僕は東京へ向かう夜行バスの中くらくらと頭を揺らしながらたくさんのことを考えた、もしくは考えようとした。仕事のこととか友人のこととか恋人のこととか、幸福のこととか。
明日の幸せのために今を懸命に生きることの大切さをどれだけ説いたとて、そのためにみんながみんな頑張れるわけではないし、努力が身を滅ぼしたなら明日の幸せのために死んでしまうことに価値を見出せない。
人生のほとんどは幸福ではないと言ったのは誰だったか、ぽつり、ぽつりと夜光灯が流れていくように人生のそこかしこで幸福は輝くのだろう。
自分が欠落した人間であると自覚した瞬間から僕はその欠落を埋め合わせる何かを見つけることを人生の命題とするべきだと感じている。感じているだけで行動しないのだから、本当につまらない人間だと思う。
地震があった。ぐらぐら揺れている間に僕は机の下に潜り込んだが、誰もそんなことをしなかった。揺れる蛍光灯を怯えた目で見つめたり、がたがた鳴るガラス戸を押さえようとしたり、ただ固まって揺れがおさまるのをじっと待っていた。右に倣え、が僕らの特性ならば、全員が正しい行動をしようとしなければならない。
脅威が過ぎ去ったあと誰かが震源地は近いなと言い、p波とs波の話になった。
鳩サブレが好きだ。東京土産なら鳩サブレを買うよ、と言ったら妹にずいぶんがっかりした声をあげられた。彼女の希望は資生堂パーラーのガナッシュチョコだった。そんなハイカラなものは知らない。東京駅大丸の食品街はさすがにお土産区画が充実していて、30歩歩く間に鳩サブレとガナッシュとチーズうさぎを買うことが出来た。ひよこサブレなるものに大いに興味を惹かれたが九州と鳩サブレに失礼やもしれぬと思い購入を控えた。