3つのルートで構成されるJR羽田空港アクセス線計画は、現在西山手ルートのみが着工している状態である。しかし私は西山手ルートではなく臨海部ルートの方を優先するべきだったのではないかと考えている。今回はその主張の根拠を述べる。

⚠️注意
本記事は
中学生の鉄道ファンが執筆している。根拠のある主張をするよう心がけてはいるが、専門家でも関係者でもないため記事内容の正確性は保証できない。

目次

  JR羽田空港アクセス線とは

 JR羽田空港アクセス線とはJRが計画している新線の総称である。現在羽田空港に乗り入れる鉄道は京浜急行電鉄と東京モノレールだけだが、そこにJRも参入しようというものである。

 本路線は以下の3つのルートで構成され、大部分が既存旅客路線への乗り入れ区間東海道貨物専用線を旅客化する区間であるが一部の区間は新規で建設をする。

  • 西山手ルート...新宿〜羽田空港新駅間
  • 東山手ルート...東京〜羽田空港新駅
  • 臨海部ルート...東京テレポート〜羽田空港新駅間

西山手ルートはと東山手ルートは途中で旧国鉄の未成線を引き継いだ第三セクターの東京臨海高速鉄道りんかい線を経由する。

  現在の状況

 2015年の東京都の広域交通ネットワークに含まれており、一時は2020年東京オリンピックまでの開業も視野に入れていたものの、実際には着工すらできなかった。その後2023年に東山手ルートの建設工事が始まっている。東山手ルートは上野東京ライン(高崎•宇都宮•常磐線)との直通が見込まれており、開業は2031年の予定である。しかしそれ以外のルートは着工に至っていない

  東山手ルートは本当に優先すべきルートなのか?

 このように3ルートの内最も早く着工した東山手ルートだが、本当に必要なのだろうか。その必要性に疑問が生じる理由は、既に都心方面から羽田空港へのアクセス手段が2つ存在するからである。その2つとは、京急線と東京モノレールだ。

 現在は両線とも東京駅に乗り入れていないため建設意義がない訳ではなく、所要時間の大幅な短縮にも繋がるため費用対効果はある。しかし都市交通の利便性強化という観点では他のルートの建設を遅らせてまで既存路線に対抗するのは良い選択ではないだろう。

 さらに重要なのが、京急と東京モノレールには以前から新線計画があるということだ。羽田空港アクセス線計画が具体化したのは21世紀以降だが、それ以前から既に以下のような計画も存在している。

  • 都心直結線...京急品川〜新東京〜京成押上間
  • 東京モノレール羽田空港線延伸...浜松町〜新橋•東京

 前者は建設費が莫大なため実現性は低いのかもしれない。しかし後者に関しては2002年に東京モノレールがJRグループに入っている。わざわざ京浜東北線快速を浜松町停車にして、さらには浜松町駅の移転(計画中止済み)もしようとしており、当初は延伸にも積極的であった。つまりこのままJRが羽田空港アクセス線を開業させたら二重投資になってしまう。

 さらに京急には横浜方面への列車があり、品川駅では東海道新幹線と接続しているのに対し、東京モノレールは都心からの乗客がいなくらるといよいよ周辺住民と周辺企業従業員しか利用者がいなくなる。影響は甚大だ。わざわざ買収しておきながら要らなくなったら捨てるというのは、あまりにも酷い話ではないだろうか。

JR東日本が東京モノレール延伸ではなくJR羽田空港アクセス線建設を選んだ理由は、他路線との直通だろう。東京モノレールは1路線しか存在しないが「羽田空港線」という名の通り当初は横浜方面や房総方面に複数の路線が計画されていた。非常に残念な話である。

  西山手ルートは本当に優先すべきルートなのか?

 次に西山手ルートについて、現在は副都心地域から羽田空港へ直行で行ける手段が高速バス以外存在していないため、東山手ルートよりは必要性が高いだろう。しかし私は後述する臨海部ルートよりは優先順位が低いのではないかと考えている。

 この理由は、「蒲蒲線」構想の存在である。蒲蒲線とは東急多摩川線と京急空港線を地下トンネルで直通運転させる構想のことで、東急多摩川線を介して東急東横線や目黒線との直通も可能である。2000年より本格的に建設方式や運行形態が検討され始め、2022年には当路線の建設と維持管理を行う会社「羽田エアポートライン株式会社」が設立され、さらに大田区庁舎の地下にトンネル用地があることから、何らかの形での開業はほぼ確実にだろう。

 蒲蒲線とJR羽田空港アクセス線西山手ルートを比較すると、前者の方が利点が多い。前者は副都心線を経由して東武東上線や西武池袋線に直通を行うことで埼玉県西部からのアクセスを劇的に改善させるのに対し、後者は副都心地域(渋谷・新宿・池袋など)にしか恩恵がないからだ。

 とは言え、蒲蒲線にも課題がある。1つは東急と京急の軌間の違いで、フリーゲージトレインや三線軌条の導入が必要になる。しかし実際は技術的課題が多く、ひとまずは地下駅での対面乗り換えで開業させようという方向で進んでいる。2つ目は直通先の京急にメリットがないことで、従来品川駅で山手線から京急に乗り換えていた埼玉県西部や副都心地域の乗客が蒲蒲線に奪われてしまう。

 蒲蒲線にも課題が山積しているためJR羽田空港アクセス線西山手ルートが不要とまでは言えない。しかし、臨海部ルートよりはメリットが少ないのではないだろうか。

  臨海部ルートにはメリットしかない

 臨海部ルートはお台場などの湾岸地域と羽田空港をダイレクトに繋ぐルートである。このルートが何故良いのか、それは湾岸地域が非常に栄えているからである。

 お台場には膨大な量の体験施設やテーマパークがあり、商業施設も大量にある。私も幼稚園に入る前の頃から何度も行っている。羽田空港と繋がれば観光客の利便性が劇的に向上し、さらなる需要喚起に繋がるのではないだろうか。同地域にはオフィスビルもある。羽田空港と繋がればビジネス客への恩恵もある。

 そして湾岸地域には東京ビックサイトもある。様々な展覧会やイベントへの旅客輸送や物資輸送の観点から、羽田空港に繋がるメリットは計り知れない。

 さらにこのルートは東山手ルートや西山手ルートとは違い競合路線や競合計画が存在しない。これも十分なメリットと言えるだろう。

但し、現在は東京臨海高速鉄道りんかい線(羽田空港アクセス線の一部になる予定)と東京モノレール羽田空港線を乗り継いでアクセスしているため、後者に多少の影響は考えられる。

  臨海部ルート+京葉線・総武線接続新線で最強ルートが完成

 湾岸地域に繋がるだけでも多大な恩恵のある臨海部ルートだが、りんかい線の終着駅である新木場から京葉線に直通することで更なるメリットが期待できる。それは、東京ディズニーリゾート幕張メッセへのダイレクトアクセスである。

 後者のメリットは先述した東京ビックサイトと同じである。前者については、日本最大のテーマパークであること、世界にもディズニーランドがある都市は限らることから外国人観光客が期待できることから、場合によっては湾岸部以上にメリットがあるかもしれない

 だが臨海部ルートのメリットはこれでは終わらない。現在検討されていれる別の構想「京葉線・総武線接続新線」との直通によるメリットである。これは京葉線の市川塩浜から総武線の津田沼までの新線を建設するもので、これにより羽田空港-湾岸地域-ディズニーリゾート-千葉-成田空港という一直線の直通ルートが生まれる。この内新木場〜市川塩浜間は複々線化されるため京葉線の混雑緩和にも繋がる。まさにメリットしかない、最強ルートである。

  計画の実現性

 臨海部ルートは新規建設区間が非常に少ないため、物理的な整備は大変容易である。

 まず、羽田空港〜東京貨物ターミナル間は新規トンネル区間となるが、これは他のルートとでも必須の区間であるため臨海部ルート自体の実現性には関与しない(先述の通り現在は既に東山手ルートが着工しているためこの区間の建設は確実である)。

 東京貨物ターミナル(りんかい線八潮車両基地)〜東京テレポート(品川埠頭分岐部信号場)間は既存のりんかい線の回送線を複線化するが、同区間の貨物線計画があった国鉄時代にもう1線分のトンネルが建設されているため、それを補修の上で復活させれば問題はない。東京テレポートから先は既存の東京臨海高速鉄道りんかい線に乗り入れるが、同線は運行本数があまり多くないためダイヤ上の問題は起きないだろう。

 新木場から先はりんかい線と京葉線の線路が繋がっているためそのまま直通できる。但し複々線化する場合は工事が必要になる。京葉線は国鉄時代から複々線(京葉貨物線+中央・総武開発線)で計画されていたため、高架橋の構造や線路配線上は線増が可能であるが、千葉県が買収していた複々線化用地が既に高速道路に転用されてしまっているため国道の移設などで新たな用地を確保しなければならない。なお、京葉線・総武線接続新線は完全な新規建設のためハードルがかなり高い。

 東山手ルートと西山手ルートが共に新しいトンネルが必要なのに対し、臨海部ルートは複々線化や接続新線を除けばほぼ無工事で開業させられる。なお、京葉線とりんかい線の直通が現在まで実現していない理由はJRからりんかい線経由で再びJRに入る列車の場合の運賃収受方式問題であるが、少なくとも臨海部ルートの乗り入れが新木場までであれば羽田空港駅の改札機を経路に対応させることで難なく解決できるだろう。

  まとめ

 今回の内容をまとめると以下のようになる。

  • 臨海部ルートは、羽田空港とお台場・東京ビックサイトを繋げることで観光輸送、ビジネス輸送、イベント会場輸送などに大きく貢献する。
  • 臨海部ルートを京葉線に直通させることで東京ディズニーリゾートや幕張メッセにも繋がり更なる利便性向上に繋がる。
  • 臨海部ルートを京葉線・総武線接続新線に繋げることで羽田空港〜成田空港間の新しい連絡ルートが誕生し、既存路線の混雑緩和にも貢献する。
  • 東山手ルートは東京モノレールとの二重投資になり、西山手ルートは蒲蒲線計画と被ってしまうため優位性に欠ける。
  • 臨海部と羽田空港を直接結ぶ鉄道は現在存在しない。
  • 東山手ルートと西山手ルートは新規のトンネル建設が必要だが、臨海部ルートは空港付近以外に新規建設区間が存在しない。

 よって3ルートの中では臨海部ルートこそが最も優先すべきルートである。


 ここまで臨海部ルートを優先すべきという主張をしてきたが、実際は既に東山手ルートの工事が始まっているため今更な話である。本記事はただの鉄道ファンが勝手に持論を展開しているだけの記事であるため、これを書いたから何かが変わる訳ではない。しかし臨海部ルートのメリットをもっと多くの人に知ってもらいたい、そして一刻も早く開業して欲しいというのが私の切実な願いである。