一富士、二鷹、三茄子🗻🦅🍆
正月三ヶ日に見ると縁起が良いとされている夢ですが、皆様はこの正月にどれかごらんになりましたか?
夢の大半は起きた途端に忘れるようなものばかりですが、鮮明な夢もあります😪
一説によると脳が不要な記憶を処理してるとか、深層心理にあるものが夢に出てくるとかいろいろと理屈があるようです💡🧠
見てる人にとってはどんなに壮大で大長編なものでも実際は一瞬の出来事なんだそうですが、中には自分で見る夢をコントロール出来るとか、夢の中を自由に動き回れるなんという人もいるそうで、何とも器用な人だなぁと思います。
〜ストーリー〜
ぐ〜ぐ〜〜😪
スピ〜〜😴
「よぉ寝てるなぁ。
まぁ〜締まりのない顔…!
この顔と一生共にすると思ったらイヤになってくるわ😓
さっきから大きなハナ提灯が出たり入ったり…お祭りの夢でも見てるんかな?
あらっ、えらい苦しそうな顔してるわ…。
今度はまたニタ〜っと笑って…!
どんな夢見てるんやろ?
ちょっと。
ちょっと、アンタ。起きて。ちょっと❗️」
「うっ、うう〜ん…🥱
…おお、ついつい寝てたか。
どないした?」
「どないしたやないがな。
さっきから苦しそうな顔したり嬉しそうにニタ〜っと笑ったりして。
どんな夢見てたん?」
「へ???…🤥
いや、わしゃ夢なんか見てないけどなぁ」
「見てたって!あんな顔してたんやから」
「いやいや、見てへんっちゅうに」
「何?
アンタ私に言えんような夢見てたんか?」
「おかしなこと言うなよ。
見てへんもんは見てへんのや!」
「またそんなこと言って…。
なんぼ私が悋気(りんき・嫉妬やヤキモチ)しいでも夢の話くらいどんな夢でもおかしな夢見たな〜って1回笑ったらそれで済むやないの。
そんな隠し立てせんでも…」
「何が隠し立てや…!
見てたら最初から話してるやないかい!」
「ふ〜ん、あっそう…。
言いたくないんなら言わんでもええ…。
…グスっ…アンタは昔からそうやった…。
水臭いとこがあるんやわ。
何でも私に言ってくれたらいいのに…」
「何を言い出す…!?
見てないもんを見てないって言って何が気に入らんねん⁉️」
「どんな夢でも見やがれっ!」
「しつこいやっちゃな…!
おかしなこと言ってたらボーンといくぞ⁉️」
「ハンッ!
ちょっと自分に都合が悪くなったらボーンといくやなんて。
どつくなと蹴るなと好きにしたらええがな!」
「蹴るなと〜?
よーし、今日という今日はド性根に叩き込んだる❗️」
「いっそ殺せ‼️」
「よし、殺したらぁ‼️」
「おいっ!待て待て❗️
なんか知らんけど落ち着け‼️」
「徳さんか。止めんといてくれ!
今日こそはコイツに…!」
「待てって!何をそんなに揉めてるんや?」
「グスッ…まぁ兄さん聞いておくんなはれ。
この人がな、寝ながら苦しんだりニタ〜っと笑ったりしてるから、私がどんな夢見てたんやって聞いてるのにな。
夢なんか、見た、覚え、ないっ…
え"ぇ"〜ん」
「・・・
…それで『いっそ殺せ』までいくんかい、オマエのとこは?
はぁ…長生きするわ、ホンマに。
ウチのやつがかき餅焼いてるから、一緒につまんで機嫌直しておいで。なっ!」
「徳さん、すまんなぁ」😅
「スマンやないでホンマに。
たかだか夢の話くらいで…クックック。
で?ホンマはどんな夢見てたんや?」
「違うんや。
わしゃホンマに夢なんか見た覚えないねん」
「クックック…わかってるって。
たまには女房に言えんような夢見ることもある!
ワシになら話せるやろ?」
「しつこいなぁ😥
ホンマにワシは夢なんか見てへんのや!」
「ふ〜ん…あぁそうか。
ワシとオマエとは昔から兄弟分やないかい。
そんなワシにも夢の話くらいできんのか⁉️」
「わからんやつやな…!💢
見てたら最初から言うんや。
見てへんからワシは…」
「ええわい、もう!
昔からあんなに世話してやってるのに…!」
「そんなもんお互い様じゃい!
そんなことでごちゃごちゃ言うやつと兄弟分なんかチャンチャラおかしいわい。
もうウチに来てくれるな!」
「来るなとはなんじゃい。
ケンカの仲裁は時の氏神や。
それに向かって何やその態度は⁉️」
「なんや、やるんかい⁉️」
「来んのかい⁉️」
「まぁまぁ待て待て!2人とも座れ❗️
まぁ〜よく揉め事の起こる長屋じゃなぁ、ウチの長屋はホンマに…」😥
「おっ、家主さん。
ちょっと聞いてくださいよ。
ワシが前を通りかかったらこの夫婦が夢の話くらいで揉めてたんですよ。
それを止めに入ってやったのにこの男ときたら、兄弟分のワシにも夢なんか見てないと抜かしやがって…!」
「…アホ。
そんなこと詮索してる暇があったら家業に精を出して、3ヶ月も貯まってる家賃払わんかい!」
「いや、それとこれとは話が…」😥
「何を言うか。帰れ帰れ。
こんなしょうもないことで揉めよってからに。
ほれっ、早く!出て出て!
…ホンマに。よくわからん揉め事やなぁ」
「いや〜家主さん。助かりました😅
あいつも今日はやけに意地になりよって…」
「何が夢の話や、しょ〜もない…。
しかし…何やら面白そうな夢らしいな」
「家主さんまで…😰」
「いやいや、あいつみたいな口の軽いやつにちょっと喋ったら明日には町内に広まってるわ。
それに比べたらワシは口が堅い。
ワシにちょっとだけ…」
「いやぁ、あのねぇ…何回考えても私、夢なんか見た覚え無いんですわ😓
見てたら最初からカカァに喋ってまんねん。
ホンマに夢なんか見てないんです」
「コホンッ…家主と店子(たなこ・借り手のこと)は親子も同様の間柄。
ましてワシは町役(ちょうやく。町内会長みたいなもの)じゃ。
何かあった時には親代わりになって面倒も見にゃならん。
その親代わりのワシにも夢の話はできん!
…と、こう言うんじゃな?」
「いやいや、違いますよ。
家主であろうが町役だろうが、見てない話はしようが無いでしょう?」
「ああ、そうか。ふんっ。
今日限りこの家を空けてもらおう」
「そんな無茶な…!?」
「何が無茶や。
ここへ入る時に『いつ何時でもご入用の節は家を空けます』という約束がある。
町役まで勤めてる家主の言うことも聞かんようなもんを置いといたら、他の店子に示しがつかん。
今日限り出て行ってもらおう」
「あ、あのねぇ…私は夢なんか見てませんよ?
でも仮に見てたとして、それをアンタに喋らんからと店立て(たなだて。家主に追い出されること)を食わされるなんて筋が通らん。
出るとこへ出てもここを動きませんよ❗️」
「出るとこへ出ても⁉️
町役を向こうに回して公事立て(くじだて)する気かい⁉️
ヌヌ〜っ、どんなことがあっても出さないかん!」
「何があっても動きまへんっ‼️」
…こう言っては見たものの、ちょんまげの時代に町役とか家主の権限というものは非常に大きなものでした。
このままでは家を放り出されます。
困ったこの男は『お恐れながら…』と願書をしたためて奉行所へこれを願い出ました。
ところがお奉行様もビックリです。
こんなワケのわからない裁判をやったことがない😥
家主とこの男が2人。
奉行所へ出頭しました。
2人の後ろには他の町役人がズラッと勢揃い。
「家主・佐兵衛、面を上げい。
差し出される願面によればその方、店子・キハチなる者の見た夢の話を聞きたがり、それを物語らぬ故に店立てを申し渡したとあるが、誠か?
誠か…この不届きものめが❗️
家主とか町役と申す者は、下々町人達の鑑(かがみ)と相ならねばならん者じゃ。
それをたかの知れた夢の話を聞きたがり、喋らんからと家を空けいとは不届き千万❗️
キハチとやら、これはその方の勝ちじゃ。
家を空けるには及ばん。
裁きはそれまで!一堂、立ちませい!
全く、バカバカしい…」
無事に裁判は終わり、ぞろぞろとみんなが出ていこうとした時…
「あ〜、キハチとやら。ちょっと…。
いや、他のものは良い。他のものは良い。
キハチ1人だけこちらへ参れ。
いやぁキハチ。
家主が家を空けいとまで申した時は、さぞ驚いたであろうな」
「はい。町役まで勤める家主さんとケンカして追い出されたとあってはこの先どこの長屋も嫌がって入れてくれません💦
本当にありがとうございました」🙇🏻♂️
「うむ。かかるバカバカしきことがまかり通る御政道(ごせいどう)ではないぞ。
しかしその方、町役まで勤むる家主が店立てをもって迫ったにも関わらず、断じて喋らなんだとは天晴れ大丈夫の志(だいじょうふのこころざし)❗️
奉行、ことごとく感服致す。
初め女房が聞きたがり、隣家の者が聞きたがり、家主までもが聞きたがった夢の話。
奉行にならば喋れるであろう?」
「…グスッ…
お奉行さん…わてなぁ、夢を見てたら初めにカカァに喋ってまんねん。
そしたらこんなお手数かけることも何にもなかったんでやす。
なんぼ考えても夢見た覚えはございませんので、どうかご勘弁を…!」
「……ゴホンッ
かく人払いまで致した上からは、夢の話!
たって聞こう‼️」
「どうぞご勘弁を…!
見てないもんは喋りようがございません」
「将軍家のお眼鏡をもって奉行職を勤むる余にも、夢の話を物語ることはならんと申すか…。
かく言い出したる上からは重き拷問にかけても夢の話聞き出して見せるが、どうじゃ⁉️」
「そんな、殺生な…❗️」
「この者に縄を打てぃ‼️」
ははーっ!という声と同時に縄で縛られ、奉行所の庭の松の木にぶら下げられてしまいました。
「この者が喋ると申すまで縄目を解くこと相成らんぞ‼️」
そう言って奥へと奉行は消えていきます。
だんだんと黄昏てくる空の下。
縄はギリギリと食い込んでくる。
頭に血が通わなくなってボーッとしてくる。
(ここでこのまま死んでしまったら、世の中にこれぐらいアホらしい死に方はまたとなかろう…)
情けない気持ちになっていると突然ビューっと一陣の風‼️🍃
キハチの体は天高く舞い上がり、どこかへ飛んでいってしまいました
「…ハッ!な、縄が解けた!
ありがたい…が、ここは一体どこや…?」
「心づいたか。」
パッと顔を上げると目の前にすっくと立ったのは身の丈は抜群に優れ、左右に垂れた真っ白い髪に赤ら顔、両目が爛々と鋭く光る。
そして片手に羽うちわを持ち、顔には高い鼻。
大天狗の姿がありました👺
「あ、アンタは天狗さん…⁉️
ここは一体…?」
「ここは鞍馬の奥。
僧正ケ谷(そうじょうがたに)である。」
「私、鞍馬山まで運ばれてきたんですか…」
「久々に大阪の上空を飛行(ひぎょう)しておれば世にも不思議な話を聞いた。
天下の奉行ともあろうものが、たかの知れた町人の夢の話を聞きたがり、拷問にかけようとは奇怪千万。
あの様な者に人は裁けん。
天狗が代わって裁いてつかわした。
その方に罪はない。
不憫なゆえ、助けとらせたのじゃ」👺
「あ、ありがとうございます😭
見てへんもんを喋れ喋れと言われて難儀しとりました」
「たわけたことよのぅ…。
初め女房が聞きたがったは女人のことじゃが、隣家の男が聞きたがり、続いて家主が聞きたがり、奉行までもが聞きたがった。
天狗はそのようなものは聞きたがらぬ。
安心をいたせ」
「ありがとうございます。
何回言っても見たに違いないと責められて…」
「ふんっ、バカバカしい…。
聞いたところで何になる。
たかが夢ではないか…なぁ?
コホン…初め女房が聞きたがり、隣家の男が聞きたがり、家主から奉行までもが聞きたがった夢の話。
天狗はそのようなものは聞きとうはないが、その方が『喋りたい』と申すのであれば、聞いてやっても良いが?」👺
「いっ、いえいえ!
喋りたいことなんて無いんでやす!」
「ここは他に聞く者も無き鞍馬の奥、僧正ケ谷。
わしは人間ではない。
聞いてやってもよいと申しておる。
わしがこう申しておる間に喋った方がよかろう」
「お、脅かしたらあきまへん!
ホンマにわては見てないんで、見てない話は喋りようがございません!」
「…天狗を侮るとどのようなことになるか存じおるか?
五体は八つ裂きにされ、杉の梢(こずえ)にかけられる。
聞いてやっても良いと申しておるうちに…」
「どっ、どうぞご勘弁を!
なんぼ考えても夢なんか見た覚えは…!」
「まぁだその様なことを…‼️」👹
鋭く伸びた長い爪が体にガッと食い込んできます❗️
「あぁ〜っ❗️助けてくれ‼️
う"わ"ぁ"あ"〜〜〜っ‼️」
「…ちょっとアンタ。ちょっと❗️
えらいうなされて…。
一体、どんな夢見たん???」
〜終〜
さて、いかがでしたか?
ずーっと夢の話でしたが、最後まで夢オチというね。
この最後も本当に夢から覚めたのかどうなのか…?(◼️∀◼️)
さて漫画やお笑い芸人の間では夢オチはご法度とされています。
まぁつまりは「何でもありになっちゃうじゃん」ってことだからだそうです😅
しかしこのラストと全く同じような形がホラー系には非常に多いです。
脚本家の方々はみんな天狗裁きを知ってるのかな?👺笑
あとこのお話、書いてて非常に難しいな〜と思ったのは「文章にすると笑いが少ない」というところです。
実際に聴く方がこの主人公・キハチの慌てっぷりがよくわかります😵💫
数ある芸のうち、場面の切り替わるスピードが非常に速い落語。
落語の中では拍子木をカンッ!と打てば地球の裏側までも一瞬です💨
そんな落語だからこそこの演目の面白さが引き立ちます♫
僕の中では最も落語らしい落語の1つ。
当然、大好きな演目です✨
『天狗裁き』👺でした。
ではまた(^^)