[時間と悩み]


不安は主に「扁桃体」で作られるとされていますが、扁桃体以外の脳部位も関与しています。
たとえば、大脳皮質の「前頭葉」の右側の一部が破壊されると、「悩み」が消えてしまうという、ちょっと変わった障害が現れます。

悩みは、未来を予測することから生まれます。
未来の予測は、経験に基づいて計算されます。
そこには二つの要素が必要です。
ひとつは「過去の記憶がある」ということ。
もうひとつは「未来を想像できる」ことです。
この二つがあって初めて、経験に基づいて未来の計画が立てられます。
計画が立てられるからこそ、逆に「うまくいかなかったらどうしよう」という不安が付随して生まれてくるわけです。

悩みが消えてしまうと聞くと、「悩まないなんて、いいな」と思うかもしれませんが、実際には悲惨なものです。
本人は悩んでいないから、その限りにおいては確かに幸せそうなのですが、悩みの無い人は社会に適応しながら生活することができません。

何も悩まないことから生まれた単純な明るさと、悩んだ末に生まれる前向きの明るさは、明らかに違います。
悩まない人たちは記憶力も低下します。
そもそも記憶というのは、未来の自分のために蓄えるものです。
未来への不安がなく、計画を立てるモチベーションの無い人にとっては、記憶は不要なのです。