日本には八百万(やおよろず)の神々がいると言われています。

一神教とは違い、森羅万象、万物あらゆるものに神様が宿っているという考えだからですね(^^)


その中でも有名なところではお稲荷様や天照大神、七福神、龍神様など多数います。


しかし…そんな神様達の中で、神仏共に全く興味がないという方も含めて最も広く知られている神様がいます。

それが貧乏神ですね。


恐らくは日本中…いや、人類全てから嫌われ役となっている貧乏神。

これに取り憑かれた男が今回の主人公。


〜ストーリー〜

男は毎日毎日グータラ生活。
何だかんだと理由を付けて仕事にも行かない。

そんな状態が2ヶ月も続き、とうとう奥さんも愛想を尽かせて出て行ってしまいました。

そんな男のところへ様子を見に来た家主さん。


「オマエは…また逃げられたんか😰
大工が働きにいかんかったら日銭も入ってこんやないか。
どうしてたんや、今まで?」

「近所からお金借りてたんですよ。
それでまぁ何とかやりくりをね。」

「なるほどな。
それでもそんなに金貸してくれるような知り合いおったんか?」

「これちょっとコツがあってね…。
他で言わんといてくださいよ?
『25銭貸してくれ』とこう言いまんねや」ニヤリ
(1銭=200円くらい)

「えらい半端な銭やな?」🤥

「それがコツですわ。
3円(1円=2万円くらい)とか5円ならともかく、ええ歳した大人がたかが25銭くらい持ってないとはよう言わんし、もし返さんかってもまだ諦めもつくでしょ?
『前の25銭どうなってますか…?』とはよほど羞恥心が無いと言えませんよ」

「なるほどなぁ…」😥

「催促がなかったら返すこともないし、25銭あれば4〜5日の食いもんは何とかできまんがな。
そんなことでまぁ…2ヶ月あまり♫」口笛

「偉いことしよる男やな、オマエは…」

「いや、まぁこんな状況ですんで家主さん、お願いがございまして…」🙏💦

「いやいや、いくら家主や言うてもそんな大したことはしてやられへんぞ。
何や?」

「25銭貸してもらえまへんか?」ニヤニヤ

「たった今手の内見せたことワシにすな❗️ガーン
まぁそういうとこは嫌いやないけども…。

ワシはともかくウチのもんがうるさいからな。
今すぐにとは言わんけど、何とか家賃だけは用意してや」

「わかりました。
わざわざスマンことで…いつもすみませんね!
はぁ…帰ったな。さて…と。

あの〜お松さん!隣のもんです!
あの〜25銭貸してもらえまへんか?
25銭でいいんですけど、お松さん?」ニヤニヤ


ガラガラ、ピシャッ!💢


「あかんか…。
まぁ2日前に借りたとこやしな」


何とも情けない男ですが、起きていても腹が減るだけだということで戻ってウトウト寝ていました😪

しばらくして…ふと、枕元に気配が。
ガバッと起きるとそこには痩せ細ったお爺さん…の、ようなものがいました。

驚いて飛び起きる男。
「オマエは何や⁉️」と聞いてみると、これが何と貧乏神でした…!


「貧乏神?
貧乏神って…あの⁉️
何や絵とかでは見たことあるけど。
あぁ、なんかそんな袋持ってるなぁ。
はぁ〜貧乏神っ!へぇ〜っ❗️

…25銭貸してくれへん?」ニヤニヤ

「オマエは…ガーン
オマエはもう少し真面目に働け」


貧乏神からこのまま冬が来たら死んでしまうぞと説教される始末…。
ところがこの男もそんな簡単な男じゃありません😓

「貧乏神にそんな心配されてたまるかい。
そんなもんこっちの勝手や。
そうなったら他へ取り憑いたらええがな」えー

「そう簡単に言うけどな。
死んでしもたら管轄が死神の方へまわるんや☠️
ワシの仕事が無くなるの!

それに自分で言うのも嫌やけども、ワシどっちか言うたら頼りない方でな。
ようやくアンタに取り憑いたんや。
ワシの職を奪わんといてくれ。
働きにいってくれ。なっ、頼む」🙏

「…そんなこと言われてもなぁ。
道具箱も質屋に出してしもたし…」

「アホか、オマエは⁉️ポーン
大工が道具箱を質に入れたら自分の首絞めてるのと一緒やないか!
早く行って出してこい!」

「アホはオマエや!
その出してくる金が無いんやないか!」

「人間として恥ずかしないんかオマエは…ガーン
誰かに借りてこい!」

「そんな当てがあったら苦労するかい!

…お前ナンボか無いのか?」

「お、オマエなぁ…ワシ貧乏神やで?ポーン
貧乏神って何か知ってる⁉️
それはいかんやろ…」

「いかんかて、当ても何も無いんやからしゃあないがな❗️」

「おかしいで、オマエ…!😰
無いの…?おかしいと思うけどな…。
ナンボで入れたんや?…は?
…わずかな金で入れよってホンマに…💢
ゴソゴソ…ほれっ!」

「!…キョロキョロ
⁉️びっくり💴
…これはなぁに???おねがい
これを私に…貸してくれる…?
…っかぁ〜っ!ツラいなぁ❗️」デレデレ

「何でもええから早く行ってこい‼️えーん
誰にも言うなよ、こんなこと…」


なんと貧乏神からも金を借りる。
とにかくこれで道具箱を出しまして、仕事に戻りまして…ひと月ほど経ったある日。
仕事仲間で特に仲のいい「よし公」がこの男を訪ねてきました。


「おっ?
なんやえらい綺麗に片付いてるなぁ。
また新しい嫁さんでも貰ったか?
オマエがこんな片付けるとは思えんけど…」

「ここへ来る時に誰かとすれ違わんかったか?」

「なんや痩せた汚い爺さんがタライ持ってヒョコヒョコ歩いていったけど?」🙄

今あれと所帯してるねん」ニヤニヤ

「え"ぇぇ…⁉️
あれは…何や?」😨

「あれ、貧乏神」口笛

「は?貧乏神⁉️あのオジンが⁉️」ガーン

「いや、実はな…かくかくしかじかで…」

「貧乏神に銭借りた⁉️…オモロい話やな」


この男のダメっぷりは半端なもんじゃありません。
仕事戻って3日ほどでまた行かなくなってしまいました。

このままでは家賃も払えない。
そうなればこの男と一緒に貧乏神もこの家を放り出されてしまいます。

困った貧乏神はついに…。


「貧乏神が内職❗️ガーン
内職って何してるんや???」

「最初つまようじ削りしてたんやけどな。
片方だけでええのに両端削って貧乏削りにしよったからえらい怒られたらしいわ。

で、アイツ意外と綺麗好きでな!
特に洗濯好きやねん❗️
だからこの近所中の洗濯もんまわって集めて朝から晩までワーっとやって、それでもらった銭でワシを養ってくれてると…こうなってる」

「えらいやっちゃな…😥
ところで今日はちょっと話があるんや。」

「そうか。
ほな、外で軽く一杯やりながら…ああ、金は大丈夫大丈夫。
ちょっとそこの汚い袋取ってくれ」

「袋?…あぁ、これか?」

「貧乏神のズタ袋や。
そこに小銭入れが入っててな…ああ、これや」

「おいおい、そんなもん手ぇ出したら罰当たりになるで!」滝汗

「何を言うねんな。
アレと私はそんな水臭い間柄じゃあないよニヤリ

何なら今より下は無いねんから、バチの1つくらい当たった方がその拍子にフワッと上がるかもしれん。
貸せっちゅうに…ちょっと出すだけやから。
これ中に戻しといて。

おーい、ビンちゃん!
ちょっと出てくるで!」

ゴシゴシ…あっ、お出かけですか?」ニコニコ

「これ、いつも話してる、よし公や。
これとちょっと一杯やりにな」

「あ、よっさんですか♫💡
ウチのからお噂は常々伺ってます。
今こうしてバタバタしてますので、また改めて…はい、そんなようなことで」

「よっしゃ。ほなちょっと行ってくるわ。
何なら先に飯も食うといてや」

「あ、はいはい。おはようお帰り。
よっさん、また1度ね…はい、どうも〜♫」


2人を見送ってからまた洗濯を始める「ビンちゃん」こと貧乏神…。

ゴシゴシ…はぁ〜っ…ゴシゴシ…

…ワシ何でこんなことしてるんやろ?😰
気が付いたらいつの間にやらこんなことしてるんや…ゴシゴシ…。
あっ❗️これお松さんとこの子供やな?
醤油こぼしたらその場で水で洗わなあかんやないかいホンマに…洗うっ!もんのっ!身にもっ!ならないかんで…ギュッギュギュッのギュッと!
よし…よっこいしょっと!

…はぁ〜、腰が痛いわ…。
ふぅ〜〜〜っ、んっ?
キレぇ〜な夕焼けやなぁ〜✨おねがい☀️
明日もよう洗濯物が乾くわ♫」


洗濯物を抱えて家に戻ったビンちゃん。
帰ると玄関は開けっぱなし❗️
しかも自分のズタ袋の小銭入れからお金が無くなっています💦


「!…やられた。
はぁ…もうあかんな。別れよう
アイツの根性は直らんわ。
どっちが貧乏神か訳わからんで…」😰


しばらくして機嫌良く帰ってきた男。
貧乏神はそこで別れを切り出しました。


「そうか…いや、どうもすみませんね。
明るく振る舞ってはおったけど、いつそれを言われるかと最近は戦々恐々の日々やった。
大丈夫!出て行ってください…。
それが私のためでもありますんでね。
自分でも嫌になるねん。
何でこんなに怠けもんかなぁ…。
誰か頼れる人がいたらどうしてもその人に頼ってしまうんや。

そんな簡単に人は死ねへんし、誰も頼る人がいなくなったら何としても生きようとしていくに違いないんや。

わかりました。おおきに。ありがとう。
ツラいなぁ、こんなけ一緒におって別れの時に餞別のひとつもわたせんとはな。
…堪忍してや…グスッ。
またしばらくしてウチの前通ったら寄ってくれ。
その時はまた今日渡すべきもんを用意しとく。

…おおきに。達者でなぁ」

「…バカなこと言いなさんなや…。
オマエはねぇ!
もっとアホなことをパーパー言うのがオマエやないか⁉️
しおらしいこと言いなさんな!
そんなんなったらまたこっちの出て行く気が失せるでしょ⁉️
もっと偉そうに言えっ。

…せやけどな、出て行きますわ。
お前さんが自分で言った通りや。
私がおってはかえってお前さんのために悪いと思う。
心を鬼にして出て行きます…。
貧乏神が心を鬼にっちゅうのも変な話やけど。

あのなぁ…体だけは気をつけや。
私出て行ったらもう誰もおらんのやから。
いや、疫病神の方に通知は一応しとくけども。
向こうには向こうのノルマがあるからな。」

「そうか…おおきに。すまんなぁ」

「礼なんか言いなさんな。
礼を言いたいのはこっちの方や。
貧乏神なんてもん、どこへ行っても棒やら杖やら持って追い立てられるねん。

それをなぁ…グスッ…ひと月もホンマに嫌な顔1つせんと暮らしてくれて…。
貧乏神生活の中で…このひと月くらい楽しい時は無かったと思う…グスッ。

もっといてやりたいと言うよりも、もっとおりたいというような気もするけどな。
それではオマエのためにならんので…出て行きます。
あの…体だけはな…気をつけなあかんで。な。」


手を振って出て行こうとする貧乏神。
その背中を寂しく見ている男。


「…あっ、ビンちゃん!💡
この次に行くとこは決まってるのか?」

「そんなもんあるかいな。
最初に言うた通り、自分は頼りない貧乏神やからな。
しばらくは失業期間や」

「ほな、それだけ世話させてくれへんか⁉️」

「バカなこと言うなガーン
貧乏神にどうぞ来てくださいなんて言うやつおるわけないやろ⁉️」

「それがおるんやって❗️
この前会ったよし公‼️
あいつもオレと似たような気性やから、貧乏神を嫌がるようなやつと違うねん!

それにあの男もこの前嫁さんに逃げられてな。

洗濯物がようさん溜まってるんや!」

〜終〜
さて、いかがでしたか?
意外にも人情噺のような展開になるのでした♫

最初聞いた時はなんで貧乏神に感動させられてるんだと驚いたもんです笑い泣き


さて貧乏神ですが、起源…というか最も古いお話として残っているのは中国の窮鬼(きゅうき)という、人間が鬼に変化したというのがあるそうです。

日本でも似た話はあるのですが、そこから派生したのか、逆に福の神を呼ぶ者であったり、貧乏神のおかげで悪いことが起こらないというご利益があったりというものがあります。

あるマンガでは貧乏神は金が無くとも希望を失わない人間が苦手でした。
今回の貧乏神は人情が苦手(?)です。

貧乏神を手厚くもてなした染め物屋の夫婦が染め物の工夫を思い付いて成功するというお話もあります💡

どちらにせよ人間の強い気持ちと優しい心があれば貧乏ぐらい乗り越えられるという昔からの考えなのかもしれませんね📖🖋

貧乏という言葉は嫌なものですが、「乏しい」よりも「困る」、「困る」よりも「窮する」というより厳しいものもあります。
なのでそこで止まるということではまだ頑張れば何とかなるという意味ではそこまで悪い神様ではないのかもしれません。

…取り憑かれたくはないですが🤪

頼りないけどどこか憎めず、笑ってしまう貧乏神の落語でした♫
ではまた(^^)