芸能に関わる方にとっては一度は「自分にしかできない」あるいは「その芸能独特のもの」というものがテーマになる瞬間があるのではないかと思います💡

落語でしか表現できないもの。
落語でないと表現のしにくいもの。

落語に携わるプロの方々にとっても大きなテーマです(^^)


落語の大きな特徴の1つが

『場面転換が一瞬で済む』

というところでしょうか。

拍子木をパチンと1つ鳴らせば地球の裏側にも一瞬で場面は切り替わります🌍

それまでの話の流れとは違う風景にパッと切り替わるというのは落語が1番かなと思います。


観客の想像力によって成り立っている芸能ならではですね😁


〜ストーリー〜

夏の暑い日。
夕方に差し掛かった時間。

「あっついな〜💦
特に暑いで、今日はまた…。
今日は起きたのが遅かったからなぁ。
朝飯が遅なってしもた。
まだお日さんがあんなとこにおるんか。
夕飯食べるにはえらい早いけど、ちょっと小腹が空いたなぁ」


そう思っていると、外からいろんな売り物の掛け声が聞こえます。


「たまご〜たまご〜夢たまご〜1つ1銭〜」

「おっ、ゆで卵!煮抜きってやつか💡
ちょうどええわ。おーい、たまご屋!
こっちこっち。ゆで卵1つくれ」

「へぇ、そちらですね。
ちょっとお待ちを…どっこら…しょと。」

「1つ1銭やな。
そのゆで卵もらうわ」

「ああ、お客さん。
これはゆで卵じゃありません。
『夢たまご』です。
ゆで卵ですけど夢たまごなんです」

「ゆで…夢…?何か違うのか?」🙄

「はい。これを食べると夢が見れるんです」

「ああ!なんかチラッと噂に聞いたことはあるんやけど、これか。
へぇ〜…なんか白やら赤やらいろんな色のがあるんやな。
けどパッと見は普通のゆで卵やで。
こんな夢が見たいと言ったらあんたが選んでくれるのか?」

「ああ〜いえいえ、そういう種類のたまご売りもおられるようですけどね。
私のはどの卵を食べてもどんな夢が見られるかわからんという種類の夢たまごです。
まぁその辺もちょっとしたお楽しみとわかって頂ける方はこっちの方が好きなもんで」

「ほぉ〜、面白いな!
オレもその方が楽しみや。1つ貰おう♫
これ普通に食べてええんやな?」

「へぇ、毎度おおきに。
じゃ、これどうぞ。はいはい。
夢たまごですけど、ゆで卵ですから🥚
普通に食べてください」


そう言って1つ夢たまごを買います。


たまご〜たまご〜夢たまご〜1つ1銭〜…」


たまご売りは掛け声を出しながら歩いて行きました。

「面白いなぁ。
生卵やなしにゆで玉子の夢たまごか。
ゆで夢たまごってか。

さてさて…おっ、キレイにカラ剥けるなぁ。
ツルッと剥けたわ✨
モグモグ…おっ、美味い!😋
白身をうまく使って黄身が喉につまらんように食うのが玄人の卵食いや…ゴクッ。
いや〜たまらんなぁ♫」😋


美味しいゆで夢たまごに舌鼓♫


「たまご〜たまご〜夢たまご〜1つ1銭〜。
たまご〜たまご〜たまご〜1つ1銭〜。」


ふと気付くと自分が卵を担ぎ、掛け声を出して歩いています。


「あれ?…いやいや、何言うてんねん?
ワシは卵を買った方や。

たまご〜たまご〜たまご〜1つ1銭〜

…また言うてしもた。
あっ、なるほど。これ、夢か❗️
夢たまご屋になった夢を見てるんや💡
面白いなぁ〜!
たまご屋ってのはこんな気分なんか♫」


たまご屋の目線となるとまたいつもの街や世間が違った雰囲気に見える。
面白いなと思っているとそのまま歩き続けるうちに街を外れていきました。


「いやぁ〜キレイなレンゲたんぽぽの花盛り…って、あれ?
今は夏やのにな。
まぁその辺が夢の都合のいいところか。

ええ夕焼けやなぁ…✨
か〜ら〜す〜、なぜ鳴くの〜♫
カラスはや〜ま〜に〜…♫」


ゴ〜〜〜ン♫


「ちょうどええところで鐘の音が鳴るがなおねがい
こら面白いわ😆」


ますます楽しくなって歩き続けていると、夢たまご屋がある一軒家に入っていきました。


「ただいま」

「あっ、おかえりやす」

「当然のようにここへ入ったな。
ついただいまと言ってしもたけど…あっ、こりゃたまご屋の家や💡
ってことは今のはたまご屋の嫁さんか!
可愛らしい声の人やったなぁ♫」


気の利く奥さんのようで、「汗を拭いてね」とタライにお湯を入れてくれて、行水の用意が出来ています。


「気の利く人やなぁおねがい
えっ?…はいはい、わかりましたよ♫
御膳の用意に酒も1本できてますやって。
いいなぁ〜♫」

たまご屋の好物なのでしょう。
ハツのお造りがありますよと声をかけられ、それを肴に一杯やり始めます🍶


「うまいっ!たまらんなぁ。
けっこうなもんや♫
人間どうしたら幸せになるかと言うけど、1日の仕事終えて汗を流して、好きな食い物に好きな酒を頂くと…ひょっとしたらこれが幸せの極みかもしれんなぁ」

「お父さん。
これからこの子と隣町のお祭りで叔母のところまで行ってきますね」

「はいよ。気をつけてね。
…今のはたまご屋の息子か!
よく言うこと聞きそうな子やったなぁ。
たまご屋なかなかやるやないかい…✨」


また酒肴でくつろいでいると、奥さんが帰ってきました。


「えっ?ああ、はいはい。
なんやて…嫁さんが『お先に休ませて頂きます』やて。
子供は叔母のところに泊まるのか。」


ふと気付くと蚊帳が吊ってあり、豚の形をした蚊遣り(かやり・蚊取り線香を入れる)が用意されています。

そこでたまご屋の奥さんがゆっくりと着物を脱いで寝巻きの襦袢を羽織り、

「アンタも早よおいでやす」

と布団に入る姿が…ラブ


「おいおい…大丈夫かいな。
たまご屋からしたら自分の嫁さんやけど…私にしたら他人の嫁さんやで…?
ありゃりゃ…こんなことあってええのんかい?
えへへ…デレデレ
ま、まぁ、夢の中やし構へんかぁ♫
ほ、ほんじゃ…そうさせて頂きま〜…」酔っ払い


バシッバシッ!


「イタっ!痛い❗️ガーン
なっ、何や何や!何をするんや⁉️」

「何をするもクソもあるか、コラ!
何ちゅうことすんねん❗️」ムキー

「なっ、何を…ハッ⁉️
オマエはたまご屋‼️」

「たまご屋も何もあるかい‼️ムキー
何ちゅうことをするんや、このっこのっ❗️」

「うわっ、痛い痛い!
いやっ、私は何もその…!?

…!…あっつぅ〜💦
何やこの暑い…ん?あら?
あ、そうか。夢が覚めたんか…。
あぁ、なんや…あれだけの夢か。
はぁ〜びっくりした。
でも楽しい夢やったなぁ♫」


「たまご〜たまご〜夢たまご〜1つ1銭〜」


「あれっ?たまご屋がまだあんなとこに。
あいつがここからあそこまで歩く間に、あんな長い夢見てたのか。
おかしなもんやけど、夢なんてそんなもんかもわからんなぁ。

しかし、あのたまご屋…クックック…!
なんぼワシの夢の中とはいえ、自分の嫁さんとワシがあんなことになってたやなんて、ちっとも思ってへんのやろなぁ…ククク…!😙

こうして後ろ姿を見ると…おかしいような…哀れなような…クックック」デレデレ

たまご〜たまご〜たまご〜。
なんぼ〜夢の〜中でも〜
してええことと〜悪いことがあるぞ〜」

〜終〜
さて、いかがでしたか?
ワタクシこの話大好きです( ̄∀ ̄)笑

そんなに大きなネタではないのですが、平和な日常の1コマがタマゴ1つでファンタジックな話に生まれ変わるというのが凄いですねぇ。

夢なら何でもありかな♫

っていう考えに至るのも何だかわかる気がするじゃありませんか👾笑

これぞ「人間の業(ごう)」というものです❗️
(大袈裟か?笑)

一瞬の場面転換を利用したお話。
天才・桂枝雀師匠の演じた新作落語。
「ゆめたまご」でした🥚✨

ではまた(^^)