日付変わりまして、今日からお彼岸です。
『彼岸』という言葉はサンスクリット語から来た仏教語なんだそうですよ。
サンスクリット語のパーラミタ。
この発音に漢字を当てはめたのが波羅蜜多と書く。
お経の中にある「ハラミタ」がその部分なのですが、その意味に沿った漢字を当てると『彼岸に至る』という意味になるんだそうです。
で、さらにこのハラミタがもとは『六波羅蜜』(ろくはらみつ)から来てるそうで、まぁ簡単に言えば正しく生きなさいよ〜とか、自分を磨きなさいよ〜っていう6つの教えです。
※気になる方は検索してみてください
そもそもこの『彼岸』。
仏教用語です。
あの世のことを彼岸。
こっちのことを此岸(しがん)。
彼岸の時期はあの世とこの世が最も近いところにあるんだそうでして、ご先祖の供養も行いつつ、仏教の修行もしながら自分を見つめ直す時期なんだそうですよ。
太陽信仰の「日願」にもかかっているそうです。
明後日にも忘れてしまいそうな説明ですが…。笑
〜ストーリー〜
夜もとっぷりと更けた時間🌙
長屋に住む八五郎が寝ています😪
すると同じ長屋の隣の家から
カ〜〜〜〜〜ン…
カ〜〜〜〜〜ン…
(南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…)
鉦(かね)の音と念仏が聞こえてきます。
「わっ!😵💫
う〜ん…なんだ?…また隣の坊さんか。
全く…うるせぇなぁ、もう!
近頃引っ越してきたと思ったら、毎晩毎晩あの調子だよ。
おちおち寝てられやしねぇ。
何で坊さんなのに長屋に住んでんのかな?
ちょっと文句のひとつでも言ってやろう」
隣の戸を叩くと、隣人の僧侶が出てきました。
「おお、お隣のお方か。
どうなされました?」
「どうしたもこうしたもねぇんだよ。
毎晩毎晩、夜中にカンカン、ナンマイダナンマイダってやられちゃ寝てられねぇじゃねぇか。
おかげでみんな怖がっちゃってここらの子供がはばかりに行けなくなって寝小便しちまうってんだ。
静かにしてもらえないかい?」
「おお、これは面目次第もござらん。
これには事情がございまして。」
「事情ってなぁ、なんだい?」
「妻のためでござる。」
「何だよ。
子供の寝小便の理由がノロケとは恐れ入ったねぇ」🥴
「いやいや、そうではござらん。
今は亡き妻の回向(えこう・供養のこと)をしておりましてな。
まぁこんなところで立ち話もなんですからお入りくだされ。
実はな…」
このお坊さん。
もともとは因州鳥取の藩士・島田重三郎(しまだじゅうさぶろう)という侍で江戸の藩屋敷に務めていました。
ある日、吉原遊廓へ仲間数人と行った折にそこで人気のあった高尾太夫(たかおだゆう)と出逢い、お互い一目惚れで恋に落ちます。
ところがその高尾太夫は仙台藩主・伊達綱宗に見初められてしまい、高尾太夫は重三郎との操を立てるあまり、綱宗には全然なびきません。
「…そのために藩主・綱宗は激昂し、高尾太夫は無惨にも斬り殺されてしまいました。
私はその高尾を弔うために名を土手の道哲(どてのどうてつ)と改め、こうして念仏を唱えております」
「へへへ…坊さんよ。冗談はいけねぇなぁ。
オレだって芝居くらい観てるから知ってるけどよ。
島田重三郎っていやぁ世間で有名ないい男だって話だぜ?」
「その島田重三郎が拙僧でござる。
その証拠に…我が贈りし千匹猿の割こうがい(くし)、高尾が我に贈りしは焚けば魂の帰す反魂香。」
「へぇ…なんだい、そりゃ?」
「このお香を焚き、鉦を叩けば高尾が煙の中から現れ出でるのです。
しかしこの香も残りはわずかばかり。
毎夜おやかましい次第ですが、どうぞ今しばらくだけご容赦願いたい」
「ふ〜ん、そのお香で?幽太が出るの?
そりゃ面白いね。
いっぺん焚いて見せておくれよ。
そしたらオレがみんなにこういう訳だから許してやってくれよって言い回ってやるから」
「ふむ…仕方ありませんな。
では1度だけお見せいたそう。
この香を1つ火の中へ焚べまする。」
「ふんふん…煙が立ってきた。
おっ、こりゃあいい匂いだねぇ♫
はばかりで焚いてくれりゃみんな喜ぶよ」
反魂香を火の中に入れ、煙がポワ〜っと上がると鉦をカーンと叩き、念仏を唱えます。
すると煙の中から高尾太夫が現れました❗️
「おお、そちは女房・高尾じゃないか」
「お前は島田重三(じゅうざ)さん…。
香の切れ目が縁(えにし)の切れ目…。
あだにや(粗末に)焚いて…くだしゃんすな」
「あだに焚くまいとは思えども、そなたの顔が見たきゆえじゃ。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…」
香が燃え尽きると、高尾太夫の姿も消えてしまいました。
「…へぇ〜っ!ホントだったよ。
こりゃ驚いたねぇ。
ちょっと頼みがあるんだけどさぁ」
「何でござるか?」
「いやぁ…ハハ。
実はオレも3年前に女房に先立たれちまってね。
おせきっていうんだけど、オレも顔を拝みたくなっちまったんだ。
だからそれ…ちょっとでいいからもらえないかい?」
「いやぁこれは足すこと叶わぬ大事なものゆえ、差し上げるわけには参りません。」
「いいじゃねぇか、ちょっとぐらい!」
「いやいや、これは私と高尾太夫の取り交わした品物。
あなたの役には立ちませぬ」
「何だよ、このケチ!
じゃあいいよ、もう!」
そう言って自分の家に戻った八五郎。
しかしあんなものがあると知ってしまってはそのことばかり考えてしまいます。
「…やっぱりオレもおせきに会いてぇなぁ。
なんて言ったっけな、あの火に焚べたやつ🙄
まぁいいや。
とにかく薬屋に聞きゃわかるだろ。
ちょっと早えけど、行ってこよう!」
明け方にも関わらず薬屋の扉をドンドンと叩きます。
「んん?どなたかな、こんな朝早くに。
サダ吉、ちょっと開けてあげなさい。
何か急患でも出たのかもしれない。」
「へーい
よい…しょ、と。
はいはい、あの〜どんな薬が御入用です?」
「おうっ、早くからすまねぇな。
ほら、あれだよ。
ポワ〜っときて、パーっての」
「何です、それ???」
「だからほら、『そちゃ女房の高尾太夫』『あだに焚いてくだしゃんすな』だよ!」
「???
何だかよくわかりませんねぇ。
あの〜よかったら中でいろいろ見てください。
名前が貼ってありますから」
「おお、そうか。
え〜〜〜っと…何々…?
難しい字だな…おっ、これは伊勢浅間…え〜とよろず屋の『万』って字だな。
金太郎の金に、丹か。
ヨロズキンタンってのかい?」
「それは万金丹(マンキンタン)です」
「そんな名前じゃなかったな…。
隣がコシナカ、トミヤマの…」
「あ、それは越中富山の反魂丹です」
「ハンゴンタン…⁉️
『タマシイのきすハンゴンタン』…それだっ!
思い出した!それそれ!
その反魂丹、200文ばかりくんねぇか!」
「へい。お待たせしました。
じゃあこれ、どうぞ」
「いやぁありがとよ!
早くから悪かったな!これ駄賃にやるよ!
そんじゃな!」
「へーい。ありがとうございます」
「さぁどうだい、あのやろうめ。
200も出しゃこんなに買えるんじゃねぇか。
勿体ぶりやがってホントにあの坊主は…」
ぶつくさと言いながら急いで家へと戻り、七輪を用意し、火を起こすためにパタパタと扇子であおぎます。
「いや〜ありがてぇありがてぇ。
これでもっておせきに会えると思うと何かウキウキしてくるな♫
3年ぶりだしな!思い出すねぇ。
今際の時にオレの手をギュッと握り締めながら
『おまえさん…私はあんたみたいな人にこんなに親切に看病されて幸せだけど、もういけないんだよ…』
なーんて言うから
『バカ言ってんじゃねぇ。
オレがついてるんだからしっかりしろぃ』
『いや、私にはわかるんだよ。
でもねぇ…私が死んだ後にまた新しく女房もらって、その人を可愛がるのかと思うと死にきれないよ』
『バカなこと言うな。
おめぇみてぇないい女房は他にいねぇ。
おめぇが死んだらオレは生涯やもめで暮らすよ』
『まぁ本当かい?…あたしゃ嬉しいよ…』
そう言ってオレの手を握ったのがこの世の別れだったからなぁ。
しかし3年ぶりか。ちょっと照れくさいな。
そういやあの坊さん、歌舞伎みてぇな気取った言い回しだったから真似してみるか。
『そちゃ女房、おせきじゃないか』
『お前はやもめのハチゴロさん。
取り交わせし越中富山の反魂丹。
あまり焚いてくだしゃんすなぁ』
『あまり焚くなと言われども。
お前の顔が見たさゆえ…』
『まぁあんた、そんなこと本当かい?』
『バカ、本当だよ〜。
だから今も1人でいるんじゃねぇか』
『そうかい?
あんたみたいな親切で実のある人をこの世に残しておくのは勿体無いから、共にあの世へ連れ行かん』
なーんつってなぁ♫
…ってイヤだよ、それは
『オレがあの世に行くまでは待っててくれよ』
『あらっ、そんなこと言って!
こっちで何か悪さしようとしてんでしょ?
悪さしたらくすぐっちゃうからねっ?』
…くすぐるの好きだったなぁ、あの女。
オレは痛えのは我慢できるんだけど、くすぐったいのはかなわねぇや。
くすぐるのは困るんだよ〜…考えただけで何かムズムズしてくるねぇ。
くすぐっちゃぁやだよ、おせき!
くすぐっちゃぁやだっての❗️
…あ、火種入れんの忘れてた」
七輪に火を起こします🔥
「…よーし。こんなもんかな?
ここにこれをひとつ、焚べてみるとするか」
火に反魂丹をサラサラ〜っと入れます。
ゆっくりと煙が上がってきます。
「煙が出てきたぞ♫
クンクン…んん…?
…あまりいいニオイじゃねぇなぁ…
まぁいいか。煙さえ出りゃいいんだし。
さ〜てと…お〜い、どうした〜?
お〜い、おせき〜?
足りねぇのかな?もっと焚べてみるか…」
煙はさらに上がりますが、肝心のおせきさんが出てきません。
「?…おかしいな。
あの坊主のとこはすぐに出たのに🤥
まぁ三千億土なんて遠くから来るんだし、すぐにはダメか。
あとあいつは恥ずかしがり屋だからなぁ。
もっと煙を出した方がいいのかもしれねぇ。
面倒くせぇや。全部入れちまえ❗️」
バサッと全部火の中に放り込みました🔥
モウモウと煙は上がりますが、やはり何も起こりません。
「まだ出てきやがらねぇな。
おーい、もう近くにいるんだろ⁉️
ウワッ!こりゃえらい煙だなぁ…ゴホッゴホッ!
お〜い、おせき何してんだよ?
こっちが参っちまうぞーっ❗️」
その時ニオイと煙に驚いた家主がハチゴロウの家に飛び込みました❗️
「おいっ!これはいったいどうしたんだ⁉️」
「あっ!
実は今これを火に焚べてたんですけどね」
「何だこれ…?
こんなもの焼いちゃいけないよ。
こりゃ咳止めの薬だ!」
「せき止め⁉️
道理でおせきが出ねぇわけだ…」
〜終〜
さて、いかがでしたか?
お香の反魂香と薬の反魂丹は確かにややこしいですねぇ…
しかし2人とも愛情は純粋ですね( ̄∀ ̄)
さて、この反魂香。
実際に販売されております💡
⚠️幽霊が出るのかどうかはわかりません⚠️
反魂旦というお菓子もあります。笑
線香にしちゃあなかなかいい値段します✨
インドのお香などにあるリラックス効果とか気分を高めるとかのような、実際にどんな効果があるのかは定かではありませんが、香りは嗅いでみたい気がしますね♨️
反魂丹はネットで検索したところ、正しくは胃腸薬らしいです💊
落語の世界の時代ではどうだったのか不明ですが…。
このお話し、オチについてはいくつかバリエーションがありまして、今回はわかりやすいものを選びました♫
反魂丹=咳止めの薬というのはこのオチの時だけの会話です☝️
あとは女房が『お梶(かじ)さん』と言う名前で、反魂丹を焚きながら
「おーい、梶❗️早く出てこい、かじ‼️」
と叫んでいると、同じく家主さんなどに火事と間違えられ、
「火事はどこだ⁉️」
「かじが出ねぇから煙を出してるんだ」
というオチもあります♫
これから次の土曜(23日)まではお彼岸とのことなので、お墓参りに行く方も多いかと思います。
機会があればちょっと変わった線香を炊いてみるのもいいかもしれません♫
週明けは寒いようなので皆様体調にお気をつけて🍀
ではまた(^^)