「陽のあたる坂道」と石坂洋次郎と石原裕次郎

アマゾンプライムで、我が中高生時代に公開されていた、「石坂洋次郎原作と石原裕次郎主演」の映画、陽のあたる坂道を、このコロナ過の暇を利用して見ていた。もちろん当時の映画は見ていない。しかし洋次郎作品は、よく読んでいた。高度成長時代に、次に来るハイソな生活に憧れながら、夢見るように描き読んでいた。当時は十代の半ばで、小生意気にも、自我から精神論を言う事を顕示欲に、でも自信なく、作品の世界がとても居心地の良い場所だった事を覚えている。そして憧れるその生活に登場する人達の「言葉、セリフ」に「少し上流の人達は、現実言葉の交流ではなくて、心理の在り様の精神会話をするんだ」と感じ入って、以後、そんな世界観を描き探す旅をして来たように思う。この意味では、地に足を着けた生活を離れて、理想や憧ればかりを追って、身に着くものを逃して来た、人生１００歳のＵの字に曲がり切った今、思い起こして反省にもなってる。がそれが青春と言うものなのだろう。映画として裕次郎さん主演とは知らなかったし、イメージが「黒部の太陽やら太陽にほえろのボス」で固定化した自分には、アマゾンプライム動画を観るに当たり、新鮮でも有り、なにやら気恥しさを持って見ていた。すると、あれほど憧れたハイソな世界の劇中会話は、今のハイテク、ＡＩ、１憶中流意識日本の生活に変貌した今でも、作品や劇中の言葉の会話は無い。自分の青春で、憧れ世界を作
っては夢を見る。勝手な妄想と改めて知る。まあ、小説にしろ、演劇にしろ、映画にしろ、その中のセリフと言うものは、「言葉ではあるものの、作品の説明、解説言葉でもある訳だ」したがって、作品中の言葉は、普段生活では使われる事の無い言葉な訳。その有り得ない言葉の会話を違和感なく自然に見せるのが役者の役者たる芸力な訳だ。この観点を以て今、洋次郎＆裕次郎の「陽のあたる坂道」を観ると、よくもよくも、ハイソ社会の会話と騙してくれたナ、と苦笑いしてしまう。
むかしむかし、とノスタルジーを言うのは好みではないが、時代、その時代に作中の台詞も随分と様変わりする。この時代は、未来に憧れる時代で、シッカリ目的を果たしている事を知り、では？現代は？普段言葉に普段言葉へと変わって来ている。その結果として、セリフが頭で消化できない事がままある。聞き取れないままストーリーに連れられ、置き去りにされるような、難聴者のような気分になる。今、台詞は不親切時代になっている、がスピード時代としては、このスタイルになるのだろう。ただ、台詞による憧れを含んだ広い世界観が無いと言えば無い。残念にも思うが、鈍いすとーりー展開は現代風では無いから複雑だ。そう言えば、大ブレイクの「鬼滅の刃」に使われる言葉は結構難しいにも関わらず、小学低学年生にも人気。おそらくは言葉の理解を飛ばしても人気と言う事なのだろうが、この作者こそは、言葉学者の様な博識を持ち、内容を濃く深いものにしている。日本語の深い世界観が「鬼滅の刃」の魅力でもある訳で、何度も何度も読みたくなる、見たくなる魅力もここだ、と思うし、決して読者や観客に迎合させる事が、利に働く訳でもない。時代劇のように世界観を大事にしても、その難しさが深みを生む利もある。この問題は、他国語に有り得るのだろうか？。日本語と言う幅の広い表現力の中で起こる機微と感じる。とするなら、テレビドラマでも、映画作品でも、あえて日本語字幕を入れて貰った方が、作者の意図は伝えられるものと思った次第だ。

これは私見解だが、過去の作品のセリフに聞き逃すものが無くて現代のセリフに？？が多く有る。日本語と言っても武家言葉、公家言葉、時代言葉、女言葉、男言葉、逆に新語だってある、使い方も変わる。漢字テロップを流す事で、理解が２つも３つも深くなる事も有り得るし、何と言っても過去の作品も楽しめて評価でき、見る人も日本語を深く知り、深い感傷も受け取る事が出来、感情豊かを育成できるの出来るのではないか？出来るなら能や狂言でもテロップを必要としている芸術なのでは？と思っている。

石坂＆石原で飛躍した話になってしまった。それもこれも生き物の様な日本語故だ。日本語のデメリットなどと言うのではないが、言葉と言葉の使い方が過去の作品を懐かしむノスタルジーにしてしまう。懐かしむ感傷も味わいだろうが、本来の作品の感傷ではなくて、古さの感傷では作品鑑賞ももったいない話である。今使わない言葉では、聞き漏らしも多い事だろうし、また、現代作品は、ストーリ展開の速さにセリフ理解が追い付かない、こうした事が、この先の未来に多く起こるであろうから、字幕テロップで補佐も必要と思った訳だ。この「陽のあたる坂道」若い年代が鑑賞して、多分？？？？が多いであろうし、我らのような時代人に評価が有って若い人には評価されないのは、実に悲しい事だ。作品と言うもの、世代を超えたものでなければ、永遠も無い。日本語作品には是非とも必要と思うのだ。その点に於いても、絵が有り言葉が記された「漫画」と言うもの実に、優秀な書籍と今更に思う。