言えない心を語る、小津映画「晩春」　１

はじめに
吾輩が子供の頃より好きだった女性は、ビビアン・リーだった。今もそれは変らないが、何故かヨーロッパの自立色の濃い女性が眩く見えて、好きで、次いでオードリー・ヘップバーン、、が続くが、自立色と言って日本を見れば、それは、やはり上品と言う自立に様だ。どの国の男性でも同じだろうが、上品と言う品格は、男尊女卑の世界で有っても、で有ってしまえば、勝つ事は諦める。聖女的雰囲気に世界の男共は、弱く平伏す。小津作品に、この聖女に当る原節子さんと言う女優を使う理由は何なのだろう？
現実社会には、先ず居ないような女性で、決して下見されない品格者が、普通家庭の娘御を演じる。それだけで、映画作品も原作、脚本も美しい説得力に加わって来る。この作品でも、他の小津作品でも原節子さんは欠かせないし、作品の光になっている。上品と言う説得力は、言葉を廃し、品性と言う説得を流す。こんな事を思うと小津さん自身も無言の美学的なロマンチック者でその表現者。ややもすれば明治の武骨人間と言えようが映画では、回顧ではなくて永遠を表現してる。その永遠不変に、原節子さんが必要抜擢と言った所か？それにしても老若男女に崇高の目線で見られる原節子さん、と言う人は、この役名、紀子さんと共にこの世に居るものなのか？「居て欲しい」と皆、思うのだけれど、、、。
では、
新コロナ過のインドア生活と、降雪のインドア生活は、暇つぶし方法も減って来て、ＰＣ情報、ＳＮＳに頼り過ぎたせいで、ＣＭの多い地上波テレビにも、イライラと嫌々気分が膨らんで戻る事も出来ない。結局の変遷は、You tube 閲覧から、ＣＭ無しのアマゾンプライスの観放題、映画、ドラマに辿り着いた。その観放題も近年のドラマ、映画から、テレビの無い昭和時代の映画を好み選ぶようになってしまった。こちら、移ってしまった理由、自分でも良くは解らないのだが、ゆったりと遅速なあら筋展開とその齎すジワジワ染み込みのテーマは、よく言えば、受領して考える時間がシェアしているようで、脳も喜んでいるようだ。現代ドラマのように、如何にも特異、如何にもの速く、如何にものトリック、如何にもの意外も少なくて、何処か？ＣＭブレイクが儲けられているかのような、せっかち感と間延び、自分の心はこれほどに嫌っていたんだ、と気付く事にもなったようだ。そんなアマゾンプライムの中での変遷も、ついに巨匠小津作品に辿り着く。
自分の生まれる前の制作を考えると、我ら田舎生活の１０年以上先を行った生活が映し出されていたし、白黒フィルムはその上級を打ち消して、素朴な家庭、素朴な家族を映し出している。無駄なカットや場面も無く、無駄とおもわれるカット、場面は、程良いテーマ消化の時間で有り得、考えも一旦自分の過去まで、押し戻して、感想を創ってくれる。今のドラマや映画には無い、奥深い脳の散策が、この時代の作品には有る。
でも、さすがにドラマで演じる配役は、全ての人が大人びて見え、今で言うチャラ男、チャラ子は見当たらない。当時の人間は、精神年齢が高かった？そう思うべきか？あるいは、観た瞬間に、わが身が年端１０代の眼を持たされてしまうのか？閲覧の視線は当節の７０歳の視点でなく、不思議にも、気持ち小学生で、それを天井から見て脳が色々の考察をする。まるで、死んだ床にい居る自分を自分の霊が見つめているような。俯瞰、達観で兎にも角にも十分に引き込まれて観ている自分。