悲しみ | 五階から胃薬

悲しみ

私はただ、人を愛しただけだ。
愛されるために愛したのではないはずだ。
それなのにいつからか、私は欲していた。
欲の湧き起こるのに、気づかぬふりをしていた。
今改めて思い返すといい。
私はただ、人を愛しただけだ。
その人の幸せを望んだのだ。
ならば、その人に去られたからとて、何を悲しもうか。
何よりその人の望んだ道なのだ。
私は笑顔で送り出せば良い。

お元気で
お幸せに
さようなら

なぜ言えないのだろう。いつからその人から愛されたいと思ったのだろう。
いつから死ぬまで一緒にいたいと思うようになったのだろう。
私はなんて欲張りなんだろう。


私はその人に、何かしてあげられただろうか。
その人が、少しでも幸せに近づける何かを、してあげられただろうか。
いつからか、私はその人に、してもらうことが多くなり、私が安らぎを得ていたのではないか。

今、その人が去ろうとしている。
私の下を離れたいと言っている。
したがって私は、その人を送り出すことに幸せを感じなくてはいけないはずだ。
解き放たれた鳥のように、自由に飛びたいのだ。
私は籠であり、足かせである。その人の自由を奪うもの。

なぜ、そんな簡単なことをわかっていながら、素直にお別れできないんだろう。

愛は与えるもの。
愛は与えるもの。

そうかもしれない。

でも
愛してしまった。
愛し合いたかった。
離れたくなかった。

もうその人に、私のワガママは届かない。

愛は与えるもの。
もういい加減、理解しよう。


でも今は、言えない。
お元気で
お幸せに
さようなら

多分、もう言えない。
だからその人には、もう届けられない。

その人は去っていくだろう。

私はいつか、その人を思い、祝福しよう。
幸せを祈ろう。
愛されていることを願おう。

この悲しみが消えるのを待って。

まずは夢のような日々から去る私に、言っておこう。

お元気で
お幸せに
さようなら