいなぁ…😓
まぁ…せっかくそこまで打ち明けて言うてくれたんですから、10円で買ってもらうことにしましょか」
「ホンマでっか⁉️
ありがとうございます‼️
ほな、気の変わらんうちに…先にこれ10円を納めてもらって。
それじゃこの煙草入れは確かに頂戴致しますんで。
あと…話が終わった途端で愛想も無しなんですけど、2人で話してるのを仲間に見られたらいかんので、私はこれで失礼します。
旦那はゆっくりしていってくださいね。
どうかこの話はご内聞に…はい。
この度はホンマにありがとうございました。
それでは!ごめんやす」
スリの男はそう言うと足早に行ってしまいました。
甘酒をゆっくりと呑みながら感慨にふける旦那。
(不思議なことがあるもんやなぁ。
スリがこうまでして頼んでくるとは。
まぁしかし、そんなに腕利きが集まって抜けんと言われたら嫌な気はせんわ
ワシもなかなかやるもんやなぁ。
こうして10円ももらって…んっ?
…あれっ?…あれっ⁉️
さ、財布がない…‼️)😱
「どうや、オマエら。
仕事というのはこういう具合にやらないかんのやぞ。
オマエらは煙草入れやと思ったらそこにばっかり目がいくからあかんのや。
煙草入れで抜きにくかったら形を変えたらええ。
これが兵法というやつやぞ。
財布の方が仕事しやすいしなぁ。
形を変えるために金使っても、その金はまた手元に仲間連れて戻ってくるんやからな」
〜終〜
さて、いかがでしたか?
面白いというよりは泥棒ながら「お見事!」と感心してしまいそうなお話でした♫
泥棒でもスリをやる人間からするとスリは強盗と違って人を傷付けず、それでいていかにバレないようにするかという技術が必要だから、自分達は『技術者である』と考えていると米朝師匠が仰ってました。
何か納得してしまった自分がいました🐥笑
土曜は冒頭に出ました「一文笛」にしようかなと思っておりますが、またそちらもお楽しみください♫
ではまた(^^)