「ぶつぶつ…ったくあいつは何かってぇとオレをバカにしやがって…ぶつぶつ。
女はおめえだけじゃねぇんだ❗️
あんまりふざけたこと言ってると向こう脛かっぱらうぞ❗️なーんてな❗️
へへーんだぁ‼️こんちは♫」口笛

「何やら妙なやつが来たな。
何か用か?」

「私、道具屋でございまして…」

「道具屋?
おお、聞いておる。奥へ通れ」

「はっ、はい。ありがとうございます。
へへ、さすがキレイなもんだねぇ〜。
こんなお屋敷に入るのは初めてだよ。
掃除も手入れも行き届いてら。
屋敷がキレイな割には…太鼓は汚ねぇなぁ…💦
こりゃ買わないかな?
…大きな松の木があるねぇ😰
カカァの野郎…イヤなことばっかり言いやがって。
『無礼者ーっ‼️』と来たら『ゴメンナサイ‼️』って逃げちゃおう。

あの〜、ごめんください」

「どぉ〜れ。むっ、なんじゃその方は?」

「あっ、あの、道具屋でございまして…」

「ふむ、しばしそこで控えておれよ。
え〜、道具屋が参っておりますがどなたか…」

「おおっ、拙者じゃ。
いやぁまた殿がな…ハハハ。
おお、よく参ったな。
こちらへ上がりなさい」

「い、いえっ、ここの方が…いざという時には…!」

「何を申しておる。
太鼓は持って参ったか?」

「も、持ってきましたよ。
持ってきちゃあいけないんですか?」

「いやいや、その方1人だけ来たのでは何もならん。
今一度拙者が改めるから、こちらへ出しなさい。
ふ〜む…先ほど店でも見たが、大層時代が付いておるなぁ」

「え、ええ。時代が付いてます。
時代は請け合います。
時代で出来てるようなもんですから。
この太鼓から時代を取ったら太鼓が無くなっちゃいます」

「面白いことを申すやつだな。
よし。では殿にお見せしよう」

「お殿様に…見せるんですか?
よしましょうよ、こんなに汚い太鼓。
お殿様に見せたって無礼者ってなりますよ。
私もあなたもしくじっちゃマズイですから。」

「殿に見せずにどうする?」

「あなたが買ってくださいませんか?」滝汗

「いや、拙者が買うわけには参らん。
殿にお見せするから、ここで待ちなさい。」

「あのっ、それ以上はキレイになりませんよ⁉️
あと私は見せに来ただけってことをお殿様に伝えてくださいね❗️」


しばらくして…


「どうでした?
いけなかったでしょう?」

「いやぁ誠に御意に召されてな。
お求めになるそうだ。」

「ほ、ホントですか?
うぅ、嘘でしょあなた⁉️
そう言って安心させといて捕まえようと…⁉️」

「そんなことはせん。
本当にお求めになるぞ」

「そっ、そうですか…はぁぁ」チーン

「なんじゃ?気が抜けておるな。
売らんのか?」

「い、いやいや、売ります売ります!
バカ言っちゃいけませんよ」

「あの太鼓、いくらなら手放すな?」

「へっ、へい…!えーと、あ〜と。
いくら…というのはいくらぐらいのもんでしょうな?」

「わからんやつだな…😥
あぁ、言いそびれておるのだな?
いやいや、このようなことを申してはお上に対して不忠となるやもしれんが、商人というものは儲ける時に儲けなければ後で損が行くからな。
遠慮せず、手一杯を申せ。」

「て…手一杯ですね?
じ、じゃ、じゃぁ…こんなもんでどうでしょう⁉️」🙌

「…手をいっぱいに広げてどうした?
それはいったいいくらじゃ?」

「10万両です‼️」

「10万両⁉️それは高いな…」

「高いですよ!
でもまけろって言うならいくらでもまけます。
トントントントンまけて、今日1日中まけますよ❗️」

「そんな商いがあるか!滝汗
変わった男であるなぁ。
それでは拙者、あの太鼓を300金なら取り計らってつかわすがどうじゃ?」

「あ、そうなんすか?
いやぁ、なんでございますかね。
えぇ、そりゃまぁねぇ。
えぇ〜っと…今、何か仰いました?」🤥

「300金ならばどうじゃ?」

「あぁ、なるほど。
さんびゃっきんね。
さんびゃっきんって言うとどのようなもんです?」

「わからん男じゃな😥
300両じゃ。」

「サンビャクリョウねぇ。
サンビャクリョウってぇのは一体どういうようなもんでしょうな?」

「どうしてそうものがわからんのだ😥
1両小判が300枚の300両ではないか」

「こっ、小判ってぇとあの…物が買える小判ですか?」

「物が買えぬ小判があるか?
買える小判で300両じゃ!」

「あ、じゃ300両ですね?
いや〜300両‼️
アーッハッハッハッハッハッハッハッハ……🤣
…ア"ァ"〜〜っ‼️」えーん

「泣いておるな…滝汗
売らんのか?」

「ぅぅ…売ります売ります❗️
300両ください‼️」

「これこれ!裾を引っ張るでない!
ではここに受け取りを書きなさい」

「ウケトリなんぞいりません‼️」

「こっちがいるのだ‼️」ムキー

「あ、あぁそうですか?
あの〜私ハンコを持ってきてないもので…あ、爪印(つめいん=母印のこと)でよろしいんで?
わかりました。
ではこちらへ…え〜と(ペタペタ👍)
いくつぐらい押しましょうかね?
(ペタペタペタ👍)
百ほど押しときましょうか?
(ペタペタペタペタ👍)」

「そんなにいらん‼️ムキー
紙が真っ赤ではないか…💦
では金子(きんす)を渡す。
よく確かめるのだぞ。
さっ、まずは50両じゃ」

「ごっ、50両…!」

「これで100両」

「ひゃっ100両、100両…!」

「これで150両じゃ」

「ひや〜っひゃっひゃっ、150両、150両…‼️」ガーン

「うるさいやつじゃなぁ。
これで200両じゃ」

「200両、200両…ゔぅ…」

「また泣いておるのか。
さぁこれで250両じゃ」

「にっにっ250両…!
あ、あっ、あぁぁあのっ!
み、みみみみ水を一杯もらえませんか?」

「世話の焼けるやつじゃな。
さぁ、これを飲め」

「あ、ありがとうございます…!
あ、あのっ、コッコッコッ…」

「ニワトリではないか」

「こっ、これで終わりですか???」

「まだあるぞ。
さぁ、これで300両じゃ。」

「さ…300両…!う〜ん…」チーン

「おーい!これこれ!
しっかりいたせ❗️
そこの柱にでも掴まりなさい」

「へ、へい。
ここっ、これ、これはあの、ほっ本当に私もらってっていいんでございますか?」

「その方の商いによって得た金子じゃ。
持って帰るが良い」

「あ、断っておきますがうちは一度お売りしたものはもう引き取りませんのでお願いしますよ⁉️
間違ってたとかダメですよ⁉️
先祖代々のしきたりでございますからよろしゅうございますね⁉️

しかしちょいと気になるんでお聞きしたいんですが…どうしてあんな汚い太鼓が300両で売れたんでございますか?」

「なんだその方も知らぬのか?
拙者もよくはわからんが、お上はああいうものに誠にお目が高い。
あの太鼓は『火焔太鼓』と申すもので、世に2つというような銘器だそうだ」

「へぇ〜…じゃ本当に売れた。
はぁ〜…ありがとうございます!
またひとつよろしくお願い致します」🙇🏻‍♂️

「おお、帰るのか?
風呂敷を忘れておるぞ」

「あなたにあげます」

「いらん!」

「あ、そうすか…どうもありがとうございます!」

「気をつけてな。
金子を落とすでないぞ」

「冗談言っちゃいけないよ。
自分を落としたって金子は落とさないよ。
ほほ、本当に300両で売れたんだ!
夢じゃねぇかな?
ほっぺたつねってみるか、イテテテ!
夢じゃねぇや。
ありがてぇありがてぇ。
なんか腰に力が入らないよ。
フワフワフワフワして…弱っちゃったなぁ」

「んっ?
最前の道具屋がフワフワ飛んで参った。
これこれ道具屋!
いかが致した?」

「あっ、おかげさまで商いがありました!」

「ほう!いくらに売れた?」

「余計なお世話だ‼️ムキー
危ねぇ危ねぇ。
300両なんて言って目の色変えられたら大変だよ、全く…。
カカァの野郎め、ざまぁみやがれ!
たまには苦しくなるくらい食わせろなんて言いやがって。
帰ったら腹一杯食わせて動けなくしたら小言言いながらくすぐってやる‼️

やいっ!い、い、今帰った…❗️」

「まぁ〜この人は顔色変えてどうしたの?
あっ、やっぱりしくじったんだね?
いいから早く裏へお逃げ❗️」

「ば、バカやろうこんちきしょうめ…はぁはぁ。
や、や、やいっ!
あの、あ〜、えと、その、ま、ま、まぁ落ち着け!」

「お前さんが落ち着きなよ」真顔

「あ、あぁ…い、いぃい、いいか。
お屋敷行って驚いた。
あの太鼓は何て言ったか忘れちまったが、大層な銘器なんだそうだ。」

「あらそう。
で、お前さん2分って言ったんだろ?」

「言おうと思ったんだけど、言おうとしたら舌が突っ張らかって言えないんだよ」

「肝心なところで役に立たないねぇ。
今度は舌を抜くよ?」

「なんだ舌を抜くとは⁉️
それでこっちが何も言えねぇでいるとな、向こうが手一杯申せって言うからこうやったんだ」🙌

「手をいっぱいに広げて何なの…?
高いこと言わなかったろうね⁉️」

「10万両って…」

「…バカが固まっちゃったねぇ、お前さん。」

「そしたら向こうが高ぇってんだ」

「当たり前だよ!」

「それからトントントントンまけてな?
300両で売れたんだ!」

「はぁ…バカだねぇホントに。
なんでそういう嘘を付くかねぇ?
あっ、損して帰ったらおまんまが食べられないと思って?
そんなにおまんまが食べたいかねぇ?
可愛いところがあるね」ニヤニヤ

「何を言ってやがんだ。
本当に300両で売れたんだ!
たまにゃオレの言うことを信用しろい!」

「本当に?じゃあ見せてごらんよ。
ほらほら嘘なんだよ。
嘘だから見せらんないんだ。
早く見せろこのバカ」

「バカたぁなんだこの野郎。
よぉ〜し、それじゃあ見せてやる!
てめぇビックリして座りしょんべんしてバカになるな⁉️」

「大丈夫だよ」ニヤリ

「さぁどうだ!50両だ❗️」

「⁉️
あらっ⁉️まぁ〜お前さんっ!
ほ、本当なのかい⁉️」

「本当なんだ!どうだ、100両だ‼️」

「ひゃっ100両だなんて…あらぁ〜ヤダ。」

「ヤダじゃねぇや!
これで…150両だ‼️」

「まっ、まぁ150両だなんて!
弱っちゃうよあたしゃ…あぁぁ〜…チーン

「おーい!しっかりしろぃ❗️
後ろの柱にでも掴まれ!」

「お、お前さん。こんなもんでいいかい?」

「ああ、それでいいや!
いいか?それっ、200両だ‼️」

「あらまぁ〜!
お前さんは商売が上手だね〜!」

「何を言いやがんでぇ!
そらっ、200と…50両だ‼️」

「あら〜っ!
やっぱり売るのは古いものがいいねぇ〜っ」

「へへん、ざまぁみろぃ!
さぁっ、これで300両だ‼️」

「まぁ〜っ、お前さん!
水を一杯おくれ〜っ‼️」

「そぉら見やがれ!
オレだって水飲んだんだ!
サダーッ!水持ってきてやれ!」

「ゴクゴク…はぁ〜っ。
お前さん、ありがとう。
でもよくあんな汚い太鼓が300両で売れたね。
きっと音がしたからだよ。
音で気が付いたんだねぇ!」

「そうだよ!
音がする物じゃなきゃダメだ!
今度オレは半鐘(はんしょう=火事の時に鳴らしていたような鐘)買ってきて鳴らすよ!」

「半鐘はダメだよ。
オジャンになるから」

〜終〜
さて、いかがでしたか?

このお話、落語で聞くとそこまで長いお話ではないのですがこうして書き出してみるとけっこうな量になってしまいました。

セリフが凄く多いんですねびっくり
これはちょっとした発見でした💡

噺家さんの動きとかでなく、言葉のやり取りでしっかりと話が進んでいくのがよくわかります。


案の定ブログに長過ぎて入りませんという表示が出てしまいまして…😱

しかし途中で切るには短い❗️
切らないにしては長い‼️

まさに「帯に短し襷に長し」な感じでして非常に悩みました💦

省略してしまうと薄れてしまうことがあまりにも多かった(この奥さんのイヤミ〜な感じとか!笑)ので、やむなく2部構成に致しました。

ストーリーに入るまでに僕の無駄話で長くしてやろうかとも思いましたが遠慮しました。笑


しかしまぁこのお話はね〜。
何度も何度も聴きましたし、今回書くに当たっても何度も聴きましたが全然飽きませんねぇ。

サクセスストーリーってのは面白いもんです。
主人公が奥さんにバカにされて尻に敷かれながらもそれで何とかなってるというのを理解してる感じですし、奥さんも結局のところは世話焼きというか面倒見が良いというのか…。
ただ口の悪い女ではありません指差し

なんだかんだ夫婦仲がいいんだなと思えるところなんかもほっこりします♨️

骨董品に対して『時代が付く』っていう表現も素晴らしいですね♫

皆様も年々歳を取ってると思わずに、時代が付いてると思うとなかなか価値の高い感覚になれるかもしれません✨

人間の場合は叩いても埃は出ないようにしたいものですが。笑

ではまた(^^)