東京の大手私鉄は、優等列車が10両の、各停が8両と言うケースがよくあります。そうでなくても、各停だけ他より編成が短いことがよくあります。今回は、各停の短編成がなくなるためには、何が必要か考えていきます。

  1.東急電鉄

 1.東横線

  東横線は、全ての各停と急行の一部が8両でそれ以外が10両です。副都心線との直通開始前は全車8両でした。

 各停のみ停車する駅は、8両分しかホームがない訳ではなく、なんと多くの駅が10両対応で。といっても、それは非常用で9・10号車の部分はとても狭いホームです(ホームドアもありません)。

 ではなぜ伸ばそうとしないか。それは、わざわざ車両を改修をするほどの混雑がないからです。

 実際に各停に乗ってみると、日中は結構空席が目立ちます(むしろ朝の優等列車を12両化した方がいい気がする...)。最近メトロ18000系が8両で製造されたことからも、すぐに10両化する予定ないとわかります。

 Y500系は、10両化できるように設計されていますが、活かされることはあるのでしょうか。

 今後、来年の相鉄との直通開始のために10両が増加すると思われます。また、並行する目黒線が8両化します。個人的に、増えるなら2020系列ではなく5000系の追加製造な気がします。

 (2)大井町線


  この路線は8両も10両もありませんが、各停だけ短いと言う点は同じです。

 かつては4両で、その後5両化しました。2008年に新たに正規の急行ができると、急行のみ6両となりました。その後7両に増強されています。

 しかし、あくまでも混雑するのは急行で、各停が延びる可能性はないと思います。実際夜間乗ったら、1号車に一人しかいない程でした。需要があったとしても、踏切によりホーム延伸はできないでしょう。

 ちなみに、現在4両分しかなく、ドアカットを行う九品仏駅は、地下化計画がありましたが、何年経っても実現しそうにありません。

  2.西武鉄道

 2〜8両まで様々な両数があり、連結柔軟な運用が組める新2000系。しかし、それが西武の編成をカオスにしました。

 1.新宿線

  かつては6両がありましたが、今は8両か10両です。2・4・6・8両と様々ある2000系を繋げて8・10両を作ることもあります。2013年までは4+6の分割併合もありました。

 ホーム自体は、上石神井から先のすべての駅が10両に対応しており、実際上石神井から先各駅に止まる準急列車が存在します。しかし、上石神井までの各駅停車のみの停車駅は8両までです。直通先の拝島線は10両、多摩湖線(萩山〜多摩湖)は8両まで対応しています。

 なお、優等列車と各駅停車の運用が完全に区別されているわけではないため優等列車でも8両の場合があります

 2.池袋線・秩父線・豊島線・狭山線

  池袋線は、池袋始発の全ての各停と、東横線方面の一部の列車と一部の優等列車が8両です。また、秩父線方面は、8両(4+4)です。

 しかし飯能までは、全ての駅が10両対応です。もちろん10両の各駅停車列車の設定がない椎名町〜桜台もです。もったいない気もします。

 しかし、豊島園は8両までです。そのため、それを改善しないと池袋口の10両化はできそうでできません。

 また、ラッシュ時は確かに混んでいますが、日中は急いで10両化しなくてもいいくらいの混雑度です。また、椎名町は、先端の2両分のホーム幅がとても狭く、大量に10両を導入することは難しいかもしれません。

 さらに、先程の理由から東横線関連の10両化も厳しいでしょう。

 なお、狭山線は10両対応ですが、8両もあります。しかし、線内完結列車はそれほど混雑がないため10両化が厳しいでしょう。

 飯能から先は、多くの駅が6両までです。かつては飯能を越えて池袋の直通がありましたが、2021年現在特急を除くと片道一本となりました。日中は空いているため飯能から先だけで10両にする必要はありません。また、秩父鉄道との直通運転を続けるならなおさら厳しいです。ですが、西武は最近秩父鉄道との直通を減らしています(個人的にはもっと増やしたほうがいいと思う、西武秩父から秩父鉄道に乗り換える人がかなりいたから)。

  3.東武鉄道

 (1)スカイツリーライン(伊勢崎線)

       この路線は、半蔵門線直通、日比谷線直通、地上線に分けられます。

 まず、半蔵門線関連ですが、他社線含めて10両に統一されています。わかりやすいですね。曳舟以北の優等列車運用につきます。

 次に日比谷線直通ですが、この系統は全て7両です。なぜ奇数の中途半端な数になったのかというと、かつて日比谷線は1両あたり18メートルで8両だったからです。しかし、首都圏の標準的な車体長は20メートル。そして、半蔵門線や地上線は20メートルでした。これでは安全用のホームドアが設置できません。というわけで日比谷線の新型車両で1両あたりの長さを2メートル伸ばしてその分一量減らしました。北千住以北の各駅停車運用につきます。

 一方地上線は、北千住以南の各駅停車運用と伊勢崎線の久喜以北まで直通し館林方面に行く列車や南栗橋までの優等列車に使用されます。この系統は需要があるのにもかかわらずなんと6両編成があります。そして東武のターミナルである浅草駅に乗り入れる列車はとんど6両編成です。それ以上の列車は曳舟駅で切り離してから浅草に行くことになります。

 なぜこうなったのかと言うと、浅草駅に乗り入れられる列車は最大で8両編成でそれに対応したホームも1つしかなく残りは6両編成までしか対応していないからです。その6両編成まで対応しているホームですら奥のほうはホームがあるのにもかかわらず使用不可で前2両はドアカットを行っています。これは浅草駅が急なカーブの上に設けられたことが影響しています。浅草の狭い敷地内に百貨店と駅を両方建設するには相当苦労したと伺えます。

 というわけで東武伊勢崎線系統の全列車10両化は多分不可能ですね。

 (2)東上線

  東上線は今まで述べたもので最も残念な路線です。小川町〜池袋は、全駅・全車両が10両です。しかし、8両の普通列車が存在します。東急東横線からの直通列車です。

 東上線にはかつて線内のみの8両がありました。しかし、10両を作り、8両車は2両車と合体し中間運転台を撤去。やっとの思いで全車両10両化したと思ったら東急が来てしまいました。

 設備的には最も10両統一できそうですが、ギリギリ無理そうです。

  4.小田急電鉄

※ここからは主にインターネットの引用となります。間違いがある場合もありますがご了承下さい。

 小田急電鉄は、現在最も10両化が進行しています。

 まず急行停車駅は、1998年に全線10両対応化し、同時期に小田原線全駅が8両に対応、その後準急停車駅全て10両に対応しました。2014年には多摩線全線が10両に対応しました。

 さらに2019年の代々木八幡駅改良工事によって、新宿駅から開成駅までのすべての駅と、小田原駅が10両に対応しました。

    現在小田原線の各駅停車は、新松田駅で系統が分断されていて、さらに江ノ島線と直通する各駅停車はほとんど存在しないことから、実質新宿駅から発車するすべての列車を10両編成にすることが可能です。

 しかし、実際は小田原線に8両、多摩線に6両がたくさん走っています。

 また、小田原線の開成から小田原までの各駅停車のみが止まる駅、江ノ島線の相模大野から片瀬江ノ島までの各駅停車のみが止まる駅のホームの長さは6両までです。これらの区間が10両対応になるのはいつかは分かりません。

 こうなると、都市部の列車をすべて10両化した上で、末端部の各駅停車用のみを6両、箱根登山鉄道に入線する列車を4両として残せばよくなります。となると8両編成の存在意義が疑われます。

 現在小田急の車両は、8000型・ 1000型・ 2000型・ 新3000型・新4000型・ 新5000型が存在しています。

 その中で新4000型と新5000型はすべての車両が10両編成で製造されました。

 新3000型は、8両編成の半分と6両編成の後期に製造された一部の車両が中間車を新造した上10両編成になりました。

     これにより、フルカラーLED行き先表示機と3色LEDのそれが号車によって異なる面白編成も生まれましたがそれはまた別の話...

 新1000型は先述の東上線のように、6両編成と4両編成を合体し中間の運転台を撤去することで10両編成化しました。同時期に大規模修繕を施行した車両もあります。なお、8両編成は一部の中間車を除いて廃車されています。  

 一方で全車が8両の新2000型には目立った動きがなく、鉄道ファンの間では廃車されるのではないかという推測があります。車齢的にはまだ使えそうですが...

  5.京王電鉄

 京王電鉄の京王線には、現在8両と10両が混在しています。

 ホーム自体は全ての駅が1998年に10両対応となっています。

 かつては6両と4両もありましたが、小田急と同じく合体させて中間運転台を撤去し、全車10両化しました。

 直通先の都営新宿線は当初全車両8両でしたが、一部編成のみ中間車を新造して10両化しました。一方、京王からの直通車は8両は撤退し、10両のみになりました。

 設備的に全車10両化はできそうですが、行われていません。現在製造中の5000系は10両のみのため、その意向はありそうです。

 これに関して、理由はよくわかりませんでした。

  6.京浜急行電鉄

 個人的に一番カオスなのがこれ。

 京浜急行は現在、運用は4・6・8・12両と様々あります。

 車両は12両固定はなく、4・6・8両のみです。

 12両は、併結運用です。混雑の激しい快特・特急に導入されました。しかも、12両に対応するのは品川〜金沢文庫のみ。 下り線に関しては、神奈川新町が12両に対応しないため、金沢文庫まで行くのは快特のみ。

  7.京成電鉄

 こちらは、10両は存在しません。京急と直通しているため、自社車両も車両は4・6・8両があります。分割併合は行いません。

 本線で8両に対応しないのは、海神と京成中山だけです。押上線は全駅8両対応です。また、千原線も全駅8両対応ですが、直通先の千葉線が主要駅しか8両に対応しておらず、現状優等列車がないため、両線とも全く活用できていません。金町線は、柴又は6両対応ですが、金町は4両までです。

※金町以外全て6両までは対応。

 車両は現在、3400型(特急型からの改造)、3500型、3600型、3700型、新3000型、新3100型があります。

 3400型は当初から全車8両、3500型は4両と6両、3600型は当初6両だったものを8両と4両に変更、3700型は当初から8両と6両、新3000型は当初から8両と6両、新3100型は現状8両のみ(今後も増備)です。これもまだ8両化は厳しそうです。


いかがでしたか。首都圏にはいまだに種別によって列車の長さが異なることが多くあります。しかしどれも意外と実現できそうでできないものです。中には一部の駅が長い編成に対応しているのに活用されない場合もあります。現在少子高齢化が進んでいますが、今後列車の長さがこれ以上長くなる事はあるのでしょうか?